闇の魔素
「皆さん、暫しのお待ちを・・・」
魔族のチョウナーンは、ロック達にそう告げると、
祭壇の上に乗った魔王の卵を挟み込む様にして、
自らの両掌を翳した。
「あれで、魔王の卵を動かせるか調べてるのかな?」
「多分、そうっすね」
「でも、卵に向かって『チョウナーンは使える男』って何度も呟いてるハニ」
「睡眠学習的な効果が得られるとか考えてるのかな?」
「外国語とかの学習法で、あんなのがあるっすよね」
「効果の程は定かでは無いハニ」
「ふぅ・・・こんなもんで大丈夫かな?
皆さん、お待たせいたしました。
どうやら魔王様の御卵を動かしても大丈夫そうなので、
私は魔族の島へと戻ろうと思います。」
「さっき、ダンジョンコアから卵に吸い込まれた黒い霞が、
魔王の力の源なんですか?」
「はい、元々は皆さんが魔法を使う時に消費する魔素と同じものなんですけど、
魔王様は、その中でも黒魔法や暗黒魔導で消費される『闇の魔素』を、
濃縮する能力に特化されて居られるのですよ」
「すると、さっきの黒い霞が濃縮された『闇の魔素』って訳なんですね」
「あの霞が、そんなに凄いものとは思わなかったっす。」
「『闇の魔素』を感じ取れるのは、黒魔法使いか、暗黒魔導士だけハニ」
「はい、私の様な普通の魔族が、
あの濃度まで『闇の魔素』を凝縮するには300年は掛かるでしょうな」
「お~、伊達に魔王って呼ばれている訳じゃ無いんだな」
「成人した魔王は、水・火・風・土の妖精王様方が力を合わせても、
封印するのが、やっとだって聞いた事があるっすね」
「実際には、妖精王様同士で馬が合わない方々が居るから協力するのは無理ハニ」
「それでは皆さん、私は、この辺で失礼させて頂きますね、
色々と御協力を頂きまして、ありがとう御座いました。」
チョウナーンが、何も無い空間に、
魔族の島へと通ずる謎通路を繋げながら、
ロック達に、そう言った。
「ええ、チョウナーンさん、
こちらこそダンジョンコアを頂きまして、ありがとう御座いました。
魔族の島へ帰ったら『魔王四天王』の連中に、
余り人に迷惑を掛ける様な事はするなと注意して置いて下さいね。」
「はい、末の弟たちには厳重に注意をして置きます。」
「『魔王四天王』って、弟の四つ子なのかよ!?」
「そんじゃ、チョウナーンさん達が派遣されたのだって自業自得っすよね、
自分は、同情して損したっす。」
「全く持って監督不行届きだハニ」




