ロック魅入られる(みいられる)
グラウンドで行われていたプレーヤー達のアップも終わり、
競技場では試合前のレセプションが行われている、
プレーヤーらの紹介や、子供達によるレクレーションが行われた後、
ミリボルタ王女の観覧試合とのアナウンスが競技場内へと告げられると、
場内の観客から一際大きな歓声が巻き起こった。
観客に手を振りながら笑顔で応えるミリボルタ姫を眺めながら、
近くに居たジャンヌ副団長に、
この異常なまでの姫様の大人気の理由をロックが聞いてみると、
ミリボルタ姫のベスボル好きは広く国民に知られて居り、
特に同じベスボルファンからは多くの支持を得て居られるとの事であった。
「さあロック、いよいよ競技が開始されるわよ」
観客への挨拶を終えたミリボルタ姫が、
ロックの前の席に腰を下ろしながら、そう告げる。
姫様の言葉に、ロックがグラウンドへと目をやると、
守りに着くギガンテスの選手達が其々のポジションへと向かい、
攻撃側のタッターズの選手がサオを扱きながら打席へと入ると、
審判が大きな声で『ゲームプレイ!』と告げる、
「こ、これは・・・」
ロックは、それから試合終了までの約2時間半の時間を、
呼吸すら忘れた様にジッとグラウンドを見つめ続けた・・・
ロックが、ミリボルタ姫のお供でベスボル観戦に行ってから、
2週間程が経った或る日の王城内にある訓練場にて・・・
「『ウォーターショット』っす!」
「ぐはっ!」
「だ、大丈夫っすか?ロック先輩」
「あ、ああ、スマン俺は大丈夫だ
ちょっとボ~ッとしちゃってたよ、
折角、ウィルに訓練に着きあって貰ってるのに悪かったな」
「いえ、自分は全然オッケーなんっすけど、
最近のロック先輩は変じゃ無いっすか?
今までは、自分の魔法なんて精々が体に掠らせる程度だったのに、
ここんとこ、やたらと直撃してるじゃないっすか」
「ああ何か、ここんとこ訓練に集中出来なくってな・・・」
「なる程、確かにミールが心配していた様に、
ロックの調子が、おかしい様であるな」
「こ、これは国王陛下!
だらしの無い姿をお見せしまして、誠に申し訳が御座いません!」
「ちぃ~っす!王様ちぃ~っす!」
突然、掛けられた声の方へとロックとウィルが目をやると、
そこには、ザドス王国の王様であるイカヅチ・トールハンマー・ザドス国王が佇んでいた。




