サクラ吹雪の~♪
「それと、ヒデブの街の冒険者ギルドで、
戦闘スキルが無いって理由で、冒険者登録を渋られたら、
これを見せる様にしろ」
ジョセフは、ナイフのマークが付いた手袋をポケットから出して、
ロックへと手渡した。
「ジョセフさん、この手袋は?」
「それは、俺たち『アイアン・エッジ』お揃いの手袋なんだよ、
ヒデブの街には、偶に新人教育で行ってたから、
ギルド職員の中に、まだその手袋を憶えているヤツが居る筈だ、
俺が、ロックの腕前を保証すると言っていたと告げれば、
スンナリ受け付けてくれると思うぞ」
「ありがとう御座います。ジョセフさん
この手袋は、お借りする事にしますので、
一人前の冒険者になってから、
お返しに伺う様にします。」
「おう!
その時には、美味い酒を土産に持って来るのを、
忘れるんじゃないぞ」
「はい!
最高級の、お酒をタップリとご馳走しますね」
「そりゃ、今から楽しみだな、
な~に、ロックの実力ならアッと言う間に、
頭角を現すさ」
「ご期待に沿える様に頑張ります!」
ロックは、ジョセフが偶々(たまたま)通り掛かった訳では無く、
態々(わざわざ)、この場所でロックを待って居てくれたのに気付いていたが、
敢えて何も言わずに、ヒデブの街へと向けて出発した。
「ほっほっほっほっ」
ジョギング程度の速さで、
街道をロックが走り抜けて行く、
ロックが暮らして居たホワタ村から、
ヒデブの街までは、およそ300キロ程離れて居り、
休憩を取りながらの馬車旅だと、
1日100キロで3日の行程となるところであった。
ロックは、ジョギング程度の速度ながら、
休む事無く走り続けているので、
馬車と変わらず1日100キロ程を走破していた。
途中、何度か盗賊の目に留まったのだが、
アイテムボックスに荷物を入れてある為に、手ぶらな事と、
まだ冒険者らしい服装をしていないロックが走る姿は、
近くの村に用事で出掛ける一般人にしか見えないので、
盗賊達もスルーしていたのだ。
実際には、アイテムボックスの中に、
商隊も顔負けな量の、魔獣の素材や、
金属のインゴットが入っているのだが、
鑑定スキルなどといった
有効な手段を持ち得ない盗賊達には、
知る由も無かった。
「そろそろ薄暗くなって来たし、
次に村か街が見えたら、
そこで宿泊する事に、でもするかな」
夜目が利く上に、
この速度なら、もう暫くは走り続けられるロックではあったが、
敢えて危険を冒す事は無いと思い、
宿を探す事とした。




