枯尾花(かれおばな)
地上へと戻る為に、地下20階層にあるボス部屋を出て、
暫く歩いたところでロックが、ウィルとハニタロウに声を掛けた。
「そう言えば、来る時にあったトラップとか魔獣に遭わないな」
「そう言われると、そうっすね」
「ダンジョンコアを祭壇から外したからだハニ、
あれらのトラップや魔獣は、ダンジョンコアが『闇の魔素』を使って、
造り出していたものだから消えたんだハニ」
「へ~、魔素を使って実体化させるなんて面白そうなシステムだよな、
普通の魔素でも造れる様に成れば『創造魔法』とか出来そうだよな」
「それは何か凄そうっすね」
「それと似た様な魔法で『言葉魔法』とか言う魔法を創った
大賢者と呼ばれる者が居たと聞いた事があるハニ」
「へ~、そんな凄い人が居たんだな」
「自分は初耳っす。」
「その人の弟子は、もっと凄いとかいう話だハニけど、
本当に実在するのかは眉唾物だハニ」
「そんな能力があったら王様とかに成れそうだもんな」
「同感っす!」
「勇者とか英雄にも成れそうだハニ」
そんな事を話しながらダンジョンを戻って行くロック達であったが、
来る時とは違い、何の障害も無くスイスイと進んだ所為で、
往路では7時間程掛かった道程が、
復路では、上り坂にも関わらず2時間程でダンジョンの入り口まで戻る事が出来た。
「すっかり、日も暮れちまったな・・・どうする?
ここで夜明かしをして、明日の朝になったらホワタ村に戻るとするか?」
「自分らは皆、夜目が利くんだし、
とっとと村に戻った方が良いんじゃ無いっすか?」
「みんな心配してると思うハニから、
僕も、このまま戻った方が良いと思うハニ」
「そうか、ウィルとハニタロウがそう言うなら、
大して疲れてもいない事だし帰るとするか・・・」
「了解っす!」
「凱旋だハニ!」
「うん? 大きな魔力を持った何かが、こっちに向かってくるな・・・」
ホワタ村の者らと共に、村をグルッと囲んでいる防護壁の上で、
夜の警戒に当たっていたアンジェラが呟いた。
「どうかしたんですか?アンジェラさん」
アンジェラと共に、防護壁の上で警戒に当たっていた村の若者が問い掛ける
「急いで村長達を呼んで来てくれないか?
もし敵だとすると厄介そうな何かが村に向かってくるって伝えて欲しい」
「は、はい!分かりました!
急いで皆を呼んで来ます!」
若者は、アンジェラにそう返事を返すと、
防護壁から下りる階段を、転がり落ちる様にしながら駆け下りて行った。
アンジェラは、そんな若者の姿を少し笑みを浮かべながら見送ると、
再び表情を引き締めて、夜の帳につつまれた闇の先より感じる、
強大な魔力が近づいて来る方向を見ながら、
「こりゃ不味いね・・・
まだ私は遭った事は無いけど、
これが魔獣だとしたら間違い無くS級はあるだろうね・・・」
「どうしたんっすか?ロック先輩、
突然、アイテムボックスからダンジョンコアなんか取り出して」
「僕も、魔王の角を見てみたいハニ!」
「うん?もし、ダンジョン攻略者の俺達が貰えるなら、
何かに使えないかと思ってな・・・
ほれハニタロウ、これが魔王の角だぞ、もう一本あるからウィルも見てみるか?」
ロックは、ダンジョンコアを小脇に抱えながら、
アイテムボックスから取り出した魔王の角を、ハニタロウとウィルに手渡した。
「流石に魔王の角だけあって、角だけでも凄い魔力を持ってるっすね」
「だから、とても貴重な素材になるんだハニ」
「持ち帰って見せたら皆、吃驚するだろうな」




