帰還(きかん)
ホワタ村の異変を感じ取ったロック、ウィル、ハニタロウの3名は、
慌てる余り、その手にダンジョンコアや、魔王の角を持ったまま、
村へと向かい走り出した。
「むっ、これはいかん!
この村が目に入ったのか、
こちらへと近づいて来る何かの速度が上がったぞ!」
「どうやら、その様だね、
皆、敵襲に備えて迎撃の態勢を整えるんだよ!」
「「「「「おう!」」」」」
村長やアンジェラの号令で、
村の者達が、あらかじめ決められていた其々の持ち場へと走った。
一方、ホワタ村へと向かっているロック達も、
村人たちの、その慌ただしい動きを感じ取っていた。
「何か村の皆の動きを見ると、
魔獣なんかを迎え撃つ準備をしている様に見えるんだが、
俺の気配察知には何も引っ掛からないんだよな、
ウィル達は何か感じるか?」
「自分は感じないっすね」
「僕も感じないハニ」
「すると、何処からか、
これから、村に何らかの敵が現れるといった情報が、
齎されたのかもしれないな、
よし!俺達も敵が現れる前に村に着くよう急ぐとしよう!」
「了解っす!」
「分かったハニ!」
村へと急いで駆け付けたロック達は、
保安の為に夜間は閉じられている、村に入る門を開けて貰おうと、
防護壁の上に居る者へ声を掛ける為に立ち止まった。
「むっ、気配が村の手前で止まった様だな」
「ああ、もしそれが、こちらの様子を窺う為だとしたら、
敵は、それなりの知性を持っていると言う事だね」
「しかし、防護壁の上からじゃ篝火の光が届かなくて、
夜目の利かない私ではハッキリとは見えないのだが、
それ程、大きな敵では無いんじゃないのか?」
「ああ、確かに大きさは大した事が無いが3体ほど居るね、
でも問題は、ここまで近付いたんで分かったんだが、
その3体共が、強力な『闇の魔素』を、
その身に纏ってるって事だね」
「何、『闇の魔素』だと!?
すると、あの大きさで、強力な『闇の魔素』の魔力を持つというならば、
やはり敵は上位の魔族という事なのか・・・」
「ああ、魔獣だとしたら魔力量に乗じて体も巨大な筈だからね、
そう考えた方が良いだろうね」
「くそ~、私の息子たちが誰も、
この村に居ない時に魔族の襲撃を受けるとはツイて無いな、
ロック達が戻って来るか、後続の冒険者たちが来るまで、
何とか今居る、このメンバーで持ちこたえるしか無いか・・・」
「そうだね、幸いな事に、
この村まで歩いて来たところを見ると、飛行する能力は無い様だから、
この頑丈な防護壁を利用して戦いを引き延ばすしか無いだろうね」
ホワタ村をグルリと囲った防護壁の上で、
悲壮な表情を浮かべたロックの父親で村長のマックと、
アンジェラが防衛線の覚悟を固めた時、
壁の外側から声が掛けられた。
「あの~、俺ロックなんだけど、
誰か村の門を開けてくれないかな~」
「ロックだって?」
「ロックだと?」




