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ゴートメール  作者: 楠木あいら
さて、最初の手紙についてですが
7/32

スーパーヤギ女子高生

「桧毬、どう思う?」


 隣にいる本人に聞いてみたが、あいにく食事中で書き損じの半紙を幸せそうにほおばっていた。


「聞く必要もないんだけどもな」


 文也はため息をついた。どう考えても、取り壊した以上、手紙は廃棄処分されていると考えた方がいいだろう。


「一番目は諦めて、二番目を探すにも、ヒントは一枚目に書かれているからなあ。ノーヒントで探すとしたら、いつ見つかるのか検討もつかない」


 再びため息を吐いた文也の隣にいる桧毬は満足の息を吐き出した。


「文也のはスパイスが効いたジャンクフードなら、老夫婦の書き損じは、品のある料亭のようだ」

「悪かったな、汚い字で」

「気にするな。桧毬の好みは文也の方だから、喜ぶがよい」

「……」


 答える気になれない文也は足を止めた。


 何かヒントのかけらぐらいはないか、と思ってヒマリが住んでいた家、マンションに向かった。



「来たものの。どうしようもないな。

 ヒマリの飼い主さん、住んでないかな。もし、万が一、解体途中に気づいて保管してくれていた……なんてないか。第一、飼い主さんがいるかどうかも、わからない」



 跡地に建てられたマンションはファミリー向けで、文也がベランダを数えてみると5部屋ある8階建ての中小規模レベルのものだった。

 とはいえ、自動扉にオートロックのキーが、見知らぬ者を拒んでいる。


「オートロックになっているからなあ。新聞受けにかかれている名前をチェックすることもできないか。まあ、防犯上、名前を載せていないだろうし……」

「オートロックって何だ?」

「ほら、自動ドアの横に数字が書かれた押しボタンとか色々あるだろう。部屋にいる住人に頼んで開けてもらわないと、ドアは開かない仕組みになっているんだ」

「……。誰かに開けてもらわないとならないのか。わかった」


 そう言うと桧毬はスクールバックを開けて、大量に入っている食料,(半紙)をかき分けて真っ白なスマホを取り出した。


「大量の半紙にも驚いたが、桧毬がスマホを持っているとはな……」

「ふふん。桧毬はもうただのヤギではない。スーパーヤギ女子高生なのだ」


 そして元ヤギとは思えない指さばきでメールに文字をうちこんでいく。


「エギュラメ様、マンションの鍵を開けてください、で送信」

「……もしかして、住んでいるのか、ここに……」

「エギュラメ様は魔界におられるんだから、住んでいるわけがないだろうが。情報操作はメールだけではないのだ」


 胸を張って、主の力を自慢するヒマリのスマホに短い電子音がした。


「オッケードアは開いているのだ」

「どうやったんだ……って桧毬、おい」


 桧毬は自動ドアへ近づくとガラスの扉はヤギ娘を招き入れ、仕方なく文也も後に続く。

 

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