クエスト進行中
「じゃあ、水妖精王様、
街に帰る前に、泉の周りに生えている薬草を、
少し頂いて行きます。」
「ロック先輩、自分も手伝うっす!」
『多少、抜いたところで、
また直ぐに生えて来るのだし、
遠慮せずに、タップリと持ち帰っても良いぞえ』
「えっ?そんなに直ぐに生えて来るんですか?」
『ああ、ここには薬草の生育に必要な、
魔力を含んだ土壌と水がタップリだからね、
抜いたところで、次の日には元の通りさね』
「そうなんですか、
それって、他の場所でも、
魔力を込めた土や水を与えれば、薬草が育ちますかね?」
『ああ、確かに育ちはするが、
魔力を含む土は兎も角として、
水の方は、小まめに与えねばならないから、
手間が掛かるぞえ』
「土は偶にで良いんですか?」
『うむ、魔力を含んだ水を2~3日置きに与えられるなら、
土の方は、半年に1回でも魔力を与えれば良いさね』
「それは、大変に貴重な情報を教えて頂きまして、
ありがとう御座いました。」
『な~に、このぐらい妖精なら、
誰でも知ってる事さね』
「そうなんですか?
じゃあ、ウィルも知ってたの?」
「えっ!?あ、当たり前じゃないっすか!
も、勿論、知ってたっすよ、
何言ってんすかロック先輩、
この自分が、知らない訳無いじゃないっすか!」
((知らなかったんだ(じゃの)・・・))
「じゃ、すいませんが採取させて頂きます。
ウィルも手伝ってくれるか」
「了解っす!」
『うむ、好きにして良いぞえ』
水妖精王は、そう告げると、
空気に溶け込む様にス~ッと消え去って行った。
「じゃあ、採取を始めるとするけど、
ウィルは、この薬草を集めてくれるかな」
ロックは、近くに生えていた
低級治療薬に使う『マアマアキキ草』を手折ると、
ウィルに良く見える様にと、差し出した。
「ああ、それが薬草なんすか、
それなら、そこら中に一杯生えてるっすね」
「あれ?ウィルは薬草の事に詳しいんじゃ無かったっけ?」
「そ、そおっすよ!
偶々、その薬草を知らなかっただけっすよ、
いや~、他の薬草なら知ってたんすけどね!」
(嘘つけ・・・)
「そうだったのか、
じゃあ、その薬草を10本づつ束にして、
10個ほど採取してくれるか」
ロックは、アイテムボックスから、
薬草を縛る為のヒモを取り出して、
丁度良い長さにカットしてから、
ウィルに手渡した。
「了解っす!」
ウィルは、ヒモの束を肩に担ぐと、
『マアマアキキ草』が群生している方に向かって、
飛んで行った。
「さ~て、あっちはウィルに任せて、
俺の方は中級治療薬に使う『ナカナカキキ草』や、
上級治療薬に使う『カナリキキ草』を集めるとするかな」
ロックが、ざっと見渡したところ、
『マアマアキキ草』程では無いものの、
ポツリポツリと点在している様だった。
ウィルが手伝ってくれた事もあり、
ロックは小一時間ほどで、
『マアマアキキ草』を100本、
『ナカナカキキ草』を20本、
『カナリキキ草』を20本ほど集める事が出来た。
「良し、こんなもんで十分だろ、
じゃあウィル、ヒデブの街に帰るとするか、
水妖精王様、お邪魔しました!」
ロックは、聞こえるのかは分からないが、
泉に向かって挨拶をして置いた。
「了解っす!」
『うむ、ロックよ、いつでも来るが良いぞよ、
ウィルも、確りと見聞を広めて来るのじゃぞ』
姿は見えないものの、泉の方から、
水妖精王からの返事が聞こえて来た。
「はい、ありがとう御座います。」
「うっす!水妖精王様、
では、失礼しゃ~っす!」
ロックとウィルは、
再び、ロックが入って来る時に使った
洞窟を通って、岩山の外へと出て来た。
「そう言えば、
洞窟の入り口が開けっぱなしだったけど、
誰かに見られなかったかな?」
ロックは、今、自分たちが出て来た
洞窟の入り口を見ながら言った。
「大丈夫っすよ、ロック先輩、
この岩山全体に、水妖精王様の結界が掛かってるっすから、
ロック先輩以外には、洞窟が見えないんすよ」
「でも一応、元通りに塞いで置いた方が良いよな」
「そうっすね、結界は入り口が見えないだけじゃなくて、
『何だか近づきたくない』って思わせる効果もあるんすけど、
偶然、見えない入り口の前で躓いたとか、
誰かに押されて近付いた場合なんかは、その限りでは無いっすから、
塞いで置いて貰った方が安全っすね」
「そうなのか、分かった。
じゃあ、元通りにして置くとするか、
『軟化』『変形』『硬化』っと、
良し、これで良いな」
ロックは、土魔法を使って、
洞窟の入り口を、元の通りに岩の壁で塞いで置いた。
「じゃあ、行こうぜウィル」
「了解っす!」




