報告
「…………」
一番目の手紙の内容は文也が気を失っていた時の映像と変わらない内容だった。
「しかし、これってヒントなのか?」
手紙に文句を言いながら、文也は次の便箋をめくる。
『この 手がみ が よめた と いうことは、ヒマリ が こや の ちかく に うめた 入れもの を ちゃんと おしえてくれたのか、ヒマリ の いえの人 に きけたようだな。まあ、かしこい と ほめてやろう』
「……それって、ヒントって言わないだろが」
「手紙に、ツッコミをいれるのだな、人間って」
便箋を芸人のように手の甲を当てている所をベランダから跳んできた桧毬に見られていた。
「……」
「子供のすることだからなあ。桧毬から見れば、10年たってもまだまだ子供まだがの」
「……桧毬。その、エギュラメ様の目」
文也はおそるおそる漆黒色の目を向けた。
漆黒色の目から何も感じ取れない。
「何ともない」
「エギュラメ様も多忙だからな。それはそうと文也」
「手紙だろ。今から書くから、明日、取りに来てくれ……って、憑依されているんだから、その場で読むのか?」
「ちゃんと届ける。この場で読んだら桧毬まで見てしまうからな」
「そうか、そうだな」
文也は今日の出来事を手紙にする事にした、部下の桧毬がいるから、報告はしているだろうけれども、文也は自分の言葉で報告しようと思った。
『桧毬の強引な行動なお陰で一枚目の手紙を入手し、あなた様との出会いを知ることができました。
マンションに行った時、エギュラメ様は俺の事を見ていたのでしょうか? 』
「……」
文也はペンを止めて、天井を見上げた。
『正直に言います。あなた様に見られたら時、恐い気がしました。
とは言え、恐いというのと同じぐらいに嬉しかったです』
『恐い』と書いて彼女を怒らせてしまったらという不安はあるものの、この手紙を読んでくれると思うと、文也は嬉しく思えた。
「二番目の手紙……」
文也はため息をついた。一番目の手紙に書かれていた次のヒントに先行き不安を感じてならなかった。