苦痛耐性
「それでは、皆さんが先の階層へと御出発されましたら、
私は魔族の島へと戻りますので、これにて失礼をば致します。」
「そう言えば、ヨンナーンさん達って、
どうやって魔族の島と行き来してるんですか?」
「翼で飛ぶんじゃないんっすか?」
「魔導具だと思うハニ」
「はい、ハニタロウさんが仰る様に、
我々魔族は離れた場所へと転移する魔導具を使用していますね」
「そんな便利な魔導具があるんだ
全然、聞いた事が無かったな」
「そうっすね」
「リスクがあるから魔族しか使えないハニ」
「はい、私共が使っている魔導具は黒魔法への適性が必要な上、
転移する際に強烈な痛みを伴いますので、
魔族の様な頑丈な肉体と精神力が無いと、気が触れてしまうのですよ」
「怖っ! よく、そんな物を使う気になりますね、
便利さと引き換えるにはリスクが高過ぎますよ」
「同感っす!」
「魔族は苦痛に耐えるのもカッコイイと評価されるハニ」
「はい、最初は非常に耐え難いものがありますが、
次第に、それが快感へと変わって行くんですよ」
「変態だ! オマワリさん、ここに変態がいますよ!」
「理解したくは無いっすね」
「魔族には良く居るタイプだハニ」
「それでは皆さん、他の階層の主たちに宜しくお伝え下さいね」
「え、ええ、それでは失礼します。」
「しゃ~っす!」
「もう会う事は無いと思うけど、ご機嫌ようだハニ!」
ロックは、他の階層の主に『宜しく伝えてくれ』というヨンナーンが、
ニヤリと笑ったのが気に掛かったものの、
そのまま別れを告げて、下層へと向かう扉を開けて潜った。
地下6階層以降もロック達は、
ゆる~い魔獣や、魔獣っぽいものを倒しながら進んで、
次の主が居ると言う地下10階層の豪華な造りの扉へと辿り着いた。
「そんじゃ、扉を開けるぞ」
「了解っす!」
「分かったハニ!」
ロックが、凝った彫刻が施されたドアノブを捻って、
カチャッ!とドアを開いて皆と部屋の中へと入ると、
やはり、部屋の中央にヨンナーンと良く似た雰囲気を持った
魔族が待ち構えていた。
「グワッハハハハッ!
良く来たな勇気ある者た「あっ、上の階でヨンナーンさんから事情は聞いて来たんで、
変な小芝居は必要ありませんよ」あっ、そうなんですか、
いや~、それはどうも助かりました。
ヨンナーンのヤツから、この本の通りに喋れば上手く行くと聞いていたんですが、
どうも、今一つ納得が行って無かったんで良かったです。」
魔族はヨンナーンが持っていた物と同じハウツー本を持ちながら、
ロックらに、そう告げた。
「その本を当てにしなくて正解ですね」
「その本の通りに会話を進めると争い毎になるっす」
「魔族の島へ戻ったら禁書扱いにするのを、お薦めするハニ」




