ヒデブの街にて
ハバラ村を後としたロックは、
相も変わらずにジョギングの様なペースで、
タッタッタッタッとリズムを刻みながら、
冒険者にとって、始まりの街と言われている、
ヒデブの街を一路目指していた。
そして、これも相変わらずに、
手ぶらなロックを見た
盗賊たちもスルーし続けている為、
ロックの旅は、実にスムーズに進んで、
馬車の旅と対して変わらないペースで、
目的地である、ヒデブの街へと到着の運びと相成った。
「そこで、止まれ」
ヒデブの街の入り口にある門にて、
警備に当たっていた兵士が、
ロックに声を掛けた。
「見掛けない顔だが、
近くの村か、街の者か?」
やはり、この兵士も、
手ぶらのロックを見て、近場から来たと考えた様子だ。
「いえ、俺はロックと申しまして、
ホワタ村より、冒険者と成る為に、
この街を訪れました。」
「何、ホワタ村から来ただと?
まさか、ずっと歩いて来たのか?
それに、見た所、手ぶらの様だが、
荷物は、どうしたんだ?」
ホワタ村からは、時々、
冒険者に成る為の若者が訪れるので、
その名前も、この街までの距離も、
兵士は熟知していた。
「はい、足腰の鍛錬の為に徒歩で参りました。
荷物は、俺はアイテムボックスを持ってるので、
その中に入れてあります。」
「何、アイテムボックス持ちだと!?
長い事、この街の門を護り続けて来たが、
ルーキーでアイテムボックスを持つヤツを見たのは初めてだな、
この街まで、徒歩でやって来る心構えといい、
ロックと言ったか?
お前は、中々(なかなか)、将来が有望な若者の様だな」
「ありがとう御座います。」
「そんな、将来が有望なロックに、
俺から、ひと言忠告して置くが、
ある程度の実力が付くまでは、
アイテムボックス持ちって事は、秘密にして置いた方が良いぜ」
「何で、ですか?」
「先輩冒険者たちに、良い荷物持ちとして、
こき使われるからだよ」
「ああ、なる程、
それは、十分にあり得そうな話ですね、
分かりました。
ご忠告に従って、暫くの間は内緒にして置く事にします。
ありがとう御座いました。え~と・・・」
「ああ、俺は、
この街の警備兵でボンゴレって言うんだ。」
「ボンゴレさんですね、
今後とも、宜しくお願いします。」
「おう、ロックも頑張れよ、
それから、これから冒険者ギルドに登録に行くんだよな?
ギルドの場所は、門から入った道を、
真っ直ぐに進んで、3つ目の十字路を右に曲がった突当りだぞ、
2本の剣が交差した形の、デカい看板が掛かってるから、
直ぐに分かると思うぞ」
「そうですか、分かりました。
ありがとう御座います。ボンゴレさん
早速、行って見る事とします。」
「おう、じゃあなロック。」
「はい、失礼します。」
冒険者ギルドへと向かって遠ざかって行く、
ロックの後姿を見ながら、
ヒデブの街の警備兵ボンゴレは、
「久し振りに、
今後の成長が楽しみなヤツが入って来たな・・・」と呟いた。
「おお!ここが冒険者ギルドか、
こっちの世界に来てから、
こんな大きな建物を見るのは初めてだな!」
ボンゴレに教えて貰った通りの道筋を進んだ
ロックの目前には、建坪が200坪はあると思われる、
地上3階建ての建物が、堂々(どうどう)と聳え立っていた。
「良し!早速だけど、冒険者登録をしてみようかな」
ロックは、冒険者ギルドの入り口にある、
大きなドアを開けると、中へと入って行った。
ドアを抜けると、
正面には長いカウンターがあって、
10名程の受付嬢がクエストの事務手続きなどを行っている様だ、
左手には、魔獣や薬草などの素材を買い取るカウンターがあり、
右手は、冒険者たちが打ち合わせをしたり、
食事や酒を楽しむスペースとなっているらしい、
2階へと登る階段の上り口には、
壁に矢印看板が付いており、
ギルド・マスター室、資料室、図書室などと書かれていた。
「いらっしゃいませ!
当冒険者ギルドのヒデブ支部へようこそ!
本日は、どの様なご用件でお出ででしょうか?」
物珍しさから、キョロキョロと周囲を見回していた
ロックを目に留めた受付嬢が、
カウンターを離れて、やって来て、
声を掛けて来た。
「は、はい、冒険者登録をしようと思い・・・あれ?
お姉さん、どこかでお会いした事がありましたっけ?」
その、やたらと胸がデカい受付嬢の顔を見たロックが、
頭を傾げながら尋ねる
「いえ、お初にお目に掛かったと思いますよ」
「そうですか」
「ええ、
それから、冒険者の登録ですが、
こちらのカウンターで受け付けますので、
どうぞ、付いて来て下さいませ、え~と・・・」
「ああ、俺はロックです。
今後とも宜しく、お願いします。」
「ロック様ですね、
私は、当ギルドの受付を担当して居ります
モモエ・ホルスタインと申しますので、
今後とも、宜しくお願い申し上げます。」




