ただのシカバネのようだ・・・
「剣は、そのまま持って行って良いが、
防具類が出来るのに、一週間程掛かるぞい」
ウッカリーが、ロックに告げた。
「分かりました。
またその頃になったら、顔を出します。」
「うむ、待ってるぞい」
「お願いします。」
ロックは、ウッカリーの店を後にすると、
兄レックが使っている常宿を訪ねる事とした。
「ここかな?
しかし、宿の名前が『シカバネ亭』って、
レック兄ィは、一体何を基準にして、
この宿を選んだだろう・・・?」
ロックが、宿の入り口のドアを開けて、
中へと踏み入れると、
「いらっしゃいませ!
ようこそ『シカバネ亭』へ!」と、
受付に座っていた
10代後半ぐらいに見える、
超美人の娘が歓迎の声を上げた。
(レック兄ィが、この宿を選んだ理由は、
これだな・・・)
「こんにちは、俺はロックって言うんですけど、
こちらで、お世話になってるレックの弟です。
兄は、もう帰って来ていますか?」
「あら、レックさんの弟さんなの、
私は、この宿の娘でリラっていうの宜しくね、
それから、レックさんなら、
もうお帰りになってるわよ、
そこの階段を上がって、
2階の3号室にいらっしゃるから、行って見たら?」
「はい、では失礼します。」
ロックは、リラに聞いた階段を上がって、
3号室と書かれた木札が付いたドアをノックした。
「はい、何でしょうか?」
中から、兄の声で返事が聞こえる
「レック兄ィ、ロックだけど、
今、着いたんだ。」
「お~、ロックか!
今、行くぜ!」
部屋の中で、足音が近付いて来ると、
ガチャッ!とドアが開いた。
「久し振りだな、ロック
お前、また背が伸びたんじゃないか?
俺や、ルック兄ィは完全に抜かれたな・・・」
「久し振り、レック兄ィ
うん、レック兄ィが村を出てから15センチ伸びたから、
180は超えたかな?」
「マジか!?
下手したら、
リック兄ィよりデカくなるんじゃないのか?」
ロックの兄達では、次男のリックが一番背が高く、
190センチを超えている、
続いて長男のラックが185センチ程で、
3男のルックと、4男のレックは175センチ程だった。
「うん、まだまだ伸びてるから、
その内に追いつけるかも」
「まだ伸びてるのかよ、い~な~、
俺なんて、175からパッタリと伸びなくなったよ」
「でも、レック兄ィは、
村に居た頃と比べると、
体がガッチリしたよね、筋肉の厚みが増した気がするよ」
「ああ、実際に冒険者になって、
クエストで魔獣と戦う様になると、
訓練とは違う筋肉を使ったりする様になるみたいで、
最初は筋肉痛で大変だったよ、
でも、段々と慣れてくると、
前よりも体が動く様になってくるんだぜ」
「へ~、そうなんだ。」
(あ~、僕もジョセフさんと魔獣を狩った時になったな、
あれって多分、急激に経験値が伸びたんで、
成長痛みたいのが、起こったんじゃないのかな?)
「ロック、腹減って無いか?
俺も、これから飯だから、
減ってたら、下の食堂で一緒に食おうぜ、
食堂で飯を食ってたら、
武器のメンテに行ったパーティーの仲間達も、
戻って来ると思うからよ」
「うん、ペコペコだよ、
レック兄ィの仲間の人達にも、
暫くの間は、お世話になるから挨拶したいしね」
「おう、じゃあ行こうぜ、
ここの食堂は、料理のボリュームがあって美味しいから、
宿泊客じゃなくても、食いに来る人が居るんだぜ」
「へ~、それは楽しみだね」
ロックは、兄レックと共に、
宿の1階にある食堂に行く事とした。
「あら、ちゃんと会えたのね」
受付のリラが声を掛けて来る
「ええ、ありがとう御座いました。
リラさん」
「レックさん、可愛い弟さんがいらして良いわね」
「お、お、おう、
そ、そ、それ程、か、可愛くも、
な、な、無いんだぜ」
「兄ちゃん、分かり易過ぎだよ・・・」




