クロカン
「う~ん、ランニングコースの整地も、
一通り終わっちゃったな~。」
今日も、今日とて自主トレに励むロックであったが、
毎日、使い続けていた土魔法の効率化によって、
ランニングコースが完成してしまったのであった。
「土魔法のレベルを上げるには、
このまま、毎日使い続ける方が良いんだろうな・・・そうだ!」
ロックは、村の男たちと共に、
畑で汗を流している父親を訪ねた。
「父さ~ん!」
「おお、ロックか、
どうしたんだ?」
「僕が、村の防護柵の内側に造ってる、
ランニングコースなんだけど、
もっと足腰を鍛えられる様に、
坂道とか造っても良いかな?」
「ああ、柵の付近なら、
畑仕事などの邪魔にもならんだろうから、
構わんぞ。」
「ありがとう、父さん!
あっ、そうだ、
父さん、村の人達に、ちょっと畑から出て貰う様に言ってくれる。」
「ああ、そろそろ一服の時間だから構わんが、
何をするんだ?」
「僕の土魔法が大分上達したから、
畑仕事を手伝うんだよ。」
「ほう、そんなに上達したのか、
まあ、仮に失敗したところで、
まだ、畑を耕しているだけだから良いか・・・」
父のマックは、村人に声を掛けて休憩に入らせた。
「ありがとう、父さん、
じゃあ、やって見るね『アース・クリエイト!』」
ロックが唱えると、
土の中から、石や、木の根などが飛び出して来て粉砕され、
土もフカフカの状態に軟らかくなった。
「こっ、これは!?
まさか、ロックの土魔法の威力が、これ程とは・・・」
「村長さん、土魔法とは凄いもんじゃな!」
「すぐに種を蒔いても良い状態じゃな。」
「ロックちゃんの土魔法は大したもんじゃな。」
ロックが、魔法を使うのを眺めていた村の者たちも、
その威力に、とても驚いている様子だ。
「父さん、こんな感じで大丈夫?」
「ああ、作業が大分捗ったよ、
ありがとうな、ロック。」
「ううん、僕の土魔法が役に立って良かった。」
ロックは、村人たちに感謝されながら、
ランニングコースの改造へと向かった。
「う~ん、やっぱりアップダウンは欠かせないよなぁ、
坂道だけじゃなくて、階段みたいのも造った方が効果的かな?」
ロックは、ランニングをしながら、
思考錯誤を繰り返して、コースを造り上げて行った。
「うん!こんなもんかな。」
漸く、納得が行くコースが出来上がったのは、
ロックが造り始めてから5日目の事であった。
「ロック、新しいランニングコースが出来上がったのか?」
ロックの兄のルックが聞いて来た。
「うん!前のコースだと、
スタミナ中心のトレーニングだったんだけど、
今度のコースは、戦闘に大事な足腰も鍛えられる様に、
造ったんだ。」
「ふ~ん、坂道とかあって、
中々、面白そうなコースだな、
戦闘に役立つなら、俺たちも走って良いか?」
もう一人の兄レックが聞いてくる。
「勿論だよ!
効果は保証するから、毎日走った方が良いよ。」
「そうか、前にロックから教わった、
ジューナン体操だっけ?
確かに、あれを毎日する様にしてから、
戦闘訓練で体を痛める事が少なくなったからな、
今度も期待して、やってみるかな・・・
しかし、ロックは、
一体どこから、こんな知識を仕入れて来てんだ?」
「そ、それは・・・そう!
行商に来た小父さんが、王都の騎士団の人たちは、
こんな訓練をしているって教えてくれたんだよ!」
「おお!騎士団と同じ訓練なのか!
それは、効果が高そうだな。」
「そ、そうだね。」
ロックは、多少の後ろめたさは感じたものの、
効果が高いのは確かなので、
兄の言葉に相槌を打って置いた。
「う~む・・・。」
ロックの兄たちが、
ロックが造ったクロスカントリーコースを走り始めてから、
少し経った頃、
2人の戦闘訓練を見ていた父マックは、考え込んでいた。
「やはり、あれの効果としか考えられんな・・・」
マックは、息子たちの剣を振り切った後の、
踏ん張りや、
戦闘中の疲労具合が、飛躍的に向上しているのに、
気付いていた。
「良し!決めたぞ。」
マックは、考えを纏めた様に声を上げた。
その日の晩の、夕食の席での事、
「ロック、父さんは村の子供たちの中で、
将来、冒険者として有望そうな子たちを選んで、
ルックたちと一緒に鍛えようと思ってるんだが、
お前が、ルックたちに教えたジューナン体操や、
クロスカントリーコースを訓練に取り入れても良いか?」
「うん、全然構わないよ、
でも、一つだけ注意して欲しいんだけど、
僕は『身体能力向上』のスキルの、お蔭で大丈夫なんだけど、
普通の子供だと、小さい時に余り激しい訓練をさせると、
成長の妨げになるらしいから、
その辺だけ、気を付けてあげてくれるかな。」
「ほう、そうなのか、分かった。
小さい子には、
無理を、させ過ぎない様に注意しよう。
しかし、お前は、
どこでそんな情報を仕入れてくるんだ?」
「そ、それは、いつもの様に、
行商の小父さん情報だよ。」
ロックの家族の中では、
行商の小父さん情報の評価がウナギ昇りであった。