ハバラ村の肉事情
「いや~助かりました。
これで、暫くの間は、
肉料理の食材には困らないで済みますよ」
『アンラク食堂』の店主アンラックは、
魔導冷凍庫の中に積み上げられた
シモフーリボアやホロホロ鳥、
モミジディアなどの肉塊を見上げて言った。
「いえいえ、こちらも肉を、
相場よりも割高で買い上げて頂いたので、
旅費には困らないで済みます。」
実際には、資金的には大分、
余裕があるロックであったが、
アンラックに気を使わせない様に、そう言ったのだ。
「相場より高いのは当然ですよ、
これ程の良質な肉は、
王都の一流肉店にでも行かなきゃ、
普通は入手出来ませんからね」
「そうなんですか、
美味しいとは思っていましたが、
いつも食べていたので気付きませんでした。」
「ハハハ、それは幸運ですな、
これ程の肉が日常的に手に入るとは、
羨ましい限りの事です。」
「何でしたら、
3か月に1回程、俺が肉を届けましょうか?」
ロックは、気配を察知する能力を鍛える為に、
定期的に狩りに出掛けるので、
アイテムボックスの中には、肉の在庫がダブつき気味の為、
その消費先が見つかったとばかりに提案した。
「ええっ!?
それは、とても助かりますけど、
お手数では無いのですか?」
「ええ、実は先程話した
凄腕の猟師という人は、
俺の狩りの師匠なんですけど、
一通りの技術を教わりましたので、
その技術が錆び付かない様に、
俺も定期的に狩りをしているんですよ、
だから、肉の在庫が余り気味になると思いますので、
買い上げて頂ければ、俺も助かります。」
「そういう事でしたら、
こちらとしましても、
是非、お願いしたいですな、
でも、ロックさんは先程のお話だと、
これからヒデブの街へ向かうんですよね、
この村から、ヒデブの街となると相当な距離となりますが、
大丈夫なんですか?」
「ええ、俺は子供の頃から、
冒険者に成る為の走り込みを続けてますから、
このぐらいの距離なら、問題にもなりませんよ」
「ほぉ、冒険者に成る為には、
足が速くなければ、ならないのですか?」
「足が速いに越した事はありませんが、
この場合は、魔獣などと長い時間戦闘を続けられる様に、
スタミナを付ける為ですね」
「ああ、そういう事ですか、
確かに私も、大型の魔獣は倒すのには、
時間が掛かると聞いた事がありますな」
「ええ、魔獣は大型になる程タフになりますから、
冒険者にはスタミナが求められるんですよ」
ロックの岩球投擲なら、
結構な大きさの魔獣でも、一撃必殺であったが、
一般的な冒険者の場合は、
討伐までの時間が掛かるのに、
間違いは無い
「分かりました。
それでは、3か月毎に、
今回ぐらいの量の肉を、お願い出来ますか?」
「ええ、俺の方は構わないんですけど、
この村の猟師さんから、
買う分の量を減らさなくても良いんですか?」
「その辺は大丈夫なんですよ、
元々(もともと)、需要に対する供給が追い付いていなかったので、
食堂をやってるウチの為に、
他の家の連中に我慢して貰っている状態だったので・・・」
「そうなんですか、
では、元々の猟師さんも売り先には困らないし、
他の家の方達も、お肉が手に入る様になるから、
問題ありませんね」
「ええ、ウチの食堂の為に、
みんなには、食べたい肉を我慢して貰ってたんで、
私も気が休まります。」
「それは、良かったです。」




