新天地にて・・・
「暇だ・・・」
「暇っすね・・・」
念願の騎士となり半年ほどが経過した今現在、
ロックとウィルは暇を持て余していた。
冒険者パーティーの仲間であったアンジェラ・カレン・ファニーの3名は、
ロックの騎士団入りと共に冒険者を引退して、
王都にある、カレンとファニーの父親フウンダ・ガッカリーニ氏が経営をする、
K&F商会の仕事を手伝って居り、
騎士団の勤務が休みの日にロックが顔を出してカレンから聞いた話では、
最近、父フウンダ氏とアンジェラの間の雰囲気が良い感じっぽいとの事であった。
土妖精のハニタロウは相変わらず、
ドボルが領主を務めるハバラの街でスロウライフを送って居り、
ウィルの元に送られて来たハニタロウからの妖精通信によると、
魔王の卵ダンジョン攻略に一役買ったハニタロウの保護者的な立場のドボルは、
ロックと同じ男爵位への昇爵が決まり、
寄り親で大領主であるホゲラムーチョ伯爵の三女サルサ嬢との婚約が、
領内にて発表されたとの事であった。
一方、ザドス王国の男爵位へと叙爵され騎士団への入団を許された際、
爵位を授爵したザドス国王であるイカヅチ国王陛下に、
『騎士として全身全霊を持って務めあげる』との宣言したロックが、
何故、こんなに暇を持て余しているかと言えば、
ロックが入団を許された第六騎士団の勤務形態が少々特殊であったのが、
その原因であった。
ザドス王国において、一般の勤務形態を取る第一から第五騎士団は、
午前中に王城の警備担当や、要人の警護担当がある者以外は集団での戦闘訓練を行い、
午後からは、同じく警備や警護担当の者以外は自由行動とされているが、
そこはエリート職である騎士団員なので、自由行動の時間には用事がある者以外の多くは、
訓練場にて仲間と共に自己研鑚をしたり、
仲間と森や草原などに行って魔獣を狩り、レベリングや素材を売って小遣い稼ぎなどをしていた。
それに対して、ミリアンプ・ミリボルタ両王女の直属である第五騎士団は、
少数精鋭という背景もあって王城の警備は免除されて居り、
警護任務も王女らのみの専属とされていたので自由行動とされる時間が多いのである、
ロックとウィルも最初の内は、他の騎士団員の様に自主訓練や魔獣狩りに参加していたのだが、
2人の能力が高過ぎたのが災いし、
新人騎士であるロックに、数合も打ち合えずに秒殺でノックアウトされるという、
みっとも無い姿を、他の者らに目撃されるのを嫌った騎士団員からは、
時期に自主訓練で相手にされなくなって、
それならと参加した魔獣狩りでは、高過ぎるロックとウィルの探知能力と戦闘力の所為で、
自分達の取り分が無くなってしまうから、
頼むから2人は参加しないでくれと泣きを入れられたので、
そちらへの参加も見合わせる結果となったのである、
元々、王都の近辺に生息する魔獣程度では2人のレベルが上がる事は無いし、
ロックのアイテムボックスの中にある蓄えの方も、
現金を始めとして、魔獣の素材、鉱物や宝石の数々など、
贅沢な人生を何十回もお互いが送れる程持っているので、
付き合いでもなければ参加する必要も無いのであった。
「あ~あ、王都の見物も一通り終えちまったしな・・・」
「そうっすよね、何か面白い事でも無いっすかね・・・」
「あら、あなた達、だいぶ暇そうにしているみたいね」
他の騎士団員らが汗を流す訓練場の方を何となく眺めていたロックとウィルが、
突然、後ろから掛けられた声の方へと振り返ると、そこには・・・




