形ある物は・・・
「それでは皆さん、失礼しますね」
チョウナーンが祭壇の上の台座から、
魔王の卵を慎重に下ろしながらロックらに別れを告げる
「ええ多分、もうお会いする機会も無いと思いますけど、
チョウナーンさんも、どうぞお元気で、
弟さん達にも宜しく伝えて下さいね」
「失礼しやぁ~っす!」
「もう、ここへは戻ってくるんじゃ無いハニ」
「はい、弟たちにも、ちゃんと伝え・・・ハ、ハ、ハクション!」
「「「あ・・・」」」
ロック達の目の前で、チョウナーンがクシャミをした拍子に、
しっかりと掴んでいた
その両手から魔王の卵が、石造りの床へと滑り落ちて、
グシャリという音を発てて潰れてしまったのであった。
「あの~、ソレって大丈夫なんですか?
何か台湾のコンビニで売ってる、ヒヨコに成り掛けの卵で作った
ゆで卵みたいになってますけど・・・」
「映像化したら間違い無くモザイクが掛かるレベルのグロテスクさっすね」
「潰れた魔王の卵から出た『闇の魔素』が、
またダンジョンコアへと戻ったハニ」
「グ」
「「「グ?」」」
「グワハハハハッ! 流石は、この階層まで辿り着いた強者共よ、
まさか、魔王様の御卵まで破壊せしめるとはな!」
「突然、何言ってるんですか? チョウナーンさん」
「余りのショックで気が触れたんじゃ無いんですかね?」
「多分、僕達に責任を押し付けて逃げる心積もりだハニ」
「口惜しいが我の力では到底の事、
その方らに太刀打ち出来ないゆえ、
然らば魔王様の御卵の最後の御姿を皆へと伝えるが、
某の務め故、これにて御免!」
チョウナーンは時代掛かった口調でロック達にそう告げると、
謎空間へと飛び込んで消え去ってしまった。
「あっ!? コラ待て!」
「あ~、逃げられちゃったっすね」
「見事なまでの逃げ足の速さだったハニ」
「くそ~、どうするかなコレ」
ロックの視線の先には、床の上にグロテスクな姿を晒している、
魔王の卵の成れの果てがある
「ダンジョンが消えれば一緒に消滅するんじゃないっすか?」
「上級魔族のツノは素材として高く取引されてるハニから、
魔王のツノは、もっと高く売れると思うハニ」
「へ~、そうなのか、
そんじゃ、ハニタロウの言う通りにツノだけでも回収して行くかな」
ロックは、そう言うと、なるべくグロテスクな部分を見ない様にしながら、
魔王のツノを回収してアイテムボックスへと収納した。
「何か、ダンジョンコアが最初より輝いてる気がしないっすか?」
「魔王の卵の『闇の魔素』を全部吸収したハニから、
力が増したんだハニ」
「そんじゃ、ダンジョンが活性化しない内に、
こっちも回収しちゃった方が良いな」
ロックは、祭壇の上の台座からダンジョンコアを持ち上げると、
同じくアイテムボックスへと収納した。




