森の探索
「じゃあ、俺達は、これで失礼します。」
装備を整えたロックは、
ウッカリーに、そう告げた。
「うむ、お主らなら心配無いじゃろうが、
十分に、気を付けるのじゃぞ」
「はい、いつもの通りに慎重に行く様にします。」
「失礼しゃ~す!ウッカリーさん、失礼しゃ~す!」
ウッカリーの店を出たロックらは、
ヒデブの街の南門を出て、西側にある森を目指す事にした。
「おっ、ロックじゃないか、
今日も、街の近場でクエストを熟すのか?」
街の南門で警備に当たっていた
警備兵のペペロンが声を掛けて来た。
「いえ、ウッカリーさんにお願いしていた
装備が出来上がったので、
今日は、森に行ってみようかと思います。」
「おおっ!一目見た時から気になっていたんだが、
やはり、その革鎧はウッカリーさんが作った物なのか、
なかなかシブくてカッコイイじゃないか!」
「ええ、俺も、
この仕上がりには十分、満足しています。」
「この辺では見掛けん色合いの革だが、
素材には、何を使っているんだ?」
「俺の村の近くで狩った『カルカッタ・リザード』です。」
「へ~、それが『カルカッタ・リザード』の革なのか、
前に聞いた事があるが、とても軽くて硬い革らしいな」
「ええ、とても動き易いですね」
「そうなのか、いいな~、
俺も、そんな鎧を身に付けてみたいもんだが、
街の警備兵は、お揃いの軽鋼鎧を、
装備する決まりだからな」
「そうなんですか、
まあ、確かに街の兵士なら、
装備に統一性があった方がカッコイイですもんね」
「まあ、そうだな」
「ちぃ~す!ペペロンさん、ちぃ~す!
自分の剣も見てくれるっすか!」
「おうウィル、お前は相変わらず元気一杯だな、
うん?お、おい!
まさか、そのチッコイ剣はミスリル製か!?」
「そ~っす!ウッカリーさんが、自分にくれたんすよ!」
「くれたって・・・
まあ、ロックの鎧を作るのにも結構な金額が掛かっただろうから、
その分、サービスしてくれたのかもな」
「ええ、実は、この革鎧の胸の部分に、
ミスリルを薄く伸ばした板を入れて貰ったんですよ、
偶々、少しミスリルを持ってたんで入れて貰ったんですけど、
その材料が余ったので、加工の練習も兼ねて、
ウィルに作ってくれたらしいですね」
「ああ、材料を提供していたのか、
それなら納得だな、ウッカリーさん程の鍛冶師でも、
ミスリルの加工が出来る機会なんて、中々無いからな」
「ええ、そう仰ってました。」
「ウィル、良かったな、
カッコイイ剣を作って貰えて」
「はい!最高っす!」
「じゃあ、俺達は森に行って来ますね、
日帰りの予定なんで、返って来た時に、
また声を掛けさせて頂きます。」
「おう、お前らなら大丈夫だろうが、
気を付けて行って来いよ」
「はい、じゃあ失礼します。」
「失礼しゃ~す!」
ロック達は、街の南門を潜ると、
そのまま、少し街道を進んでから、
道を外れて、
西の方向に見えている森へと歩みを進めた。
「やっぱ、街の近くだからか、
それ程、魔獣は居ないみたいだな」
森へと、足を踏み入れたロックは、
気配察知に大した反応が無いのを感じて言った。
「そ~っすね、自分にも何も感じられ無いっす!」
水妖精であるウィルは、動物や魔獣の体にある水分を感じ取れるので、
ゴースト系やゴーレムなど以外なら、
かなりの精度で感知出来るのである
「ウィルにも、魔獣の気配が感じられ無い様なら、
この辺は大丈夫だろうな、
よし、じゃあ薬草畑に適した場所を探すとするか」
「了解っす!」
ロックとウィルは、お互いに余り離れ過ぎない様に、
注意をしながら、二手に別れて付近の探索を始めた。
「う~ん、ここの土は、
ちょっと乾燥し過ぎてるかな、
水遣りと、魔力の補充を小まめにするとしても、
土事態に、ある程度の保湿力は必要だからな・・・」
ロックは、適性職種の農夫や土魔法を生かして、
周辺の土の状態をチェックして行った。
「ロック先輩!
こっちに何か、ジメジメした場所があるっすけど、
どうっすかね?」
「おう、今行くよ」
ロックは、ウィルの声が聞こえて来た方向へと、
歩いて行った。
草木を掻き分けながら、森の中を移動して行くと、
ウィルが、フワフワと飛びながら、
両手を頭の上で振って、ロックを呼んでいるのが見えた。
「ロック先輩!こっち、こっちっす!」
「オッケ~・・・よし、この辺か、
今、調べてみるよ」
ロックが、ウィルの所まで行って周りの草を掻き分けて見ると、
確かに、周囲の土が湿ってジメジメとしている、
土魔法で調べてみると、僅かながらの水が湧いている様だった。
「こんな僅かな水気に、
良く気が付いたな、ウィル」
「こと水の事なら、自分に任せて欲しいっす!」




