牛乳買って来い
「うん?この中へと続いているみたいだな・・・」
ロックが、ダウジング・ロットを使って、
地下の水脈を辿って行くと、
大きな岩山へと、突き当たった。
「こりゃ、もう辿って行くのは無理かな?」
ロックは一応、土魔法を使って、
岩山の中を感知してみる事にした。
「おっ!中に空洞が続いてるみたいだな、
よ~し、岩の表面を加工してみるか、
『軟化』『変形』『硬化』っと」
ロックが土魔法で岩の表面を加工すると、
岩山の奥へと続く洞窟と、
そこを流れる小川が現われた。
「何か、まるで態と隠してあるみたいな、
不自然さを感じる洞窟だな、
よし、行ける所まで、行ってみるとするかな」
ロックは、アイテムボックスから魔導懐中電灯を取り出すと、
ジャブジャブと、岩の洞窟の奥へと続いている、
小川に踏み入って行った。
ちなみに、この魔導懐中電灯は、
冒険者登録をした際に、強制的に買わされる、
新人冒険者セットに入っている物であり、
他にも、500mmのペットボトル程度のサイズなのに、
10リットルもの水が入る魔導水筒や、
一人用テント、保存食、食器類、着火魔導具などが入っていた。
「しかし、この世界にも懐中電灯があるとは思わなかったな、
しかも、定期的に魔力を補充すれば、
ずっと使えるっていうんだから、
超エコロジーだよな・・・うん?外に出られるのかな?」
ロックが、ジャブジャブと小川洞窟を進んで行くと、
前方に光が見えて来たので、そのまま向かってみる
「おお~っ!キレイな所だな」
ロックが洞窟を抜けると、
そこには、周囲を高い岩壁に囲まれた空間が現われて、
その空間は、約300メートル程の円形をして居り、
円形のほぼ中央に、小川が流れ込んでいる美しい泉が、
佇んでいた。
そして、その泉をグルリと取り囲む様に、
様々な草花が咲き乱れていて、
優しい日差しに光り輝いて見える
「ちぃ~す!
人族さん、ちぃ~す!」
「うわっ!ビックリした~」
ロックは、気配察知に何の反応も、
無かっにも関わらず
突然、後ろから大きな声を掛けられたので、
驚いて飛び上がった。
声が聞こえた方を振り返って見ると、
ロックの目に、身長20センチ程で、
体の造りは人族に良く似た、
背中にトンボの様な羽根を持つ生物が映った。
「え~と、君は妖精族ってやつなのかな?」
「そ~っす、自分は妖精族っす
水の妖精の一員に、名を連ねて居る
ウィルって言うんすよ、宜しくっす」
「あ、ああ、俺はロックだ
宜しくなウィル、
でも何か、俺が想像していた妖精族の印象とは、
違うんだよな~」
(ってか、日本に居た頃の、
野球部の後輩と話してる感じになるよな・・・)
「そうなんすか?
妖精族は、みんな、こんな感じっすよ、
風妖精の連中は、何かスカした喋り方をしますが、
土妖精や火妖精も、こんな感じっす。」
「へ~、そうなんだ、
やっぱり、各妖精族ごとにテリトリーとか決めて、
住み分けているのかな?」
「そうっす、各々が住み易い場所を選んで、
暮らしてるっすね」
「上下関係とかって、あるのかな?」
「各妖精族間は平等っすけど、
各々の一族の中には上下関係があるっすね、
妖精族は長生きする分、1年に一人しか生まれて来ないっすから、
年功序列は絶対なんすよ」
(何か、部活の先輩・後輩みたいなノリなのかな?)
「ちなみに、水妖精で一番偉い人っていうと、
何歳ぐらいなの?」
「水妖精族で今、一番偉いのは水妖精王様で、
1361歳っすね」
「妖精族って、
そんなに、長い事生きてるんだ!?」
「そ~っすよ、先代の妖精王様なんて、
1526歳まで生きたそ~っすから」
「へ~、そりゃ凄いな・・・
ちなみに俺は15歳なんだけど、
ウィルは何歳なの?」
「自分は13歳っす!
ちぃ~す!ロック先輩ちぃ~す!」
「いやいや、俺は人族なんだから、
そんなに畏まる必要とか無いでしょ」
「そう言って安心させといて、
後から『お前、さっきタメ口利いてただろ』とかって、
言わないっすか?」
「それって、イヤな上下関係だな、オイ!」
「先輩は神様っすから」
「運動部かっ!」
「先輩の言う事はゼッタイ!」
「だから、運動部かって!」
「おい!おめぇパン買って来いよ」
「使いっパとか、あるのかよ!?」
『何ですか?
やたらと騒がしい様子ですが・・・』
泉の方から、女性らしき声が聞こえて来る
「あっ!ち~っす!
水妖精王様ち~っす!」
「あれが、水妖精王様か・・・」
ウィルが泉の方を見やって挨拶をしたので、
ロックも、そちらへと目を向けて見ると、
泉の上に、人族と、そう変わらぬ身長で、
昔の中国の衣装の様な形をした
青い衣装を纏う透き通った
性別を感じさせぬ中性的な、長髪の人物が浮かんでいた。




