ズバリ昇天(しょうてん)シリーズ
「これは、ご丁寧にドウモドウモ・・・じゃないっ!
え~と、え~と・・・少し待つのだ!」
魔族のヨンナーンは部屋の中央にある卓袱台の場所まで戻ると、
先程まで熱心に読んでいた本をペラペラと捲り、
「ふむふむ・・・なる程な」などと呟いた後に本をパタリと閉じて、
卓袱台やカーペットなどと共にアイテムボックスらしき謎空間へと収納してから、
ロック達の方へクルリと振り返った。
「待たせたな勇気ある者達よ!
良くぞ屈強なるダンジョンの魔獣らを排し、
この部屋まで辿り着いたな!」
「いや、割と楽勝でしたよ」
「ぬるゲーも良いとこっす」
「手応えが無かったハニ」
「むっ、そ、そうであったか?
だ、だが、ここから先は、そうは行かんぞ!
これより先に進むには、このヨンナーン様を倒さねばならぬからな!
ど~れ、この部屋まで無事に辿り着いた褒美に、
まずは、そなた等から先に攻撃する事を許してやろうではないか、
掛かって来るが良い!」
「そんじゃ遠慮無く『ロックバレット!』」 「グハッ!」
「『ウォーターカッター』っす!」 「グフッ!」
「『アースアロー』だハニ!」 「ヒデブ!」
「う、ううっ・・・ゲホゲホゲホッ・・・
い、今、何かしたのか? 攻撃が軽すぎて全く気付かなかったぞ!」
「あの~、一応聞きますけど痛く無いんですか?」
「血がドクドク流れてるっす」
「腕が変な方向に曲がってるハニ」
「痛く無い筈が、無いじゃないですか!
何、ホントに思いっきり攻撃してくれちゃったりしちゃったりしてくれてるんですか!」
「いや、ヨンナーンさんが自分で攻撃して来いって言ったんだし、
なぁ?」
「そうっすよね」
「僕も確かに聞いたハニ」
「私は、この本の第3部『ダンジョン編』の、
第3項『小ボス部屋でのケース』に基づいて発言しただけなんですよ!」
ヨンナーンは謎空間から、先程収納したらしき本を取り出すと、
表紙をロック達の方へと向けた。
その本の表紙には『超人気!なれる(かも)シリーズ
魔族としての自分に自信が持てないアナタ必見!
他種族とのケース別での会話 大全集
これを読めばアナタも一人前の魔族になれる!(かも)』と記されている
「そのハウツー本は参考にしない方が良いと思いますよ」
「間違い無く争い事になるっすよね」
「しかも敵に先制攻撃を許すハニ」
「そうなんですか? 私達の暮らす『魔族の島』では、
10年連続でベスト10に入ってるベストセラーなんですけどね」
「ヨンナーンさん達、魔族って島に住んでるんですか?」
「自分は初耳っす!」
「僕は大昔に勇者様御一行に追い出されたって聞いた事があるハニ」




