仲間
『おや、そこに居るのはウィルかい?
うん?もしかして隣に居られるのは、
お客さんなのかね~』
水妖精王が尋ねて来た。
「そうっす、自分はウィルっす、水精霊王様
そして、自分の隣にいらっしゃるのが、
人族のロック先輩っす。」
「始めまして、水精霊王様
俺は、ヒデブの街で冒険者をしているロックと申します。
宜しくお願いします。」
『おやおや、人族が、
ここを訪れるとは珍しいね、
およそ、1000年振りには、なるだろうね~、
良く、洞窟の入り口の結界を越えられたもんさね』
「そうっすよね、自分もそれが不思議だったんすよ」
「結界ですか?
俺、普通に土魔法で岩に穴を開けて入って来ましたけど」
『土魔法でだって?
そう簡単には、破れる結界じゃ無いんだけどね~
うん?お前さん、もしかして越界人かえ?』
「えっ!?マジっすか水妖精王様!?」
「その越界人っていうのは、何なんでしょうか?」
『1000年前に、この地を訪れた人族もそうだったんだが、
越界人っていうのは、体ごととか、魂のみとか、
色んなパターンは、あるものの、
簡単に言えば、他の世界から、
こちらの世界へと越えて来た者の事さね』
「そうなんですか、
でも、何で水妖精王様は、
俺が、その越界人だと思ったんですか?」
『それは、越界人の中に、
稀に結界が効かない者が現われるからさね、
世界間を越えるという事は、体や魂に、
もの凄い負荷が掛かるんだよ、
だから、他の世界から来た者の中には、
自然と、最高の『結界破り』が見に付く者が居るのさ』
「そりゃ、凄いっすね!」
「スキルとしての『結界破り』とかも、
あるのではないのですか?」
『そりゃ、あるにはあるが、
ここの結界を破れる程の、上級スキルを見に付けるには、
そなたの年齢じゃ短すぎるのさね』
(こりゃ、下手に誤魔化すよりは、
素直に話した方が良いかな・・・)
「水精霊王様が、ご推察の通りに、
俺は越界人ですね、向こうの世界で命を落としたら、
こっちで生まれ変わりました。」
「えっ!?マジなんすかロック先輩!?」
『やはり、そうなのかえ、
何か警戒をしている様だが、そう気にする事は無いぞぇ、
基本的に、妖精族は人類には不干渉だからねぇ、
私らに知られたところで、それが他に漏れる事は、
まず無いと考えて良いぞぇ、
お前も分かってるだろうねぇ、ウィル』
「たりまえっすよ~、自分がロック先輩に迷惑掛けるなんて、
マジありえないっす!」
「そうなんですか、それをお聞きして安心しました。
人類は、異端者に対して厳しいですからね、
越界人なんてバレたら、一生牢獄に投獄されかねませんからね」
『そうさね~、人類は怖がりが多いからねぇ、
自分らと違う者には、本能的な恐怖を覚えるのさ』
「そうなんでしょうね」
「何でなんすかね~、人類皆兄弟っすよね」
『それで、ロックとやら、
そなたは、この地に何の用があって赴いたのかえ?』
「はい、ここを訪れたのは、
水脈を辿っていて偶然訪れたのですが、
用向きとすれば、薬草を探して居りました。」
『そうかぇ、では、
ここの薬草を自由に採取しても良いから、
この場所の事は秘密にしておいて、おくれでないかねぇ』
「はい、俺の方は、
それで助かりますが、
水妖精王様の、お力ならば、
俺を強制的に黙らせる事も、
出来るのでは無いでしょうか?」
『どうかねぇ、越界人には特別な力を持つ者が多いからねぇ、
そなたを見た目で判断すると、
痛い目を見るのは、私かも知れないしねぇ、
余計な危険を冒すよりかは、
仲良くして置いた方が良いと思ってねぇ』
「でも、俺が誰かに話してしまうかも、
とは考え無いんですか?」
『それに関しては、然程心配はしていないねぇ、
そなたが、素直に越界人と認めた事からも、
正直な者だと分かるからね、
話さないと約束したら、そなたは話さないだろうねぇ』
「そうっすよね、自分もロック先輩は善い人だと思うっす」
「ハハハ、俺は、それ程、
善人という訳ではありませんが、
その、ご期待を裏切らない様にします。」
『では、お互いの友好の証として、
そのウィルを、一緒に連れて行っておくれでないかぇ?
こう見えて、人族よりは水魔法が使えるから、
冒険者の相棒としては優秀だと思うぞぇ、
もともと、ウチの一族では、
若い妖精に、外の世界というものを知らしめる為の、
旅をさせるから丁度良いのさね』
「マジっすか!?水妖精王様
ロック先輩しゃ~っす!自分、仕事するっすよ!」
「はあ、
まあ、俺は一人で行動してるんで、
それは、構いませんが、
ウィルが良いっていうなら、一緒に行くとしようか」




