ハバラ村にて・・・
「おっ、村が見えて来たから、
今夜は、あの村に泊まるとするかな」
街道を走るロックの目に、周囲を申し訳程度の、
木の柵で囲った村が見えて来た。
村の入り口らしき、
柵の切れ目から村の中へと入ると、
一日の仕事を終えた村人たちが、
家路に着いたり、食事処へと向かうのが、
目に入ったので、その内の一人に声を掛けてみる、
「すいません!」
「おう、どうしたボウズ」
男は20代後半ぐらいの年回りで、
ガッチリとした体型の働き盛りと見える、
「俺はロックと言いまして、
冒険者になるために、ヒデブの街へと向かう途中なんですが、
この村で泊まれる場所ってありますか?」
「ヒデブの街までって、手ぶらでか?」
男が不審そうに、ロックを見ているので、
説明する事にした。
「俺は、手荷物程度なら入れられる、
アイテムボックスを持ってるんで、手ぶらで旅が出来るんですよ」
ロックは、アイテムボックスから、
ダミー用に入れてあるカバンを取り出して見せた。
実際には、とんでもない容量のアイテムボックスなのだが、
ここでのポイントは、無用なトラブルを避ける為に、
便利なスキルだけど、それ程大したレベルでは無いと印象付ける事である、
「おお、そうなのか、
その若さでアイテムボックス持ちとは大したもんだな、
俺はドボルって言うんだ宜しくな、
ロックって言ったか?ハバラ村へようこそ良く来たな、
小さな村だけど、街道に面しているから、
ちゃんとした宿屋があるから心配しなくて良いぜ、
ちょうど、宿屋の隣の店に、
一杯飲みながら飯を食いに行く予定だから、
一緒に来いよ」
「ありがとう御座います。ドボルさん。
ご一緒させて頂きます。」
「おう、来い来い」
ロックは、ドボルと一緒に、
ハバラ村の宿屋へと向かった。
「ここが、この村で唯一の宿屋『エイミンの宿』だぜ、
女将さんと、娘さんで宿の切り盛りをしてるんだが、
旦那さんが隣で、宿の食堂を兼ねた酒場をやってるから、
後で食べに来いよ」
「何か良く眠れそうな名前の宿ですね・・・
分かりました。
宿の方の手続きを済ませたら、顔を出しますね」
「おう、待ってるぜ」
ロックは、ドボルと別れると、
宿の入り口のドアを開けて中に入った。
「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
入り口のドアを潜ると、
正面にカウンターがあって、
10歳ぐらいに見える、犬獣人の少女が腰掛けていた。
(おお~!ケモ耳少女だ!)
ロックが生まれ育ったホワタ村には人族しか住んでなく、
偶に訪れる行商の獣人は大人ばかりだったので、
子供の獣人を見るのは初めてだったのだ。
「ええ、一人で一泊を、
お願いします。」
「お食事は摂られますか?」
「はい、夕食と、
明日の朝食をお願いします。」
「では、食事代込みで5000ギルとなります。
お湯は桶一杯まではサービスとなって居りますので、
ご入用の際は、お申し付け下さいませ」
「分かりました。
はい、銀貨5枚ね」
「はい、丁度で頂きます。」
ちなみに、貨幣価値だが、
銅貨10ギル
大銅貨100ギル
銀貨1,000ギル
大銀貨10,000ギル
金貨100,000ギル
大金貨1,000,000ギル
白貨10,000,000ギルとなっている、
その上に王貨や国貨などが、あるのだが、
国同士で使われるぐらいで、
一般には出回っていなかった。
「隣の食堂が、この宿の食堂を兼ねていますので、
この部屋番号が書いてある木札を見せれば、
お食事が出来る様になって居ります。」
少女は、ロックに201と書かれた木札を手渡しながら告げると、
カウンターから出て来た。
「では、お部屋までご案内致しますが、
お荷物は馬車の方でしょうか?」
「いえ、俺はアイテムボックス持ちなんで、
手荷物は無いんですよ、
だから、部屋の場所だけ教えて貰えれば大丈夫です。」
「わあ!アイテムボックスを、お持ちだなんて凄いですね!」
「ええ、助かっています。」
「分かりました。
では、お部屋の方へと、ご案内しますね」
「はい、お願いします。」
ロックは、少女に部屋の場所を教えて貰い、
夜寝る時の鍵の掛け方や、
共同トイレの場所を聞いてから、
隣の食堂へと向かう事とした。
「これから、食事に行かれるんですか?」
少女が聞いて来た。
「ええ、こちらの宿に案内してくれた
ドボルさんと待ち合わせていますので、
行って来ます。」
「ああ、ドボルさんが案内して下さったんですね、
それと、夕食なのですが、
今日は、村の猟師さんが獲物を獲れなかったので、
メインは魚料理となりますが、大丈夫でしょうか?」
少女が、申し訳無さそうにロックへと告げる、
中には、肉料理が食べたいと言う客も、
少なくは無いのであろう。
「ええ、魚料理は好きなんで大丈夫なんですけど、
俺の、アイテムボックスの中にシモフーリボアが入っていますから、
お譲りしましょうか?」
ロックは、アイテムボックスの容量がバレるものの、
申し訳無さそうにしている少女が可哀想になったので、
提案してみた。
「ホントですか!?
それは、とても助かります。
食堂は父が切り盛りしていますので、
今、ご案内しますね」
少女は、母親に声を掛けて受付を変わって貰うと、
ロックを案内して、隣の食堂へと向かった。




