表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴートメール  作者: 楠木あいら
追伸
32/32

半年後

 半年が過ぎた月曜日の朝。

 修二は武田家の前にたどり着いた。

 ドアは開く様子はない。待つしかない修二は、いつもと変わらない自分の姿を見つめた。


「結局、何があったんだろう……エギュラメ様に手紙を渡したのに、何事もなく学校に通えるのは。寛大な御方なのだろうな」


 エギュラメに宛てた手紙が届かなかった事を知らず、記憶も桧毬とキスした後は何も覚えていなかった。


「かと言って、聞くに聞けないっていうか……」


 聞きずらくなる光景を思い出し赤くなった修二は、開いたドアに気づき、さらに慌てふためいた。


「お待たせなのだ、修二……?どうしたのだ?」

「な、何でもないよ」


 桧毬は『いってきます』と元気に言うと武田家を後にした。

 黒髪をツインテールにした女子高生桧毬はいなくなった穴をうめるように武田家の一員になっていた。

 部屋も育て上げるまでの教育や生活費も1人分ある。息子が娘に変わってしまったが。


『それもこれも、あいつの仕業なんだろうな』


 修二は空を見上げ、それから愛しい人に向ける。

 人間になった桧毬に角はないが、似たような形をした髪飾りをつけている。

 紙は食べなくなったが、英単語を覚える紙、単語帳を睨むように見つめ、不平を口にした。


「それにしても人間は不便なのだ。書いた紙を食べれれば、テスト勉強しなくても良いのに」


 桧毬にはヤギ時代からの記憶も残っているようで、時々、修二を驚かせる。


「食べちゃだめだよ、桧毬ちゃん」

「もう二度と食べないから、大丈夫なのだ」

「……」


 修二が無言になっている間、桧毬はテスト直前勉強((というより眺めていただけ)の紙から視線をそらし、考えた。

 なぜ、人間になれたのか?


『桧毬は間違いなく、エギュラメ様から無にしてもらい。魂はじい様のる世界に向かったはずなのに……。

 でも、気がついたら、文也の家にいて武田桧毬になっていたのだ』


 桧毬は空を見上げた。


『もしかして、修二宛てに書いた返事、誰かに読まれたのかな』


 その言葉に桧毬の顔は赤くなり、急いで首を振る。


「……それは、恥ずかしいのだ」

「どうしたの、桧毬ちゃん?」

「な、な何でもないのだ。それよりも早く学校に行ってテスト前勉強しないと」

「そうだね……あ、ちょっと待って、メールだ」


 修二はスマホを取り出し受信メールを開いた。


「あいつ(文也)からだ。今日から中間だなって……テストの内容を読み取って送ってくれても、良いものを。まったく、気の利かないメールだな」


 不満を口にするものの、修二は笑い空を見上げた。

 暗書の闇、エギュラメと同化した友人に二度と合うことはできなくなってしまったが、通信はいつでもできた。


『人間の道を捨てて魔王の娘を選ぶなんて、どうしようもない馬鹿者だよ、あいつは』


 修二にとって、文也の出した答えは、今でも理解できないものだった。

 十人十色。自分と同じにはならない考えを持つ者は、どこにでもいる。

 とはいえ、大事なのは、その者が笑うことができるかどうかだ。


『あいつが幸せならば、それで良い』


 修二はどうしようもない友人を笑うことにした。



 おわり

 

 ゴートメールは書き直した作品だったりします。

 ヤギ娘がもう1人いて、桧毬は黒ヤギ娘として登場する予定でした。

 そっちの内容は年齢差制限が必要になりそうな設定やらクライマックスでしたが、途中で『何か違うな』となり、中断しました。



 ラスト、文也が出した答えは『それ』になりましたが、楠木だったら『その』答えはでなかったろうな。

 主人公が動いている証拠ですね。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ