小ボス部屋にて・・・
「じゃあ扉を開けるけど、心の準備の方は良いか?」
小ボスの部屋と見られる豪華な装飾が施された扉のノブに手を掛けながら、
ロックが、ウィルとハニタロウに尋ねる
「自分は万全っす!」
「僕も大丈夫だハニ!
ロックも罠があるかも知れないから、気を付けるハニ!」
「オッケー! じゃあ開けるぞ」
ロックは扉のノブを、ゆっくりと捻ると、
静かに扉を引いて、少し開いた隙間から部屋の中をソッと覗き込む、
ロックの頭の下には、同じく部屋の中を覗くウィルとハニタロウの頭が並んだ。
「うん? 誰かが部屋の中央辺りで背を向けて座って居るな」
「一見人族に似てるっすけど、頭に角があるから多分魔族っすね」
「そうだハニ、昔見た魔族とソックリだから間違い無いハニ」
その部屋は天井、壁、床を大理石の様な光沢を持った
黒光りする石で造られて居り、
部屋の四隅から等間隔で、古代ギリシャの建築物の様なデザインが施された
直径30センチ程の金色に輝く柱が床から天井へと伸びていた。
壁の所々には魔導具と見られる、
溶ける事無く燃え続けている黒いロウソクが燈された金色の燭台が掛かって居り、
金色の柱が乱反射する光が、部屋の中を妖しく照らし出していた。
「『如何にも』って感じの小ボス部屋だが、
あそこでお茶を飲んでる魔族の存在がソレを台無しにしてるな」
「あの床にカーペットを敷いて、
その上に卓袱台を置くなんて無しっすよね」
「お茶請けにセンベイを食べながら、何か本を読んでるハニ」
魔族は余程読書に集中しているのか、
ロックらの存在に全く気が付かない様子だ。
「良く分からんが、取り敢えず声でも掛けて見るか」
「そうっすね、そうしないと話が進まないっすもんね」
「まずは、コミニュケーションを図って見るハニ」
ロック達は部屋の中へと体を滑り込ませると、
代表してロックが声を掛けて見る事とした。
「あの~、すいません、
ちょっとお話させて頂いても宜しいでしょうか?」
ロックが、こちらに背を向け座る魔族の背中に、そう声を掛けると、
後姿の魔族がビクッとした様に肩を上下させ、
本と、食べかけのセンベイを卓袱台の上に置いてから、
ゆっくりと、こちらに向かって振り返った。
「・・・・・もしかして、ダンジョンへの挑戦者たちか?」
魔族は、じっくりとロック達の顔を順番に見ながら、
そう問い掛けて来た。
「えっ? ええ、一応は、そうなんですけど・・・」
「自分らはダンジョン・アタッカーっす!」
「僕らは最初にして最後の攻略者たちだハニ!」
「お~! それはそれは良くいらっしゃいまし・・・ゲフンゲフン、
良く来たな勇気ある者達よ!
我こそは、この階層を治める主である、
魔族のヨンナーンである!」
「初めましてヨンナーンさん、俺は人族の冒険者のロックです。」
「自分はロック先輩の舎弟で、水妖精のウィルっす!」
「僕はロックの友達で、土妖精のハニタロウだハニ!」




