新装備装着
さて、新たな仲間となった水妖精のウィルと話し合って、
森の中に薬草の畑を造る事としたロックであったが、
森に立入るには、
一応、防具を装備してからにした方が良いので、
鍛冶師のウッカリーに注文した防具が出来るまでの間は、
ヒデブの街の中や、近辺のクエストを受けて、
冒険者ギルドのポイントを稼ぐ事とした。
持って生まれた職業が『農夫』で、
土魔法のスペシャリストであるロックと、
水妖精のウィルというコンビなので、
必然的に受けるクエストは、土木関係や農業関係になったのだが、
2人の能力は、お互いが考えるよりも優秀であった為、
クエストで行く先々の作業場で、
『一時的では無くて、本格的に就職しないか?』との、
勧誘がハンパでは無かった。
今日も、今日とて、
熱烈な勧誘を振り切って返って来た
ロックとウィルは、冒険者ギルドでクエスト完了の手続きを済ませてから、
常宿としている『ジゴクノカマ亭』にて、
地下洞窟温泉に入って、一日の疲れを癒していた。
「ふぃ~、この温泉に浸かると、
ホント気持ち良いよな~」
「マジそ~っすよね!ロック先輩
体の疲れだけじゃなくて、魔力も回復してくれるんすから、
この温泉には感謝しきりっすよ!」
「感謝といえば、ウィルが手伝ってくれたお蔭で、
冒険者に登録してから、まだ一週間しか経っていないのに、
もう、G級からF級に上がれたのにも感謝だな」
「そんなの全然気にしないで良いっすよ!
自分とロック先輩の仲じゃないっすか、
自分が、この街で暮らせているのは、
ロック先輩のお蔭なんすから、
お手伝いするのは、当たり前っす!」
「それでも、サンキュだな、
それから、今日でウッカリーさんに防具を注文してから、
出来上がる予定の一週間が経ったから、
明日の朝、さっそく受け取りに行ったら、
いよいよ、森で薬草畑造りに挑戦だな」
「いよいよっすね、自分もお手伝いするっす!」
「ああ、頼んだぜ!」
翌朝となり、ロックはウィルを伴って、
予定通りに『ウッカリ屋』を訪れた。
「お早う御座いま~す!
ウッカリーさん、いらっしゃいますか~?」
「おう!その声はロックか?
今行くから、少し待っとれや」
店の奥の作業場から返事が聞こえて来る
「はい、分かりました。」
暫くすると、防具類一式を抱えたウッカリーが、
作業場から出て来た。
「最後の調整をしておってのう、
待たせて済まんかったのう」
「いえ、然程の事でもありませんので、
気にしないで下さい」
「うむ、そうかの、
うん?その妖精はロックの連れかのう?」
「はい、新しく仲間になったウィルです。」
「自分は水妖精のウィルっす!
ちぃ~っす!ウッカリーさん、ちぃ~っす!」
「うむ、こちらこそ宜しくのう、
しかし、初めての仲間が妖精とは、
相変わらず、お主のする事は、意表を突くのう」
「ええ、偶然の出会いとはいえ、
俺も驚きました。」
「まあ、それは良いとして、
どうするんじゃ?新しい防具類は、
この場で、身に付けて行くのかの?」
「はい、今日から森に入ろうかと考えていますので、
一式付けて行こうかと思います。」
「うむ、それでは正しい装着の仕方を説明しながら、
手伝うとするかのう」
「ありがとう御座います。
お願いします。」
ロックは、ウッカリーの説明を受けながら、
『カルカッタ・リザード』の革鎧の他、
額当てと、スネ当てを身に付けてみた。
素材の色を、そのままに生かした防具類は、
ややコゲ茶掛かったシブい色合いで、
派手さを好まないロックにとっては、
最高の出来栄えと言えた。
「どうじゃ?違和感などは感じんかのう?」
「はい、とても軽くて、体にフィットしてて良い感じです。
額当てや、スネ当ての方も、
変な遊びとかが無くて、動き易そうです。」
「うむ、そうか、
どうやら喜んで貰えた様で、何よりじゃな」
「はい、ありがとう御座いました。」
「ロック先輩、ちょ~カッコイイっすよ!」
「ウィルもサンキュな」
「そうじゃ、ウィルじゃったか?
お主、これを使ってみるか?」
ウッカリーが、何かを思い付いた様な仕草を見せると、
奥の作業場から、何かを手にして戻って来た。
「ミニチュアの剣ですか?」
ロックが、ウッカリーの差し出した手を見ると、
そこには、5センチ程の長さの剣が乗っていた。
「うむ、お主から貰ったミスリルで、
細工の技術を上げる為に、
試作をしたもんじゃな」
「この、ちょ~カッコイイ剣を、
ホントに自分が貰っても良いんすか!?」
「うむ、練習で作ったもんじゃし、
お主以外には使えそうも無いサイズじゃしのう」
「ロック先輩!ホントに自分なんかが、
貰っても良いんすかね?」
「ああ、ウッカリーさんが良いって仰ってるんだから、
ありがたく頂いておけよ」
「しゃ~っす!ウッカリーさん、しゃ~っす!」




