初クエスト
「お早う御座います!」
ヒデブの街の南門へと来たロックは、
門の警備に当たっている兵士に、
朝の挨拶をする
「おう、お早うさん、
うん?
お前さん見ない顔だけど、ルーキーかい?」
「はい、昨日、
冒険者登録をしましたロックと申します。
今後とも宜しくお願いします。」
ロックは、貰いたての冒険者カードを提示しながら、
兵士に告げた。
「ああ、お前さんがロック君か、
同僚のボンゴレから聞いてるよ、
将来が楽しみなルーキーらしいな、
俺は、ペペロンっていうんだが、
主に、この南門で警備に当たっているから、
宜しくな」
「はい、ペペロンさんですね、
これから、お世話になります。」
「それで、今日はどこへ行くんだ?
早速、何かのクエストを受けたのか?」
「はい、まだ防具が出来上がっていないので、
草原で、薬草の採取をしようかと思いまして」
「ああ、ここの草原なら、
滅多に大型の魔獣が出る事は無いから、
大丈夫だな」
「そうなんですか・・・」
(ペペロンさん、フラグが立ちそうな発言は、
ご遠慮下さい)
「初めてのクエストなんだから、
余り無理をしないで、
早めに、切り上げて来る様にするんだぞ」
「はい、分かりました。
ご忠告、ありがとう御座います。」
「いや、良いって事よ、
ここは、始まりの街って呼ばれるだけあって、
しょっちゅうルーキーが、やって来るからよ、
結構多いんだよ、採取系のクエストに夢中になり過ぎて、
門が閉鎖される時間までに、帰って来ないヤツ」
「門が閉鎖されたら、
帰って来ても、街に入れて貰えないんですか?」
「いや、身分を証明する物を提示すれば入れるんだが、
手続き料を取られるんだよ、
大した額じゃ無いって言えば、そうなんだが、
ルーキーだと、色々と物入りだから、
余計な出費は控えたいだろ?」
「そうですね、分かりました。
気を付ける様にします。」
ロックは、特別お金に困っている訳では無かったが、
自分の事を案じて言ってくれてるのは分かるので、
素直に返事をしておいた。
「おう、気にでも留めといてくれや」
「それで、ちょっとペペロンさんに、
お聞きしたい事があるのですが、
ここの草原で、川とか、水が湧いてる場所とか、
ありませんか?」
薬草は、主に日当たりが良く、
風通りが良い、土が湿った場所に群生し易いので、
ロックは尋ねてみた。
「おお、湧水ならあるぜ、
川は、森の方に行かないと無いんだが、
あそこに見える丘の、
左手の裾辺りに、水が湧いてるんだよ」
「そうですか、分かりました。
ありがとう御座います
助かります。」
「おう、気を付けて、
行って来いよ」
「はい」
ロックは、ペペロンに聞いた
丘の方へと向かって歩き始めた。
一応、周囲の気配を探りながら、
草原の中を進んで行くが、
ペペロンが言っていた様に、
小動物や、小型の魔獣しか居ない様子で、
ロックの存在に気が付いても、
皆、逃げて行くものばかりであった。
「ふ~、変なフラグが立っていなくて、
助かったな・・・」
別段の問題も無く、
丘の裾に辿り着いたロックは、
ホッとして、つい呟いてしまった。
「はっ!俺とした事が、
つい・・・」
ロックは、自分の呟きも定番のフラグなのに気が付いて、
周囲の様子をジックリと確かめてみた。
「・・・・・さて、始めるか」
暫く、周囲の様子を窺ってみたが、
別段、変化も無さそうなので、
何か起こる前に、さっさと薬草集めを始める事にした。
「う~ん、ここには、
もう余り残っていないみたいだな~」
そこここに点在している薬草を、
集めていたロックであったが、
この場所は、低級冒険者の採取場となっている様で、
思う様には、集める事が出来なかった。
「しょうがない、
まだ時間的にも早い事だし、
新しい採取場所でも探してみるかな」
ロックは、アイテムボックスから、
先が曲がった針金を2本取り出すと、
両手に1本ずつ持った。
「湧水の水脈は、あっちの方みたいだな・・・」
そう、ロックは日本で言うところの『ダウジング・ロット』を、
利用したのである、
ホワタ村で暮らしていた頃に、
村の者達が、新しく掘る井戸の場所を探すのに、
難儀しているのを目にしたロックは、
何の気なしに針金で『ダウジング・ロット』を作って、
探してみたところ、100パーセントの確率で、
見つけられる事に気付いたのである、
どうやら、意識せずに、
常日頃から体に纏っている魔力が、
何かしらの作用をしている様であった。
ちなみに、何故、
それが分かったかというと、
探し易い金属があるかと考えたロックが、
いろんな金属でロットを作って検証してみたところ、
魔力を通し辛い金属だと、探知に時間が掛かって、
一番魔力を通し易いミスリルが、一番性能が良かったからである、
勿論、現在使っているロットもミスリル製であった。
土魔法が得意なロックなので、
水晶の振り子を使ったダウジングの方が、
精度が高いのでは?
と考えて試してみたが、
何故か、そちらの方は上手く行かなかった。




