初クエスト完了
「ただ今、戻りました。」
ロックは、ヒデブの街へと帰り着くと、
その足で、冒険者ギルドを訪れた。
一緒に街へと来た水妖精のウィルは、
街の出店の食べ物に興味深々だったので、
ロックが適当に買い与えて、ギルドの外で食べさせて居た。
「あら、お帰りなさいロック君、
どう?薬草の採取は上手い事行ったのかしら?」
冒険者ギルドの、受付カウンターに腰掛けて居たモモエが、
ロックに声を掛けた。
「ええ、お蔭様で、
結構な量が集まりました。」
ロックは、ダミー用のバックから取り出す振りをしながら、
アイテムボックスから薬草を取り出すと、
受付カウンターの上に乗せた。
「えっ!?今日だけで、
そんなに採って来たの?」
「ええ、『マアマアキキ草』が100本、
『ナカナカキキ草』と『カナリキキ草』が各20本づつあるので、
確かめて貰えますか」
「ええ、今、数えるから、
ちょっと待ってね、2、4、6・・・
はい、確かに申告通りの本数を確認したわ、
それにしても、この街の周辺で、
よく、これだけの量の薬草が集められたわね、
薬草集めのクエストは、初級冒険者が良く受けるから、
初級冒険者だらけの、この街では、
なかなか纏まった量は集まらないんだけれどもね」
「ええ、新しく出来た仲間に手伝って貰いましたんで、
何とか集められました。」
「あら、もうパーティーを組む仲間が出来たの?」
「いえ、仲間は冒険者じゃ無いんで、
パーティーでは無いですね」
「冒険者じゃ無いって・・・?」
「ゴチっす!ロック先輩、ゴチっす!」
その時、冒険者ギルドの外で、
出店で買った商品を食べていたウィルが、
食べ終えた様で飛んで来た。
「おう、美味かったかウィル」
「ちょ~美味かったっすよ!
あんなに美味い食べ物を、初めて食べたっす!」
「そうか、喜んで貰えた様で、
何よりだな」
「ロック君、新しい仲間って、
もしかして、その妖精なの?」
2人の、やり取りを聞いていたモモエが、
唖然とした様子で尋ねて来た。
「ええ、水妖精のウィルです。
ウィル、この人はモモエさんていう名前の、
冒険者ギルドの職員の方で、
俺が、色々とお世話になってる人なんだよ」
「ちぃ~す!モモエさん、ちぃ~す!
自分はウィルっす!宜しくお願いしゃ~す!」
「え、ええ、こちらこそ宜しくね、
それにしても驚いたわ、
まさか、ロック君の仲間が妖精だなんて・・・」
「妖精って珍しいんですか?」
「いいえ、妖精自体は、
森の奥などで、偶に見掛けられるから、
それ程、珍しい存在って訳じゃ無いんだけど、
人間の仲間になるって事が珍しいのよ、
私は、冒険者ギルドに勤めている関係で、
割と色んな情報が入って来るんだけど、
妖精を仲間にした冒険者なんて聞いた事は無いわね」
「そうなのか?ウィル」
「そ~っすね、勝手に人間と仲良くなんてすると、
兄貴達に、教育的指導として『カワイガリ』されちまうっすよ」
「ウィルは、大丈夫なのか?」
「うっす!自分は、水妖精王様の許可を頂いてるっすから、
兄貴達には怒られないっす。」
「そうか、あの水妖精王様が、
ウィル達のトップなんだもんな、
トップが決めた事なら、
その下の者たちは認めざるを得ないだろうな」
「今の会話を聞いてると、
ロック君が、水妖精王に会ったみたいに聞こえるんだけど・・・」
モモエが、恐る恐るという感じで聞いて来る
「ええ、お会いしましたよ」
「ええ!?一体どこで!?」
「すいません、それは水妖精王様との約束で言えないんですよ、
ただ、普通には辿り着けない場所とだけ申し上げておきますよ、
俺が、そこに行けたのも偶然でしたので」
「そうなの・・・
じゃあ、薬草を採って来たのも、その場所なのね?」
「ええ、水妖精王様の、ご許可が頂けましたので」
「それじゃ、仕方が無いわね、
冒険者が、自分専用の秘密の狩場を設けるのは、
ギルドの規約でも認められている行為ですからね」
「すいません」
ロックは、クエスト完了の証拠として、
冒険者カードにポイントをチャージして貰うと、
薬草の買い取り料金を受け取ってから、
宿へと帰って行った。
ちなみに、薬草の買い取り金額は、
低級治療薬の原料となる『マアマアキキ草』が1本500ギル、
中級治療薬の原料となる『ナカナカキキ草』が1本1000ギル、
上級治療薬の原料となる『カナリキキ草』が1本3000ギルで、
合計130000ギルであった事により、
ロックが『冒険者って結構、儲かる職業なんだな』などと考えていたが、
もちろん、一人で、これ程の量の薬草を1日で集めるのは、
普通の冒険者には無理なのである・・・




