一子相伝(いっしそうでん)
「そんじゃ開けるぞ」
「了解っす!」
「さっさと終わらせるハニ」
ロックは、ウィルとハニタロウからの返事を受けると、
いよいよ最終階層と思われる地下20階の部屋の扉を開いた。
「部屋の造りは同じだが、
奥に他の階層への扉がある代わりに、何か祭壇っぽいもんがあるな」
「やっぱり部屋の中央には主が居るっすね」
「あの、祭壇の一番上に乗ってるのは、
多分、ダンジョンコアと魔王の卵だハニ」
「グワハハハハッ!良く来たな「あっ、貴方はチョウナーンさんですよね?
弟さん達から大体の事情はお聞きしてますんで、小芝居は結構ですよ、
ちなみに俺はダンジョンの攻略に来た冒険者のロックで、
こいつらは仲間のウィルとハニタロウです。」
あっ、そうなんですか? いや~それは助かりました。
何しろ、私は兄弟の中でも最弱なものですから、
もし本当に戦闘にでもなったら、
どうしようかと内心ヒヤヒヤ物でしたよ、ハハハ・・・」
「そうなんですか? 上の階層にいらした御兄弟より体が大きいから、
俺としたら、チョウナーンさんが一番強そうに見えますけどね」
「自分も同感っす!」
「見た感じ3メートル近くは身長がありそうだハニ!」
「ハハハ、確かに体の大きさでは私が兄弟の中で一番大きいですが、
私達が今回、この仕事に選ばれましたのには、ちゃんとした理由がありまして、
それは、我々兄弟が、我がキョウダーイ家に代々伝わって居ります
一子相伝の暗殺拳『ニコニコ・キョウダーイ拳』の使い手だからなんですよ、
しかし、私は兄弟の中で一番武術の素質がありませんでして、
兄弟の中では最弱というわけです。」
「暗殺拳にあるまじきネーミングですね・・・ってか、
兄弟全員が使えるのに一子相伝ってのは、おかしくないですか?」
「中華料理屋みたいな名前の暗殺拳っすね」
「四子相伝かハニ?」
「そう言われれば、そうですね・・・分かりました!
では、八子相伝の暗殺拳と言い換えましょう!」
「まだあと4人も兄弟が居るんかい!」
「ハチナーンちゃんは、まだ子供じゃないんっすかね?」
「長寿命で子供が少ない魔族には珍しいハニ」
「ええ、ヨンナーンの下に兄弟でも見分けが付かないほど、
そっくりな外見をしました四つ子が居りまして、
合計8人兄弟ですね」
「へ~、兄弟でも見分けが付かないってのは凄いですね」
「学校の先生とか大変そうっすね」
「母親だけは分かるパターンっぽいハニ」
「はい、弟らは皆元気で赤ん坊の頃からバラバラに動くものですから、
四つ子だって判明したのも、つい最近なんですよ」
「それはウソだ!」
「弟たちの戦いは凄いですよ、
一人を犠牲にして『それは残像だ!』が出来ますから」
「それ全然、残像じゃ無いだろ!
一人ヤラれちゃってるじゃん!」
「その日の『残像係』はクジ引きで決めてる様です。」
「ホントに残像が出せる努力をしろ!」




