初対面のイメージが肝心
「勿論、リック達には副作用の危険は説明したんじゃぞ、
しかし、彼らが『どうしても村を救いたいから』と言うので、
あの魔導具を与えたのじゃ」
ジョゼ爺ィは、ロックの批難に対して、
言い訳する様に告げた。
「そうなんですか?」
ロックは、まだ疑わしそうな表情をしている
「ワシも、人体実験の手間が省けるしの」
「おい、本音が漏れてるぞ」
「しかし、例の副作用が出ても、
村を救った事を、
連中は、ちぃ~っとも後悔しとらんかったぞ」
「冒険者として、立派な心掛けですね」
「いや、救った村が獣人族の村じゃったもんで、
ケモ耳娘達にモテモテじゃったからじゃ」
「俺の感動を返せ!」
「そして、リック達はパーティー名を、
『神々の黄昏』から『ケモ耳守り隊』へと、
変えた訳じゃ」
「どーでも良い情報だな」
「そう言ってやるな、
彼らは、彼らなりに自分の信念に基づいて、
行動したんじゃからな」
「それは、分かりますけど・・・」
「ワシも、魔導具の欠点に気付けたしな」
「それの方が重要だったんじゃないでしょうね?」
「そ、そんな事、
ある筈無いじゃろう・・・」
「やけに目が泳いでますね」
「き、気の所為じゃよ、気の所為」
「まあ、リック兄ィ達が納得してるんなら、
それで良いかな」
「そうじゃよ、
彼らのパーティーは、獣人族の街や村限定で、
クエストを熟して、
人気を博して居るからの」
「どおりで、リック兄ィのパーティーの話を、
人族の村に行商をしてる小父さん達から、
全然聞かなかった訳だよ」
ロックは、それから、
話は、そこそこにして切り上げると、
天然温泉を楽しむ事とした。
「ふぃ~、いいお湯だな~」
体を洗い場で綺麗にしてから、
湯船へと浸かったロックは、その余りにもの気持ちの良さに、
思わず至福の表情を浮かべた。
「そうじゃろ、
ワシも、この街の連中も、
元々は風呂に入る習慣など無かったんじゃが、
この温泉の気持ちの良さを知ってしまったら、
2日と開けずに入らずには居られなくなったぞ」
「あ~、分かる気がしますね」
「ここの女将も人が良いから、
込み合う時間以外は、泊り客じゃなくても、
温泉を解放しとるしな」
「宿に泊まらなくても、
この温泉に入れるっていうのは魅力的ですよね」
「うむ、この街で店や住居を構えて居る者も、
新しく出来た銭湯では無くて、この温泉に入りに来る者が、
少なからず居るな」
「でしょうね、普通の銭湯よりも、
疲れが取れたり、肌に艶が出たりするでしょうからね」
ロックは、少し茶色掛かった粘り気があるお湯を、
肌にすり付けながら言った。
「そうなんじゃよ、
肌が美しくなる気がすると、
男連中よりも、女連中に人気があるんじゃ」
「そう言えば、肌が美しくなるで思い出したんですが、
女将さんに売って貰った『洗い布』って、
凄い性能ですね、
お湯に浸けてから、体を拭いただけなのに、
体の汚れや、汗の匂いなんかが、
スッキリと取れましたよ」
「うむ、その『洗い布』と『拭き布』は、
ワシの自信作じゃからな」
「えっ!?
これも、ジョゼ爺ィが造ったんですか?
へ~、なんだ、
ちゃんとした物も造れるんじゃないですか」
「ワシが造る物は、その殆どが、
ちゃんとしとるわい!」




