加護、もらいます
「…いったー…く、ない?」
なんとなく衝撃を想定していたのだけれど特に何もないようだった。
「恥ずかし…で、ここどこなんだ?」
見渡す限り白い…っていうのが定番なんだろうけど今俺がいるのは昭和の家のような…ちゃぶ台やブラウン管テレビがあるし…うん、昭和の家だろう。
「いや、いいんだけどもうちょっとなんとかならなかったのか…」
もっと色々想像してたから拍子抜けっていうか、雰囲気が台無しだ。
「そこは俺の趣味だ」
急に背後から声をかけられ驚く。
「…!?…誰だお前」
「おーおー殺気立っちゃって…まあまあそんな警戒すんなって。俺はお前を呼びだした…まあ、あえて言うなら神…かな」
「ふーん…(うさんくさ…でもまあなんでか不信感は湧いてこないな)」
「で、お前をここに呼んだ理由だけど…面白いからだな!告白して振られるところとか特に!!」
「最低だなお前!!クズかよ!!」
「まあまあ怒るな青少年…いや、性少年(笑)」
「うるせぇよ!!」
「まあまあ…あと、もう一つ理由がある。」
いきなり真剣な顔になって自称神が言う。
「悪いんだが、今からお前に…いや、お前たちには異世界に行ってもらわなければならない」
その突拍子もない言葉に理解が遅れる。
確かにどこかに行きたい的なことは言っていたけれども‼︎
「…はあ?言っちゃ悪いけど俺には誰かに自慢できるような何かがあるわけじゃない。どうして俺と、なんていうの?そのー、残りの人が行かなくちゃいけないんだよ」
「理由は単純。お前が強いからだ。肉体的だけじゃなく、精神的にもだ。異世界に行ってもらうにあたって神は加護を与えることができる。が、元の人間がある程度の器を持っていなければそれは意味がない。その点でお前は…」
「器がある程度あるってことか」
力があるから行けって?冗談じゃない。
そもそもあるってほどあるわけじゃないしこれからの努力次第みたいなこと言ってんじゃねえか。
「まあ、そういうことだ。あと、俺の加護は誰にでも与えられるようなもんじゃないっていうのもあるな」
「それで?一体俺にどうしろっていうんだ?」
「…頼む、世界を救ってくれ。このままだと世界は壊されてしまう」
頭を下げてくる自称神。
その真剣な様子に俺はさっきまで感じていた憤りが引っ込んでしまった。
けれど、納得できたわけじゃない。
「…悪いが俺にそんなことができるとは思えない」
「お前がそう思っていようとも、向こうに行ったら結果的に救うことになる…そう時の神が言っていた。だから俺はお前に加護を与えるんだ」
「そんな身勝手に俺を付き合わせるなよ!!俺は戦えない!」
俺は何の力もない、ただの一般人だ。
転べば血が出るし、車に轢かれれば大事故、最悪死に至るだろう。
「今はな。けれど、時が来れば戦えるようになるさ」
「…それも時の神様とやらが言っていたのかよ」
俺は苛立ちを隠さずに言う。
「いや、これは俺の勘だよ。でも、きっとそうなる。そんな気がするんだよ」
「…俺は…強くない…力があったところで何ができるか…何をするかもわからない。それでも、俺にやらせようっていうのか?」
「ああ、お前だけ…お前にしか頼めない」
はぁ、とため息をつき、
「…わかったよ、やってやる。」
俺は決めた。
「けど、俺は俺の好きなように生きる。俺の正しいものを信じて俺の正義を信じる。」
「…ああ、それでいい」
神は笑って言った。
「それじゃあ、お前には加護をやろう。この俺が最強とも言われてきた戦神たちから受け継いだ力を…!」
自称神が俺に手をかざす。
その瞬間、頭に焼けるような痛みがはしる。
「う…ぐぅぅ…ああああああああ!!!」
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い‼︎‼︎‼︎)
それしか考えられなかった。
「(くそ…なんだこれは…!!流れ込んでくる…知識…そう、知識だ。戦いにおいての全ての、勝つための知識…)」
「すまない…耐えてくれ」
「が…ぎっ…く…ぐぅ…くそぉあ!!!」
だんだんと痛みが引いていく。
視界がクリアになっていく。
一瞬だったはずなのに、もう何時間も耐えたかのような疲労感に大量の汗。
「最後に、鑑定のスキルとまあ、テンプレとも言えるアイテムボックスをやろう。上手く役立ててくれ」
「…ああ」
掠れた声で返事をするので精一杯だった。
「それじゃあ、いってこい」
「ああ」
世界が光り…感覚がなくなっていき…俺は意識を失った。
◆◇◆◇
「いったか…」
正直、俺の加護に耐えられる人間がいるとは思えなかった。自分でもオーバースペックだと思えるくらいの力だったからだ。
今までの奴らだったら悪くて耐えられず頭が破裂、良くて廃人だったからな…。
「ま、私も手伝ったしね〜」
「!?……パンドラか…」
「あんな面白い子を独り占めなんてずるいよ〜?」
「…助かった」
「…まあ、あの子には可能性があるからね。私も加護を授けたしそう簡単には死なないだろうね。あとは心が折れないように祈るだけ…神なのにね…」
彼女は自虐的に笑った。
「仕方ない、俺たちにできるのはもうそれしかないんだからな…」