表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴートメール  作者: 楠木あいら
背景、幼なじみ様
5/32

手紙

 検索結果通りに、文也は押し入れを開け、左奥にあるはずの箱を取り出すために、まずは手前にある大小のダンボールや、紙袋を部屋に出してから桧毬に言った。


「いいか、桧毬。ダンボールは絶対に、開けるなよ」

「大人の階段を上るための……ってやつか?」

「違う!若気の至り品だ」

「子供のクセに若気を使うとはな? ところで、若気の至り品とは正確になんだ?」

「……思い出の品だよ。卒園式とか」

「ああ、あれか。号泣しながら……」

「言うな!って……何で桧毬が知っているんだ?」

「近所の話は、あっという間に広まるものだ。家のじい様とご近所さんの会話は畑、小山の近くで行われるのだ。

 文也と修二の話もたまに出てきたぞ、例えば……」

「……。何が望みだ」


 桧毬は両手を差し出す。


「桧毬は腹が減っている。書き損じの手紙や、誰かが文字を書いた紙が食べたい」


 押し入れの中に、中学時代のノートがあったのを思い出し、桧毬に渡した。

 箱探しを再会した文也の後ろから、紙を破る音やそれを食す音が響く。


「中学時代の字も、相変わらず汚いが、良い味だ」

「味があるのか……それはそうと、腹、壊さないのか?」

「今の桧毬にとって、これが主食なのだ。

 しかーし、本当のヤギに紙を食べさせてはいけない!

 植物が材料だった昔の紙とは違い、現在の紙は体に悪いのだ」

「誰に向かっていっているんだ?」


 話ながら進めたので、時間はかかったが、ようやく記憶と同じ『たからばこ』と書かれたダンボールを見つけた。

 開けてみると見覚えのある物ない物『こんな所にしまっていたのか』という様々な物がある中、10年前の文也が指示した封筒、らしき物は底にあった。

 封筒というより、ノートの紙を破って包んだ、といった方が早いだろう。

 包み紙には『ふういん中、ぜったいにあけるな!』と大きな文字で書かれており、相変わらずの汚い字だが、主張を感じる字でもあった。


「ご丁寧に糊付けしてある。桧毬、机の上にハサミがあるからとってくれ」

「ふごわ、わかんが……」


 食事を続ける桧毬から、受け取り端を切り落とすとまたノート紙で包んだ物が現れ『この手がみは、たかだふ みなり しか あけてはならない!!』と注意書きが書かれている。


「まさかとは思うけれども、やっぱり、また包み紙だ、今度は『たけだ ふみなり であっても、あけるには かくご がいる』……今度は『じゅんび は いいか?』はいはい、いいですよ」


 包み紙を開けると、青いちゃんとした封筒が文也を待っていた。ロケットや月のイラストがある、さっきのと同じ物だ。


「なになに、まずは最初のミッション達成だ、おめでとう、10年後の文也……相変わらず、破りたくなる文だな」

「破るのなら、桧毬が食べてやろう」

「記憶とやらが戻ったらな。


 手紙は、全部で、3通あるって、まだ、あるのかよ……

 1番目の手紙の最後に次の手紙場所を書いた。10年後の僕でも分かるように簡単な暗号にしてやったから、安心するがよい……

 ここからが、重要ポイントだ!

 全ての記憶が戻った時、僕は、エギュラメさんに返事の手紙を書く……」


「…………」


 翌朝、目を覚ました文也は、起床時間より早い時間を確認してから、ぼんやりと天井を見つめた。

 魔王の娘エギュラメを過去の自分が知っていて、その記憶を10年前の自分が封印していた。


「そして俺は、手紙を書かなければならない……」



 文也は学習机机に向かい、文也は手紙の続きを書き始めた。


 まずは、あなた様に謝らなければなりません。

 10年前の自分が手紙により、自分はエギュラメ様、あなた様との記憶がありません。

 あなた様とどんな出来事があったのか、まったく覚えていないのです。

 10年前の自分が書き残した手紙を探し、記憶を取り戻すまでの間、もうしばらく、あなた様に送るべき『本当の手紙』は、待っていただけると、幸いです。

 もし返事の遅滞、この手紙事態が、無礼で怒りを買ってしまったのならば、どんな罰でも受けますので、決して、友人や桧毬に向けないでください。


                 武田 文也



 文房具屋に売っていた白い封筒に入れ封をした。

 宛名側に自分の住所、氏名。宛先に『エギュラメ様』と書き終えると桧毬に渡した。


「いいか、絶対に食べるなよ」


 と、言い聞かしてから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ