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世界探求者はわりとチート!?  作者: 和
第一章 カーラント王国編
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出発準備




「ドラゴン狩りかー…でも、その前にいろいろ準備しなきゃなぁ…」


ギルドから出て街を歩きながら言う。


「えぇっ!?」


楓が驚く。なんでだ。


「お前は準備も何もなしに旅に出る気だったのかよ…」


「あー…あはは…」


こいつは何も考えてないな。


「ったく…とりあえずテントとか必需品を買わなきゃな…」


「どこで?」


「…道具屋に決まってるだろ…っと、着いたな」


なんとなく歩いてるように思っていたのか楓は感心したように、


「ほー…燈くんはしっかりしてるんだねぇ…」


と言った。


「いや、普通だから」


呆れた目で楓を見つつ道具屋に入る。


「すいませーん」


「はいはーい」


奥から出てきたのは俺たちよりも少しばかり年上の女性だった。


「何をお買い求めですか?」


「あー、っと…旅の必需品ですかね」


「それだったら…こちらなんてどうでしょう?あなたたち冒険者でしょう?」


冒険者セット(初心者)とでもいうようなカバンを差し出してくる。

中を見せてもらうと、テントや剥ぎ取り用のナイフに灯など旅に必要なものは一通り揃っているように思える。


「そうですね。じゃあ、これを二つください」


「え、一つでよくない?」


楓が不思議そうに言う。


「お前は俺と同じテントで寝る気なのか」


「あ…え、えっと…」


楓は赤い顔になって黙ってしまう。


「若いっていいわね〜。はい、じゃあ銀貨1枚になります」


(…あんた俺らとあんま歳変わらないだろうに…)


少しムッとしながら銀貨を渡す。

ちなみにこれは王城の宝物庫から取ったものだ。


「まいどありー!またのお越しをお待ちしていまーす」


元気なお姉さんの声を背中で聞きながら道具屋を出る。


「さて…次はどうするか…」


ギルドと道具屋で思ったよりも時間を取ってしまったため、宿を探すことにした。

楓はまだ黙ったままだったので特に声をかけるわけでもなく歩き始める。

さっきまでは隣で歩いていたのだが今は少しばかり後ろを付いてくる楓。

そんな楓を少し気にしつつ周りに目を向ける。

夕方だからなのか屋台などが多くなってきており、そこらからいいにおいが漂ってくる。


(ちょうどいい、小腹が空いたしなんか買うか)


「なあ、夏山」


「は、はい!?」


ビクッとして楓が言う。


「そんな身構えるなよ…。小腹が空いたから屋台でも回らないか?」


苦笑して言う。


「え…あ、うん」


また恥ずかしくなったのか少し俯きながら楓が言う。


(なんか調子狂うなぁ…ま、そのうちなんとかなるだろ)


と、燈は考えている一方で楓は、


(ど、どうしよう…。お、同じテントとかはしたないって思われちゃったかな…。私に気を使ってご飯まで誘ってもらっちゃって…ああああああ!!!)


なんとも言えない状況に陥っているのだった。



そんなこととはいざ知らず


「おっちゃーん」


「お、いらっしゃい!けど、俺はまだ20代だよ!!」


「悪ぃ悪ぃ。串焼き4本くれ!」


「はいよ、坊主!!銅貨8枚だ」


「俺だって坊主って歳でもないんだけどなぁ…」


銅貨を渡しつつ軽口を叩きながら串焼きをもらう。


「熱いから気をつけろよ!でも、熱いうちに食えよ!!」


去り際にそんなことを言われそれは難しいと笑う。


「ほら、夏山」


「あ、うん…」


楓にも一本渡して燈は串焼きを食べる。


「あっつ!でもうまいな!なんの肉だろうなぁ…やっぱ地球にはいない動物なんだろうなぁ…探してみようかなー…」


燈は一人そんなことを言いながら串焼きを頬張り続ける。


お礼を言うタイミングを逃した楓はまたなんとも言えない気分になりつつも串焼きを口にする。


「あ、美味しい」


「だろ?なんとなくあの店を選んだけど正解だったな!」


燈が笑ってそう言うのを見てるとなんだか楓も楽しくなってくる。


「ねぇ燈くん、早く食べてもっと回ろう!」


「お、いいね。美味いもんが絶対にあるはずだよな!」


先ほどまでの気まずい空気なんて微塵もなく二人で屋台を回るのだった。



◇◆◇◆



「いやぁー食ったなぁ。夏山なんて俺より食ったんじゃないか?」


「そんなわけないよ!!」


「怒るなよ、冗談だろ」


二人仲良く話しながら街を歩く。

空もすっかり暗くなり、地球だったら補導されるくらいの時間になっている。


「おし、じゃあ宿を探さないとな」


「どこにあるかわかってるの?」


「そこらへんは大丈夫。ギルドから出るときにあの美人さん…じゃなくて受付の人にオススメを聞いといたから」


美人さんと言ったところで楓の目つきが鋭くなったので慌てて燈は言う。


「美人さん…確かに美人だったけど私だってそれなりに可愛いはずだもん…」


小声で呟く楓。


「え、なんか言った?」


「なんでもないです!!」


「おお怖…あ、ここだ。えっと…『夕暮れ亭』…うん、合ってるな」


「ふーん…なかなかいいところだねー…」


夕暮れ亭は日本で言う旅館のようだった。

ただし、さすがに温泉は無いようだが。


「ごめんくださーい」


「はい」


(ほほう…これはなかなか…)


受付に居たのはこれまた美人な女性だった。

髪は茶色で目は綺麗な琥珀色をしている。


「えっと…一泊したいんですけど」


「お部屋はどうなされますか?」


綺麗なスマイルで言われる。


「どうします、夏山さん?」


少し悪戯心を刺激されたので後ろを振り向きながら聞く。


「二部屋に決まってるでしょ?」


槍が目の前にある。

やばい。漏れるかと思った。


これには受付の美人さんも驚いたのか目を丸くして早口で言う。


「ふ、二部屋ですね。一泊で一人銀貨2枚なので、合計4枚になります」


「あ、はい。連れがすいません…」


銀貨4枚を渡して言う。

ちなみに槍は丁寧にしまってもらいました。

いやもうだって怖いんだもん。なにより夏山の顔がもう無表情でやばかった。殺されそうだった。


「では、これが部屋の鍵です。失くさないようにしてくださいね」


鍵を受け取って部屋に向かう。



「な、なあ夏山さん?」


「…なによ」


ブスッとした様子の楓。

しかし、心の中では


(き、急にあんなこと言われたらああなっちゃうのも仕方ないわよね!?仕方ないわ…うん、仕方ないのよ…)


自分を正当化していたのだった。



「明日は早めに出るから…はい、それだけです。じゃ、おやすみ」


「…おやすみ」


(燈くん…ごめん…)



楓がデレるのはまだ少し先のこと…いや、そもそも素直になれるんだろうか…。





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