カルカッタ
「その刃を造る時に、
別の金属で挟み込む製造方法は、
ウッカリーさんが考えられたのですか?」
「いや、ワシの叔父も鍛冶師をしとるんじゃが、
その人から教わったんじゃよ」
「へえ、そうなんですか」
(その人が、元日本人から、
日本刀の製造に似た技術を聞いたのかもな・・・)
「その刀は、刃の芯に黒魔鋼を使っとるから、
魔力を流すと、切れ味が増すぞい」
「それなら、全部を黒魔鋼で造った方が、
良い剣が出来るんじゃないのですか?」
「その通りじゃが、
全部に黒魔鋼を使ったのでは、
この街に居る様な、若い冒険者では、
手が出ない値段になってしまうからのう」
「なる程、若手の冒険者が、
ちょっと背伸びをすれば、
購入出来る値段にする為の工夫なんですね」
「そうじゃ、材料の原価と、
剣の性能を鑑みた結果じゃな」
「それで、剣の装飾もシンプルにしてあるんですね」
(流石、ジョセフさんが薦める人だけはあるな)
「若いヤツは、見かけに拘る者も多いが、
冒険者としての、一番の基本である、
『生きて帰って来る』には関係無い事じゃからのう」
「俺も、そう思います。」
「そうか、良い心掛けじゃな、
それで、剣の方は、、それで良いのか?」
「はい、これを頂きます。」
「分かったぞい、
それで、問題は革鎧の方なんじゃがな、
ジョセフが紹介するぐらいじゃから、
お前さんは、いくらも経たん内に、
そこそこ強い魔獣を相手にする様になると思うんじゃよ、
今、ワシの店にある革鎧や、その材料では、
強度的に不足して居るじゃろうな」
「そうなんですか、
それで、強度的に足りそうな材料は、
手に入るんですか?」
「この辺りでは手に入らんから、
他の街からの、取り寄せとなるんじゃが、
それでは、かなり時間が掛かるからのう」
日本と違って物流が確立していない、
この世界では、
品物一つ取り寄せるのにも、
とんでもない時間を要する事があるのだ。
「材料を提供して、
造って頂く事は可能ですか?」
「それは、構わんが、
お主、何か素材を持って居るのか?」
「はい、これなんですが、
見て頂けますか」
ロックは、アイテムボックスから素材を取り出して、
ウッカリーに手渡した。
「お主、アイテムボックス持ちなのか!?
その若さで大したもんじゃのう
しかし、この街では余り、人に見せない方が良いぞい」
「はい、街の入り口で、
ボンゴレさんにも注意されましたので、
信用が置ける人にしか、
見せない様にしようかと思います。」
「ふむ、それが良いぞい、
それで、この素材じゃが、
『カルカッタリザード』の革かの?」
「はい、そうです。」
「ふむ、こいつならば、
その名の通りに、軽くて硬いから、
材料としては十分じゃぞ」
「そうですか、良かったです。」
「それで、お主のアイテムボックスの中には、
何かしらの、鉱物は入って居らんのか?」
「はい、俺は土魔法が得意なんで、
色々と入ってますが、それが何か?」
「革鎧を作る際に、
オプションで、心臓の上に当たる部分に、
薄く伸ばした金属板を入れられるんじゃが、
材料を提供するなら、サービスで入れてやるぞい」
「ホントですか!
じゃあ、これでお願いします。」
ロックは、アイテムボックスから、
金属のインゴットを取り出すと、
ウッカリーへと、手渡した。
「これは!?
この輝きからすると、もしやミスリルか?」
「はい、そうです。」
「確かに、ミスリルなら軽くて、
魔力を通せば強度が増すが、
何とも、贅沢な使い方じゃな」
「自分で魔法を使って、
地中から『抽出』したものを、
集めたインゴットですから、
元手はタダですけどね」
「土魔法で、そんな事が出来るとは、
知らんかったぞい」
「実際には、土魔法の上位に当たる
『土魔導』っていうんですが、
地中に、どんな金属が埋まってるか分かるし、
土を操作して、地表まで上げられるんですよ」
「ほう、それは面白いのう、
土魔法を、そこまで究めるヤツが居らんから、
誰も知らんのじゃろうな」
「それじゃあ、
それで、お願いしても良いですか?」
「それは、構わんが、
こんなには、必要無いぞい」
「サービスもして貰う事だし、
余ったら、ウッカリーさんが何かに使ってくれますか」
「馬鹿を言うな、
ミスリルが、幾らすると思って居るんじゃ、
革鎧を作った余りを貰えるというなら、
剣や、革鎧の加工代はタダで良いぞい」
「えっ!?
ミスリルって、そんなに高いんですか」
(アイテムボックスの中に、結構な量が入ってんだけど・・・)
「うむ、元々、産出量が少ない金属なんじゃが、
魔法との相性が良い事から、
魔法剣、魔法の発動体、魔導具など需要が多いんじゃよ、
だから、かなりの高値で取引されて居るのう」
「そうなんですか、
俺は、ウッカリーさんが宜しいなら、
交換で良いんですけど」
「ふむ、この街の、
若い冒険者では需要が無いじゃろうが、
行商が来た時に、良い材料と交換出来るじゃろうから、
ワシも構わんぞい」
「そうですか、それでは、
交換って事で、お願いします。」
「それでも、ワシの方が貰い過ぎじゃから、
鎧とお揃いの、
額当てと、スネ当ても付けるぞい」
「ありがとう御座います。」




