優勝賞品は・・・
「お客さん、こちらです!」
宿の犬耳娘に案内されて、
隣の食堂へと向かったロックは、
店の入り口横に掛かっている、
店名が書かれた看板を見た。
『アンラク食堂』
(ほう、こっちは、そう来たか・・・)
犬耳娘は、食堂の入り口のドアを開けると、
奥の厨房へとロックを案内した。
「お父さん、お父さん。」
「おお、ヘブンか、どうしたんだ?」
どうやら、犬耳娘の名前はヘブンと言うらしい・・・
「あのね、宿の方に泊まりに来られた
お客さんが、アイテムボックスに入っている、
シモフーリボアのお肉を譲って下さるって、
仰って下さったの」
「おおっ!そりゃ助かるなぁ」
「お客さん、こちらです。」
ヘブンに呼ばれたロックが、
厨房へと入って来た。
「今晩は、俺はロックって言います。
冒険者に成る為に、ヒデブの街へと向かう途中で、
偶々(たまたま)、こちらの村を訪れました。」
「これはこれは、ご丁寧な、
ご挨拶を、ありがとう御座います。
私は、この子の父親で、
この食堂の店主をして居りますアンラックと申します。
この度は、シモフーリボアのお肉をお譲り頂けるとの事で、
とても、助かります。
しかし、ロックさんと申されましたな、
その、お年でアイテムボックス持ちとは大したものですな」
(なる程、アンラックさんの店だから、
『アンラク食堂』なのか・・・)
「ありがとう御座います。
でも、他の人に知られるとトラブルの元ですので、
アイテムボックスの事は秘密でお願いしたいのですが・・・」
「ああ、確かに、そうかも知れませんな、
分かりました。
この事は、他には漏らさない様に気を付けます。
ヘブンも良いな?」
「うん、分かった。」
「ありがとう御座います。
それで、お肉は何処に出せば良いですか?」
「ああ、あちらにお願い出来ますか」
食堂の店主アンラックは、
厨房の奥にある、大きな作業テーブルを指し示した。
「分かりました。」
ロックが、シモフーリボアの肉が出て来る様に、
思い浮かべると、
作業テーブルの上に、大きな肉の塊が現われる。
「おおっ!こりゃ良質の肉ですな!」
ロックの、アイテムボックス補正が効いてるので、
只の肉が、最高級肉へと変化しているのだ。
「ええ、俺の村に居る猟師さんは、
元A級冒険者なんで、良い肉を仕入れられるんですよ」
ロックは、ホワタ村の猟師ジョセフの功績とする事で、
肉質の良さを誤魔化す事とした。
「それは、羨ましい限りですな、
ウチの村の猟師と来たら、
獲物を仕留めて来る日がマチマチだから、
その日のメニューを考えるのにも大変な苦労をしてますよ」
「そりゃ大変ですね、
俺のアイテムボックスには、
まだ沢山の肉が入ってるから、
保存の手段があったら、お譲りする事が出来るんですけどね」
「まだ、お持ちなのですか!?」
「えっ?
ええ、まだ結構な量が入っていますね」
「是非、お譲り下さい!」
「それは構わないんですけど、
保存の手段って何かあるんですか?」
「はい、ウチの店には、
魔導冷凍庫が、あるので大丈夫です。」
(へえ、この世界って冷凍庫が有るんだ・・・)
「便利な魔導具をお持ちなんですね」
「ええ、食材の長期保存に重宝して居りますな、
最近は、安価な魔導具が増えてくれたお蔭で、
ウチみたいな、小さな食堂でも買えるから助かりますね」
「何で安くなったんですか?」
「ああ、それは、
マッスル王国の王様にして、勇者で在られるライ様と、
コウガ王国の王様にして、英雄で在られるサスケ様のお蔭ですよ、
ライ様が雷魔法が付与された魔石を量産されて、
それを組み込んだ、便利な魔導具をサスケ様が量産されて、
各国へと輸出されているので、
安くて便利な魔導具が手に入るんです。」
「へえ、凄い人達なんですね」
(ライ様は分からないけど、
サスケ様って人は、日本からの召喚者かもな・・・)
「そうですとも!
特にライ様は、
我が国の王イカヅチ・トールハンマー・ザドス王様の、
御父上ですからね」
(そうすると、ミーア様とミール様のお爺ちゃんって事か)
「そうだったんですか、
それは知りませんでした。」
「まあ、若い方はご存じでは無いかも知れませんな、
我が国のイカヅチ王様は、
ライ様に嫁がれた
ザドス王国の王女エルザ様と、
ライ様との間に生まれた子供なのですよ」
「なる程、王女様の息子だから、
王位を継いだって訳ですね」
「まあ、エルザ様のご子息という事が大きいのは確かですが、
それだけでは、このザドス王国の王とは成れませんよ、
何しろ、我が国の王は強さを求められますからな、
その点でも、イカヅチ王様はエルザ様譲りの剣技と、
ライ王様譲りの雷魔法で、
この国で行われた『天上天下一武闘会』にて優勝されて、
その強さを知らしめたのですよ!」
「それは、とても強そうですね」




