天寿を全うしたら異世界転生の権利を授与されました
「おめでとうございます!! 貴方は今年百万人目の亡者です!! よって異世界転生の権利を授与します!!」
ごく普通の人生を送り、子供達と孫達に見送られながら召された私は三途の川を超え、『あの世の門』という所にやってきた瞬間にクラッカーが鳴り、クス玉が割られ、周りの人達に拍手をされた。私はそんな状況に只々驚くばかりで立ち尽くすしかなかった。そして、天の使いだという人に先ほどの言葉をかけられたのだ。
「異世界転生って・・・・・・?」
「あっ!! 説明もなしにすみません!! 異世界、剣と魔法の世界へ転生する権利を貴方に与えられたのです!! 本来、異世界転生は夢半ばで命を落としてしまった若者に与えられるのですが、以前から上でそれは不公平なのではという議論がありましてね~」
「は、はあ」
天の使いさんが言うには私達が『ファンタジー』と呼んでいる世界に転生出来るのは若くして死んだ人だけで、だけど天の使いさんの上司達の中で異世界転生は公平にすべきだという意見が出ているそうだ、そもそも、若い人だけ異世界転生が可能かと言うと理由は、若くして死んだから可哀想だかららしい。とりあえず、色々あって今は××人記念という形で天寿を全うした人にも異世界転生の権利を与える事にしたという。
天の使いさんは全て言い終わると「此方に!!」と私を案内しようとしたが私はそれを拒んだ。異世界転生、魅力的だと思うが私には先立たれた夫との約束があったからだ。
『●●、もし、もし生まれ変われたならば、また結ばれよう』
孫が生まれ、定年退職しゆっくりと二人で過そうとした時に重い病気にかかり夫はこの世を去った。
性格も容姿も素敵であった夫はそれはそれはモテた、だから周りから何かと地味と呼ばれた私と付き合い、そして結婚したのは運が良かったと私は思っている、そして最期の最期に来世でも結ばれたいと告げられ私は感激のあまり涙し、そして、夫との約束を必ず叶うと決めたのだ。
その事を告げると天の使いさんは少し考えて口を開いた。
「もしかして旦那さん、○○さんという方ですか?」
「は、はい。どうして夫の名を?」
「彼、五万人目の亡者として異世界転生の権利を授与されたのですが・・・・・・、妻、貴方が来るまで転生しないと言いましてね~、何度も何度も説得しましたが凄い頑固でしたよ、上も無理にさせなくていいだろうと考えて貴方が来るまで眠りに就かせています。愛されてますね~♪」
「あ、あい・・・・・・////」
「旦那さんとの約束はこれで安心ですね!! それでは此方に!!」
「え!? 夫に会わせて・・・・・・」
「異世界へレッツゴー♪」
無理矢理引きずられるような形で私は『異世界行き』と書かれたゲートへと押し込まれた、あゝ、せめて夫と一緒にくぐりたかった・・・・・・。意識が段々と遠のいていくのを感じながら目を閉じた。
「ばぁ~~~~か!! 今度こそ、私が○○君と結ばれるんだから!! 一人で寂しく転生しなさい♪」
天の使いさんがそんな事を言っているのを知らないまま、私は深い深い暗闇へと落ちていった。