相棒発見?
ルーノと別れたアカリは彼の部屋の隠し通路から宝物庫へと向かっていた。
あまり使われていなかったからか、埃っぽさが目立つ。
「…ん……」
しばらく歩いていると楓が目を覚ました。
「ああ、目が覚めたか。悪いけど少し立て込んでるから大人しくしててくれ」
担がれていることに気づいた楓が叫び声をあげそうになるのを手で止めて言う。
しばらく口を手で覆っていると楓が手を叩いてくる。
なにか言いたいのだと燈は察して聞いた。
「どうした?」
「…どうしたじゃないよ。なにこの状況。毒の危険を伝えようとした次の瞬間には気を失って担がれてるこの状況は一体なんなの」
「あんま気にすんなよ。あ、重くはなかったぞ。むしろ軽かった」
「失礼!!」
頭を叩かれた。
「痛っ…まあ、聞きたいことはあるだろうけど後にしてくれ。今はちょっと急いでるからさ」
「…ふうん?」
暗い道を歩いていると前に扉が見えてくる。
普通の人には暗すぎて分かりにくいかもしれないが、やはり加護のせいで身体能力までもが化け物級の燈にはあまり関係がなかった。
ーーギギィ
ゆっくりと燈は扉を開けた。
「おお…なんというか……金持ちっぽい」
「ち、ちょっと!」
楓が慌てた様子で、
「まさか盗もうっていうんじゃ…」
と言う。
「んなわけあるか。ちゃんと許可はもらってる。しかし…まあ、旅の分の費用くらいはくすねてもいいだろ?」
ニヤリとして燈が言う。
「いやまあそれくらいならしょうがない…のかな?…って、え?旅?」
「それも後でな。まずは武器だ。自分に合うもの…いや、自分の能力に合うものを持ってこい。時間は…そうだな、3分だ」
燈は楓を降ろしつつ言う。
「え、どういう…」
「はい、スタート。急がないとお前は窃盗罪で斬首かもなー…」
「えぇ!?…わ、わかった!!」
楓は急いで探しに行く。
それを落ち着いた目で見送り、
(さて…俺も探そうか…ん?なんだ?)
周りを見た燈は一振りの刀に目が吸い寄せられる。
見た瞬間にわかった。これだ、と思った。
何故だかはわからないがこれは自分のものだと理解した。
そう思い手に取って抜こうとすると、
(…抜けない?)
なにかが引っかかる感じがして全く抜けない。
先ほどの感覚も嘘だったかのように消え失せている。
(……まあ、勘は信じておくか。とりあえずもう一本なんか持っていけばいいだろ)
燈は刀をアイテムボックスに入れ、そこらにある適当に使えそうな剣を手に取る。
適当に使えそうな剣、といっても宝物庫にある以上はやはり業物である。
それに加えて適当に金と面白そうな物ををごっそりとアイテムボックスに入れる。
「おい、夏山。出るぞ」
「ちょ、ちょっと待って!」
楓がこちらに駆けてくる。
その背には槍があった。
「なんで槍なんだ?使ったことでもあるのか?」
「いや、ないけど…」
「じゃあなんでだよ…」
呆れたように燈が言う。
「…この子が、呼んでるような気がしたから、かな…」
少し懐かしそうに槍を撫でる楓。
(こいつも加護をもらっているのか?…まあ、調べるのは今は後回しだな)
「よし、じゃあ行くぞ」
「うん!」
元気に返事をする楓。
「…声が大き過ぎる。」
「…ごめんなさい」
なんともしまらない様子で燈たちは城を出て行ったのだった。
◇◆◇◆
(アカリたちは無事に城を出ることができただろうか…)
窓のそばに置いてある椅子に腰をかけて物憂げな表情でルーノは考える。
実際のところは無事どころか、宝物庫の宝をそれなりに盗って…いや、取っているのだがそれを知るのは後になる。
(まずは異世界人…彼らを鍛えて死なないようにしなければ…彼らは大事な…大切な人たちなのだから)
今後の予定や計画を立てながらルーノの長い長い夜は更けていくのだった。
◇◆◇◆
「さてさて…どうしたもんかなぁ」
城から抜け出した燈たちは特に行くあてもなく街の中を歩いていた。
時間は朝…といっても早朝となっていたのでこれから仕事に行くだろう人たちと時々すれ違う。
「え、もしかしてなんにも決めてなかったの?」
ジトリと楓が睨む。
「大まかには決まってるんだけど…どうやって行くのかとかはまったく決まってないと言える」
「…はあ…じゃあ、とりあえずギルド…冒険者ギルドに行こうよ。城の人たちからちょこっとだけ聞いたんだけど、冒険者っていうのは旅をするのに有利らしいし、お金も稼げるっぽいから」
「そうだなぁ…」
正直お金の心配はほとんどする必要はないだろう。
なぜなら燈は宝物庫にあった金貨などをアイテムボックスに入れられるからといっても風呂に入れて泳げるほどに持ってきていたのだから。
(金はいいけど興味はあるな…やっぱモンスターとかいんのかね?)
「よし、じゃあギルドとやらに行きますかね」
「そうと決まったら早速行こう!」
楓が元気に歩き出す。
「うん、そうだな。で、場所は?」
楓がピシッと動きを止める。
嫌な予感と少しの嗜虐心でもう一度聞く。
「…場所は?」
「…ごめんなさい」
結局街の人に道を聞いてギルドへと向かうのだった。