モミジ狩り
「さて、畑造りが終わった事だし、
今日は、これで街に引き上げるとするぞ」
「了解っす!ロック先輩」
行きと同様に、魔獣との戦闘も無く、
ヒデブの街に帰って来た
ロックとウィルは、街の入り口の門で、
警備に当たっていたボンゴレに声を掛けた。
「ただ今、帰りました。」
「ちぃ~っす!ボンゴレさん、ちぃ~っす!」
「おお、お帰り、
その様子じゃ、2人とも危なげなく、
森まで行ってきた様だな」
「ええ、それ程、森の奥までは行きませんでしたから」
「最初の内は、そのぐらい慎重な方が、
生き残る事へと繋がるから、良い心掛けだな」
「はい、暫くは森の入り口辺りで、
ウロウロしていようかと思います。」
「俺も、それが良いと思うぜ」
ロックとウィルは、ボンゴレに挨拶をすると、
宿に帰る前に、冒険者ギルドに寄って行く事にする
「ロック先輩、冒険者ギルドに、
何か用があるんっすか?」
「ああ、ちょっと聞いておきたい事があってな、
付き合って貰っても良いか?」
「全然、オッケ~っす!」
ロックは、ギルドの入り口のドアを潜ると、
顔見知りのモモエが腰掛けている、
受付カウンターへと向かった。
「こんちは~、モモエさん」
「ちぃ~っす!モモエさん、ちぃ~っす!」
「あら、いらっしゃいロック君、ウィル君、
今日はクエストを受けてはいないわよね?
常設のクエストでも熟して来たのかしら?」
「いえ、今日は、ちょっと用事があったんで、
クエストは、やらなかったんですよ、
こちらに伺いましたのは、モモエさんに、
お聞きしたい事があったからです。」
「あら、そうなの、
それで、私に聞きたいというのは何かしら?」
「ええ、実は知り合いの食堂の人に、
定期的に、俺が狩った獲物の肉を、
買い上げて頂く約束をしてるんですが、
それって、ギルドを通さないと不味いかどうかを、
お聞きしたくて伺ったんですよ」
「その食堂って、この街にあるのかしら?」
「いえ、ハバラ村です。」
「じゃあ、別段問題無いわよ、
ここのギルドが卸してる食堂なら問題あるけど、
他の村なら構わないわよ」
「そうですか、それを、お聞きして安心しました。」
「ねえ、もしかして、
その食堂って、前にミューニャーが、
ロック君から貰って食べたっていう
プリンて、お菓子を作った店かしら?」
「ええ、そうですよ」
「やっぱり!それなら、ロック君にお願いがあるんだけど、
今度、お肉を卸しに行った時に、
私にも、プリンってのを買って来てくれないかしら?」
「ええ、そのぐらいならご馳走しますよ」
「あら、それじゃ悪いから、
ちゃんと代金は払うわよ」
「いえいえ、モモエさんと、ミューニャーさんには、
お世話になっていますから、是非ご馳走させて下さい。」
「そう?じゃあ、折角のご厚意だから、
ご馳走になろうかしら」
「ええ、どうぞどうぞ、
しかし、それ程、モモエさんが食べたがるところを見ると、
ミューニャーさんが、そんなに美味しかったって、
仰っておられたんですか?」
「ええ、神が与えし奇跡とか言ってたわよ」
「ハハハ、そんな大げさな・・・」
「いえ、ホントにホントよ、
『プリン教』を立ち上げるとか言ってたもの」
「そんなにですか!?」
ロックは、モモエにプリンをご馳走する約束をすると、
ウィルと共に、宿屋へと戻った。
「ふぃ~、相変わらず、
この宿の温泉に浸かるとホッとするな」
常宿である『ジゴクノカマ亭』へと戻った
ロックとウィルは、いつもの様に、
一日の汚れと疲れを癒す為に、
地下洞窟温泉へ入っていた。
「そうっすね!
今日は、畑を造るのに、
結構、魔法を使ったっすから、
温泉に含まれる魔力が染み入るっす!」
「ああ、俺もグングン回復してるのが分かるよ、
最近じゃ、ここまで魔法を使う機会が無かったから、
この温泉の効能が、今いち分からなかったからな」
「ロック先輩の魔力量は人族とは思えない程っすからね、
普通の人族の魔法使いだったら、
直ぐに、この温泉が持つ、
特別な効果に気付くと思うっすよ」
「へ~、そうなんだ」
翌日となり、
薬草畑の方は、暫く薬草の成長を見守る事となったので、
この時間を利用してロックは、
ハバラ村のアンラックの食堂へと納める肉集めを、
始める事とした。
「ロック先輩、この辺で狩れるのは、
どんな魔獣なんっすか?」
「この辺だと、草原で狩れるグレートラビッツや、
森で狩れるボタンボアとかモミジディアかな」
「その程度の魔獣っすと、
自分とロック先輩なら、楽勝っすね」
「ああ、だが油断は禁物だぞ、
俺が暮らして居た村の近くにも、
そこに居る筈が無い、
強力な魔獣が流れて来た事かあったからな」
「へ~、そんな事があったんっすか、
分かったっす!周囲の警戒は怠らない様にするっす!」
「そうだな、俺とウィルの気配察知は、
それぞれタイプが違うから、
2人で行った方が、より安全だな」
「了解っす!」




