騒動の真実
「ええ今、ハニタロウさんが仰った通りに、
遠い昔、勇者とその仲間たちに攻め込まれまして、
皆ちりじりに逃げ去ったのですが、
ほとぼりが冷めたのを見計らいまして、島へと戻ったんですよ」
「へ~、そうなんだ、
それで、ある程度の戦力が回復したから、
再び大陸に攻め込もうって事になった訳か・・・」
「敵に取って不足無しっすね!」
「返り討ちにするハニ!」
「ち、違うんですよ!
過去の経験則から魔族にも、
宥和政策を持ちかけるべきだという声が増えてまして、
その内に親善大使でも派遣しようかと話し合っていたところだったんです。」
「それが、何でダンジョンを造るなんて事になってんですか?」
「全く逆の事をやってるっすよね」
「逆効果も良いとこだハニ」
「実は今回の事は、次期魔王様の側近となるべく育てられました
『魔王四天王』の連中が勝手に引き起こしたものでありまして・・・」
「『魔王四天王』って王の字が2つ入ってて語呂が悪いな」
「『魔王親衛隊』とかの方がカッコイイっす」
「ウィルに一票だハニ」
「まあ名前は、この際何でも良いのですが、
連中は恐れ多くも、まだ幼き魔王様の御卵を持ち出して、
その御卵に御宿りされた御力を利用してダンジョンを製作したばかりか、
誰も攻め込んで来ないので暇だという理由だけで、
魔王様の御卵を最下層のボス部屋へと置いたまま、
魔族の島へと戻ってしまったのです。」
「そりゃ又いい加減な連中ですね、
でも、何で御卵を持って帰らなかったんですか?」
「そうっすね」
「うっかり忘れたハニ?」
「それが、まだ魔王様の御卵が幼いというのに、
ダンジョンなどを作製してしまいましたので、
御卵の御力が、ある程度お戻りになられるか、
ダンジョンが攻略されるかせねば、お連れ帰る事が出来ないんですよ」
「ダンジョン攻略でも良いんですか?」
「ダンジョンを攻略されても、御卵が壊れないんっすか?」
「御卵とは別にダンジョン・コアがあるって事ハニ」
「はい、ハニタロウさんが仰る通りに、
御卵とは別にコアがありますので、
そちらを破壊して頂ければダンジョンがリセットされまして、
魔王様の御卵の御力も、元の通りとは行きませんが、
移動させても大丈夫な程度には回復されます。」
「ちなみに、このまま自然回復を待つとしたら、
どの位の時間が必要なんですか?」
「そうっすね、危険が無いと分かったなら、
自分らも無理にダンジョンを攻略する必要が無くなるっすもんね」
「見て来た感じ、お宝も期待出来ないハニ」
「そうですね・・・
今、仰った様に碌な宝も無いダンジョンを、
今後、攻略に訪れる者が現れずに生命力を吸収出来ないとなると、
ざっと数百年から数千年掛かるかと思われます。
ですので、私共と致しましてもロックさん達には、
是非、このダンジョンを御攻略して頂きたいのですよ」
「ふ~ん、そうなんですか・・・
それってやっぱ、ヨンナーンさん達が自分らで攻略するのは駄目なんでよね?」
「マッチポンプっすね」
「普通に考えればダメだハニね」
「駄目って訳でも無いのですが、
我々が自ら、魔王様の御卵が御宿りになられた
ダンジョンを攻略したとなりますと、
魔王様を崇拝している連中からの突き上げが非常に厳しくなりますので、
出来ましたら、我々の善戦も空しく、
最終的には攻略されてしまったという体でお願いしたいのです。」
「体って言うな!」
「やる気が失せたっすね」
「茶番も良いとこだハニ」




