兄弟仁義(きょうだいじんぎ)
「あの~、父さんと母さんは、
ショウセツさんから、リック兄ィのパーティーの事を何か聞いたかな?」
「主に獣人がどうとかっすね」
まだ次兄リックを含むパーティーメンバーが、
魔導具の副作用によって獣人の女性しか愛せなくなり、
同時にパーティーの名前が『ケモ耳守り隊』となったのを、
未だに両親に伝えられずにいたロックが探りを入れる
「ああ、地方の村々を中心にして頑張ってるらしいな」
「リック達のパーティーがどうかしたの?」
「い、いや、どうもしないよ!
そ、そうだ!ショウセツさん、その頼まれた『最果ての原野』でしか、
採れない薬草ってのは、どんな物なんですか?」
「何か特別な物なんっすかね?」
どうやら両親には伝わっていない様なので、
ロックは話題を変える様にショウセツに尋ねる
「拙者がリック殿のパーティーより依頼されたのは、
『ケモケモヨクナリ草』という薬草で、
獣人特有の奇病である『しっぽグルグル病』の特効薬の原料であるな、
何しろリック殿らのパーティーは獣人好「そうなんですか!
そんな薬草があるとはしりませんでした!」
そうであるか、まあ人族には効果が無い薬なので知らなくても当然かも知れんな」
ロックは藪蛇になりそうな気配を感じたので、
大声を出してショウセツの言葉を遮った。
「それで、その薬草というのは手に入れる事が出来たのか?」
ロックが話の流れを変えたがっていると感じたアンジェラが、
ショウセツに尋ねた。
「うむ、無事に調達する事が出来たので、
直ちに特効薬を調合して飛龍便で送ったぞ」
「そうですか、それは良かったですね」
「迅速・丁寧がモットーの飛龍便っすね」
「この村での仕事も終えたので、
明日には王都への帰路に付く予定だ」
「そうなんですか、それはお疲れ様でした。」
「お疲れ~っす!」
その晩、ショウセツの慰労を兼ねた宴が、
ホワタ村の村長を父が務めるロックの家で催され、
宴を終えたロック、ウィル、ハニタロウは兄弟が使っていた大部屋へ、
アンジェラ、カレン、ファニーは客間へと戻っていた。
「そんじゃ反対されるかも知れないけど、
アンジェラさん達に、ダンジョンへは俺達だけで入るって伝えて来るよ」
「了解っす!」
「分かったハニ!
僕達は野球拳でもしながら待ってるハニ!」
「あ、ああ、そんじゃ行って来る」
ロックは、服を着ているウィルは兎も角、
ハニワの様な姿をしたハニタロウが、
どんな風に野球拳をするのか非常に興味があったのであるが、
後ろ髪を引かれる思いでアンジェラらの部屋へと向かった。




