アダ球
「ロック、それで、
そのアダマンタイトは、どうするんだ?
大きな街まで売りに行くなら、
一緒に行ってやるぞ?」
ジョセフが聞いて来る。
「いえ、これはアイテムボックスで保存しておきます。
俺が冒険者になった時に、
武器や防具を作ったり、売って装備品を整えたりしようかと、
思います。」
「おお、そりゃ良いな、
冒険者になって、初めての関門は、
自分の装備を揃える事だからな、
今から、備えて置けば、他の連中を出し抜けるぞ。」
「ええ、只でさえ俺は、戦闘向けのスキルが無いから、
今から準備を整えて置かなきゃならないんですよ。」
「いやいやいや、『はぐれ』とは言えメタルモンキーを、
単独で仕留められる新人冒険者は、お前ぐらいだぞ。」
「でも、まず冒険者になってパーティーになる仲間を探す時に、
周りの人たちは、スキルや魔法を参考にしますよね、
俺の場合は、最悪、最初の内は一人でクエストを熟して、
実力を証明しなきゃならないんで、
初期装備から、なるべく良い物を用意した方が良いと思うんですよね。」
「なる程、ロックなりに良く考えて居るんだな、
確かに、お前が言う様な事も考えられるけど、
どうだ?いっその事、始めの内は、
兄貴たちのパーティーに加えて貰えば良いんじゃねえか?」
「いえ、それだと、
他の人達から見れば、
兄たちに護られているからクエストを熟せてるって、
思われると思うんですよ、
大事なのは、戦闘向けのスキルや魔法は持っていないけど、
俺が、十分な戦力になるって証明する事だと思うんですよね。」
「そう言う事じゃ仕方ないな・・・
分かったよ、それじゃあロックが冒険者と成る為に、
冒険者の始まりの街と言われる、
『ヒデブの街』に向かう時は教えてくれよな、
知り合いが経営している、腕利きの武器・防具屋を教えてやるからよ。」
「はい!その時は、お願いします!」
ロックが、猟人のジョセフより、
狩猟や魔獣の討伐の技術を習い始めてから月日は流れ、
ロックの年齢が13歳となった現在、
ジョセフより、『ロックなら、もう一人でも大丈夫だ。』との、
お墨付きが出た事から、
父マックからの許可を貰えたので、
最近のロックは、一人で狩りに出掛ける様になっていた。
魔獣を討伐する様になってから、
ロックのレベルが急激に上昇する様になり、
それに伴い、
土魔法のレベルが上がった事で、ロックが気付いた事があった。
ロックが地面に両手を付けて唱える、
「『地中探知』・・・おっ!鉄や銅があるみたいだな、
よし、『抽出』『固形化』っと・・・」
すると、ロックの両手に、握りこぶし程の大きさの、
鉄と銅の球が現われた。
ロックに、新たに目覚めた土魔法の能力は、
地中に含まれる金属成分を抽出して、
投擲用の武器と出来るものだった。
普通、土魔法を持って生まれた場合、
農業や土木工事の道へと進む者が多いので、
ロックの様にレベルを高める者は、ほぼ居ないのだ、
居たとしても、他の戦闘スキルを使うのみで、
土魔法を使う事は無いので、
土魔法の有用性に気付く者は皆無であった。
ロックは魔法で造った球の内、
鉄は投擲用にアイテムボックスに収納して置き、
銅や錫や鉛などは、
村の鍛冶屋に売っている、
偶に、極僅かながら出て来る金球や銀球は、
将来に備えてアイテムボックスの中で『融合』させているが、
塵も積もれば山となって、
既に、両方ともバランスボール程の大きさとなっている事に、
ロックは気付いていなかった。
「シッ!」
ロックは、手の中の鉄球を、
大きな石に向かって投げてみる、
バガッ!大きな音を発てて石が砕けた。
「良し!やっぱ質量と重さの関係か、
岩球とはダンチの威力だな、
鉄球なら、メタルモンキーにも、
結構なダメージが通るんじゃないかな?
でも、アダマンタイトの方が硬くて重いから無理か・・・まてよ?」
ロックは、その場にアイテムボックスの肥やしと化していた
アダマンタイトの巨大なインゴットを取り出すと、
両手を当てて「『抽出』『固形化』」と唱えてみた。
すると、ロックの両手にアダマンタイト球が現われた。
「おお~!魔獣から採れた素材でも、
普通に金属として認識されるのか、
こりゃ良いや、必殺用の武器として、
いくつか造ってアイテムボックスに保存して置くか。」
ロックは、数十個のアダマンタイト球を造ると、
アイテムボックスの中へと収納した。




