畑造り
「よし!土の状態も良い事だし、
薬草畑を作る場所は、ここにするぞ」
ロックが、そう宣言した。
「了解っす!
でも、何から始めるんっすか?」
ウィルが質問してくる
「まずは、大きい木の伐採からだな」
「斧か何かで、切り倒すんっすか?」
「いや、俺の土魔法で、
木の根を掘り起こすんだよ」
「それだと、木が勝手な方向へ倒れるから、
危ないんじゃないっすか?」
「この程度の大きさの木だったら、
俺の手で押していれば、倒れる方向を調整出来るから、
大丈夫さ」
「マジっすか!?
高さ15メートルは、あるっすよ?」
「ああ、この程度の木だったら、
抱え込んで、持ち上げる事も出来るぞ」
「流石、ロック先輩っすね!
パワーも桁違いっすね!」
「そういう訳なんで、
ウィルは、俺が木を倒している間は、
俺の後ろ側に居る様にな、
そっちに居れば、危なく無いから」
「了解っす!」
「よし、じゃあ始めるかな、
『軟化』『掘削』っと・・・」
ロックは木に手を添えると、
土魔法を使って、木の根を掘り返し始める
「おっ、木がグラグラし始めたな、
そろそろ、あの名セリフを叫んでも良いかな?」
『た~おれ~るぞ~!!』
ロックが、大きな声で告げると同時に、
ミシミシいいながら傾き始めた木が、
ズズ~ン!という大きな音と振動を発して、
横倒しになった。
「ロック先輩、その『た~おれ~るぞ~』っていうのは、
なんなんっすか?」
「このセリフはな、本職の樵の皆さんは言わないのに、
何故か、素人が木を切る時には、
言わずにいれないセリフなんだよ」
「そうなんっすか、なんか面白そうっすよね、
自分も一緒に叫んで良いっすか?」
「おう、良いぜ!」
ロックは、次の木に取り掛かった。
「よし、そろそろ次が倒れるぞ、
ウィル準備は良いか?」
「うっす!バッチリっす!」
「よし、行くぞ!」
『『た~おれ~るぞ~!!』』
2本目の木がズズ~ン!と、倒れ込んだ。
「お~!何かチョ~気持ち良いっすね!」
「だろ!?
なんも言えねえ!って感じだろ?」
ロックは、その後も次々に木を倒していって、
やがて、縦横50メートル程の空き地が、
森の中に出来上がった。
「ロック先輩、この倒した木は、
どうするんっすか?」
「それらは、アイテムボックスに収納して、
材木屋さんに買い取って貰うんだ」
「畑の柵とかには使わないんっすか?」
「ああ、畑の周りは、
土魔法を使って、堀と土壁で囲うから良いんだよ」
「なる程、ロック先輩の得意分野っすもんね」
「そういう事だな」
ロックは、倒した木をアイテムボックスに入れると、
ホワタ村の防護壁造りで鍛えた土魔法を使って、
外側に、深さ3メートル×幅2メートルの堀を、
その内側に、高さ2メートル×幅1メートルの土壁を造り上げた。
「ほぇ~、凄いもんっすね、
これ程の、堀や防護壁を備えているなんて、
そこそこ大きな村とかでも無いっすよ」
「こんだけやっとけば、
この辺に居る、魔獣や動物なら入って来れないだろ」
「そうっすね」
「ウィル、外堀に水を張りたいんだけど、
水魔法を使えば出来るか?」
「ええ、いくつか魔石を頂ければ、
水魔法を付与して、地下水脈を引っ張れるっすよ」
「じゃあ、これで頼むよ」
ロックは、ホワタ村で暮らしていた頃に、
セッセと魔獣を狩ってアイテムボックスに貯め込んでいた
魔石を出すと、ウィルに手渡した。
「了解っす!」
ウィルは、ロックから魔石を一つずつ受け取りながら、
水魔法を付与して、青く変わった魔石を、
堀の底に、丸く並べていった。
「後は、水精霊王様にお願いすればオッケーっすね、
『ちぃ~っす!水精霊王様、ロック先輩に頼まれたんで、
地下水脈を、ここに繋いで欲しいっす!』」
ウィルが、魔力を込めた言葉を告げると、
丸く並べた魔石の中央から、始めはジンワリと水が滲みだして来て、
次第に、こんこんと湧き始めた。
『あざ~っす!水精霊王様、あざ~っす!』
「お~、堀に水が湧き出して来たぞ、
サンキュウな、ウィル」
「いえ、お役に立てて光栄っす!」
「後は、堀が水で満たされたら、
中の畑に、適度の水が流れる様に、
水路を設ければ良いな」
「畑全体に、満遍なく水が流れる様に、
自分が調節するっすから、任せて欲しいっす!」
「おう、頼むぜウィル、
水の方はこれで良いから、次は俺の出番だな、
畑の土造りを、やるとするか」
「ロック先輩、薬草を作るなら、
魔力を帯びた土を用意しなくちゃなんないっすよね、
どうするんすか?」
「さっきのウィルと同じさ、
これから、小さな草木を粉砕しながら、
土を耕して行くんだけど、
その時に、土魔法を付与した魔石を混ぜ込んでいくのさ」
「贅沢な魔石の使い方っすね」
「ああ、売っても二束三文の屑魔石がタップリと、
アイテムボックスに入ってるからな、
良い使い道が出来て、却って良かったよ」




