派遣浪人(はけんろうにん)
夜間は魔獣や夜盗対策の為に閉じられる、
防護壁の一部に設けられたホワタ村へと出入りする門も、
まだ開かれたままだったので、
ゴーレム馬車の御者を務めるカレンは、
ゴーレム馬へと命じて村の中へと馬車を曳かせた。
「あ~れ、確かロックと冒険者パーティーを組んでる嬢ちゃん達だよなぁ」
村へと乗り入れて来た馬車に気付いた村人が、
その御者台に座るカレンらに気付いて声を掛けて来る
「はい、前にも村にお邪魔しましたカレンです。
ロック様も馬車の中に乗られていらっしゃいますよ」
「こんにちは~」
「ちぃ~っす!」
「そうかい、そうかい、そんじゃ村長さんとこに使いを出すから、
馬車は、いつもの広場の端にでも停めてくれや」
「はい、分かりました。」
カレンは、村人の指示に従って村の催し物などの際に使われる、
広場へと馬車を向かわせた。
「よおロック! 良く帰って来たな」
「お帰りなさいロック、
アンジェラさん達も、良くいらっしゃいました。」
村の広場で馬車を停めて、ゴーレム馬を土へと返していたロックらに、
村人からの連絡を受けた村長にしてロックの父親のマックと、
母のミリアが声を掛ける
「ただ今! 父さん母さん」
「ちぃ~っす!」
「初めましてハニ!」
「お久し振りです。」
「またお世話になります。」
「こんにちは~!」
「貴殿がロック殿か?
お噂は常々拝聴しているよ」
村長夫婦の後ろを付いて歩いて来ていた人物が、ロックに声を掛けた。
「浪人?」
「総髪の素浪人っぽい出で立ちっすね」
そのロックが見慣れない人物は、
時代劇に出て来る浪人の様な着流しを着て、
腰には大小2本の、日本刀に似た鞘に収まった剣を佩刀していた。
「これは、自らの名乗りも上げずに失礼をば仕った。
拙者は、王都の冒険者ギルドより派遣をされて居りまする、
『ヨイ ショウセツ』と申す者で御座いまする」
「『ヨイ ショウセツ』さんですか?
『ユイ』じゃ無いんですね」
「そうっすね」
「はい、某は当サイトを敬愛して居りまするので、
『ヨイ』なのでありまする」
「サイトとか言うな!」
「自分は良い子っすから、何の事か分からないっす!」
「王都のギルドからの派遣という事は、
やはり今回のダンジョン絡みの案件でいらしたのかな?」
「それが違うのよアンジェラさん、
ヨイさんは別のご用件で、この村を訪れられていらして、
そのご用件を済ます際にダンジョンをご発見になられたの」
ロックの母ミリアが、アンジェラの勘違いを正す発言をした。
「へ~、ヨイさんがダンジョンを発見したのか」
「これで大事になる前に解決出来れば、大発見の金星っすね!」




