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ギガンテスのスター  作者: シュウ
13/252

お約束

今日も今日とて、

ロックは一人で狩りに出ていた。


最近のロックは、豆粒ほどの大きさの鉄で出来た球を投げて、

ホロホロ鳥や、マッドボアを一発で仕留める事にっていた。


内容的には、わざと自分の気配を察知させて、

魔獣が逃走に移ったのを見計らってから、

ピンポイントで急所を狙う訓練を積んで居たのであった。


ビシッ!頭を打ち抜かれたホロホロ鳥が、

草原にドサッと横たわった。

「ふ~、結構、的確に狙える様になったな。」

ロックは、ホロホロ鳥の死体に近づくと、

アイテムボックスに収納して、素材に解体した。


今日の戦果としては、

午後3時頃にして、ホロホロ鳥5羽と、マッドボア3匹、

そして、偶々(たまたま)現れたゴブリン3匹と、

オーク5匹だった。


「ちょっと早いけど、そろそろ村に帰ろうかな・・・ん?」

ロックの尋常じんじょうじゃない超視力によって、

草原のはるか先にある田舎道に、

盗賊らしき者らに追われる馬車が見えた。


「おおっ!盗賊に追われる豪華ごうかな造りの馬車といえば、

貴族様にコネが出来るという、

異世界では定番のシュチュエーションではないか!」

ロックは、将来、冒険者に成れなかった場合を想定そうていして、

他の職にくのに、何らかの足しになるのではと考えて、

助けに向かう事とした。


毎朝のランニングによってきたえ上げられた健脚けんきゃくは、

全速力で走る馬車と、それを追いける馬にまたがった盗賊たちに、

みるみる追い着いて行く、

馬車の周りに、明らかに盗賊たちが乗っている馬とは違う、

豪華な造りのくらを付けた空馬からうまが走っている事から、

護衛の者たちは何らかの攻撃を加えられて落馬した様だ。


「うおぉぉぉぉぉ・・・ハッ!」

盗賊より先に馬車へ追い付いたロックは、

腕力を使って、馬車の屋根の上に飛び上がった。


「「キャ~!」」

「盗賊が、馬車に取り付いた様です!」

馬車の中から、少女らが上げたらしき悲鳴と、

御者に告げる女性の声が聞こえた。


おどろかせてみません!

僕は、近くのホワタ村に住んで居る、

冒険者の卵でロックという者です!

今から、盗賊たちを倒すので、

このまま、馬車を走らせていて下さい!」

ロックは、馬車の中の人たちと、

御者に向かって大声で告げた。


「盗賊とはいえ、なるべく生け捕りにした方が良いよな、

もしかしたら懸賞けんしょう金とか付いてるかも知れないしね。」

ロックは、アイテムボックスから泥団子を何個か取り出した。


これは、ジョセフから、

おとなしい魔獣を、愛玩あいがん用に生け捕りにするクエストがあると聞き、

魔獣を気絶させる為に作った物だ。


「はっ!はっ!はっ!ほい!」


「うがっ!」

「うおっ!」

「がっ!」

「うわ~!」

ロックが、泥団子をスナップスローでヒョイヒョイとほうると、

盗賊たちの頭にパカン!パカン!と当たって、

次々に落馬して行った。


「これで、最後だ!」


「ひょえ~!」

ロックが最後の泥団子を放ると、

馬車を追い駆けていた盗賊が居なくなった。


「御者さん、

盗賊は、もう居なくなったから、

馬車の速度を落としても良いですよ!」


「えっ!?ホントに?」

ロックの声を聞いて、

馬車の窓から女性が顔を出して、後方を確認した。


「どうやら本当みたいね、

ルシウスさん、馬車を停めてくれるかしら。」

御者はルシウスという名の様だ。


かしこまりました。」

女性の指示にしたがって、

馬車は徐々(じょじょ)に速度を落としてから停車した。


ガチャッ!と、馬車の扉が開くと、

中から、白い騎士らしい服を着込んだ女性が下りて来て、

馬車の周囲を警戒した。


周囲に危険が無いと判断したのか、

女性は、馬車の屋根に立つロックへと目を向けて来た。


「ご助力感謝する、

私はザドス王国で騎士を務めるジャンヌと申す者だ。」


ロックは、馬車の屋根からトン!と地面に降り立つと、

改めて自己紹介をした。

「先程も申しましたが、

近くのホワタ村で、冒険者に成る為の訓練を積んでいる、

ロックと申します。」


「ロック殿か、

冒険者に成る為の訓練と申したが、

ロック殿は、失礼だが何歳なのだ?」

13歳にして170を超える身長と、

立派な体格を持ったロックが、

成人に見えたらしいジャンヌが質問して来た。


「今年、13歳になりました。」


「なんと!まだ13歳なのか!?」


「はい、こんなデカい図体ずうたいをして居りますが、

正真しょうしん正銘しょうめいの13歳です。」


「いやいや、これは失礼した。

今から、その体格ならば、ロック君は将来有望だな。」

13歳と聞いて、ロックの呼び方が、

殿から君へと変わった様だ。


「ありがとう御座います。」


「「「「お~い!」」」」

その時、後方から、

こちらへと声を掛けて来る者たちが現われたので、

ロックは警戒けいかいの視線を送ったのだが、

「ああ、ロック君、

彼らは仲間だから大丈夫だ。」との、

ジャンヌの言葉を聞いて、

その警戒を緩めた。


近付いて来る男たちを改めて見ると、

確かに、色違いだが、ジャンヌの服に似た服を、

皆、着込んでいた。


道端みちばたに転がっていた盗賊たちを、

しばりながら来たんで時間が掛かってしまったが、

姫様たちは、ご無事か?」


「ああ、お二人とも、ご無事だ。」


「それにしても、

この馬車馬なら十分に逃げ切れると踏んでいたんだが、

盗賊どもを倒したのは、彼か?」


男は、ジャンヌのかたわらに立つロックを見て、

そう判断した様だ。


「ええ、このロック君が、

皆、倒したのよ、

驚くなかれ、彼まだ13歳なんだって。」


「「「「13歳!?」」」」


「やっぱり、みんな驚くわよね、

並みの新人騎士より、立派な体格しているものね。」


「ああ、まったくだ。」

「それどころか、相当の使い手と見たぞ。」

「うちに欲しい逸材いつざいだな。」

「団長に進言して、

騎士団にスカウトした方が良いんじゃないか。」


「ありがたい、お話ですが、

僕は騎士団に入る事が出来ないんですよ。」

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