覚醒(かくせい)
「やあ!こんにちは皆さん、
俺の名前はロック、
ザドス王国の片田舎にある、
ホワタ村ってとこに住んで居る、
ワンパク盛り5歳のナイスガイさ!
俺は、今、モーレツに戸惑っている、
それは、何故かと言うと、
俺の村では、男の子も、女の子も満5歳を迎えると、
近くの街にある教会へ行って、
『神の祝福の儀』ってヤツを受けるんだ、
儀式は特別難しいものじゃ無くて、
祭壇に祭られている『神観石』っていう石を、
神父さんが持って来るから、
それに触れるだけ、なんだけどね、
それで、俺も5歳の誕生日を迎えたから、
『神の祝福の儀』を受けに来たという訳なんだけど、
俺が、『神観石』に手を触れた瞬間に、
地球の日本っていう国で生まれ育ったっていう、
前世の記憶が蘇ったんだ!」
「ちょっとロック!
さっきから、何をブツブツと言っているの、
静かにして、ちゃんと神父様のお話を聞きなさい!」
「は~い、ママ。」
「それでは、ロック君を、
ご覧になった神様の、お言葉をお伝えします。」
「「「お願いします。」」」
俺と、パパとママは、神父様にお願いした。
「ロック君が持っているスキルは、
身体能力向上、投擲、アイテムボックス、
適正魔法は土魔法ですな、
向いてる職種としましては、農夫と出て居ります。」
(え~と、これって良いの?悪いの?
アイテムボックスとかって、結構良さそうな気がするんだけど・・・)
「「そうですか・・・」」
両親は、心持ちガッカリ感を醸し出している様だ。
(パパとママの様子から見ると、
どうも、イマイチらしいな・・・)
「ご両親とも、ロック君の向いてる職種が、
冒険者では無かったからとは言え、
気落ちする事は無いですぞ、
これは、あくまで適性を見ているだけなのですから、
鍛え方によっては、立派な冒険者となれるでしょう。」
「しかし、神父様、
俺は、戦闘系のスキルを持たずに大成した冒険者など、
聞いた事がありません。」
「そうですわ、
この人は大剣を、そして私は弓矢のスキルを持っていたからこそ、
ここまで、生き長らえて来られたと言えます。」
「確かに、冒険者として大成するのは難しいかも知れませんが、
この国には、優秀な冒険者が沢山居ります。
その様な方々とパーティーを組む様にすれば、
戦闘スキルが無くとも、冒険者としてやって行けるでしょう。」
「ううっ、俺たちの息子がオブザーバーか・・・」
「でも、農夫よりはザドラーらしいですわ、あなた。」
(ううっ、肩身が狭いぜ・・・)
ザドラーと言うのは、ザドス王国の民らしい人物と言う意味で、
何故、ロックの両親が、こんなに落ち込んでいるかと言えば、
ここザドス王国は現在、他国の人々からは『冒険者の国』と呼ばれていて、
ひと昔前には『傭兵王国』として、その名を馳せていたのであった。
しかし、昨今、国同士の結び付きが強くなり、
ここ数十年は、戦らしい戦も起きなくなったので、
傭兵としての需要が激減してしまったのだ、
このままでは、国家としての存亡が危ぶまれると考えた
ザドス王国の国王イカヅチは、
傭兵王国としてのザドスに終止符を打ち、
新たに、冒険者を育てる国造りを始めたのである、
そして、生まれも育ちもザドス王国である、
ロックの両親は、生粋のザドラー同士で結婚したのであった。
当然、ザドス国民の親たちは、
自分の子供を、立派な冒険者にする事を望み、
また子供たちの多くも、冒険者に憧れを抱いている。
「しかし、何でロックは、
俺の大剣や、お前の弓矢を受け継がなかったんだろうな?」
「そうですわね。」
この世界では、両親が戦闘スキルを持っている場合、
そのどちらかのスキルが、子供へと受け継がれるのが一般的であった。
(もしや、ママが浮気を!?)
「恐らく、隔世遺伝でしょうな、
極稀になんですが、
ご先祖様が持っていたスキルが発現する事があると、
聞いた事があります。」
(何だ、そう言う事か・・・)
俺は、ガッカリ感満載の両親に連れられて、
申し訳ない気持ちのまま、
村への帰途に付いた。