高級メモ用紙
「いいアイデアだが、下心がみえみえだな」
といいつつ、桧毬が差し出したメモを手にしてみると、メモとは思えない上質の紙だった。
「どうみても和紙だな。これをメモにしても良いのか?」
「心配するな。『残りは桧毬が美味しくいただきました』というやつだ」
「桧毬ちゃん、テレビ用語知っているんだね」
「桧毬だって見る。ちなみにこの和紙はパパにおねだりして買ってもりったのだ」
「どっちのパパ?」
「上書きされた方しかいないと思うが」
といいつつ、文也はシャーペンを取り出し、10年前に見ていたアニメのキャラクター名を書き出した。
「技の名前とかあったよな」
上質の和紙に、懐かしいが恥ずかしい言葉を埋め込んでいくのは、少し気が引けるが、桧毬の食料になると考え、作業を進める。
「……は、3年じゃなかったっけ?」
「そうだっけ?」
「消しゴムを使う必要はない。2本線だけにしてくれ」
「はいはい」
一通り書いて
桧毬が食べたそうな顔をしているので、和紙を彼女から遠ざけてから、改めて懐かしい単語たちを見直す。
「この中に2番目の手紙のありかとなるヒントが、あるのか?」
「その単語から、ヒントになりそうなものをピックアップ(?)していけば良いんじゃないのか?」
「ヒント……ねぇ……」
「………………」
単語を見た2人はため息をついた。
途方もないヒント探しであることに。
まず、ここにヒントが含まれいるのかもわからないのに、そこからさらに場所につながるのを見つけ出すなんて……
「無理だろう、無謀すぎる」
「しかし、やるしかないのだ。
この単語を使いながらしりとりしたらどうだ?
ない単語は、その当時を思い出してやれば良いと、桧毬は思うぞよ」
2人はヤギ娘を見上げた。
「そして早くヒントを見つけ出し、いらなくなったこのメモを桧毬に食べさせてくれ」
下心からのグッドアイディアであっても。
「タンドロニー」
「ニードルサンダ」
「ダイブアタック」
「クルクルサンダー」
2人から出てくる単語はアニメやゲームで流行した召喚するモンスターの名前や技が多くを占めていた。
「堕落熊?……なんだこりゃ」
「キャラクターであったろう、やる気のないクマで、修二がTシャツ着てた」
「そうだっけ?」
忘れている事もあるが……。
「ま、マネマネトカゲって、文也、フィギュア持ってたな、でっかいの」
「お年玉はたいて買ったなぁ、あれ、今、どこにあるんだろ」
そして懐かしい単語だらけなので、脱線も多い。飽きてきた桧毬は、カバンから書き損じの半紙を取り出しランチタイムに入った。
「げ、ないから、ゲーム」
「む?む……これも、ないから、無人島」
「う、ウガーコブラ」
2人のしりとりと、桧毬の食事は、さらに続く。
「で……で、はないな。文也、何かあるか?」
「で?で……で…で……あ」
いい加減、懐かしい単語でのしりとりに飽きてきた頃、2人は顔を見合わせて言った。
『伝説のたい焼き屋!』