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世界探求者はわりとチート!?  作者: 和
第一章 カーラント王国編
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占いって怖かったりしますよね




宿を出て適当な道を楓と歩く。

まあ、この街のことは何も知らないと言っていいから適当に歩くしかないんだけど。



「あ、屋台出てる」

「本当だ。…って串焼きかよ」

「なんで?ダメなの?」

「いや、美味いし良いんだけど…異世界イコール屋台が出てるみたいなイメージがなんか変だなって思ってさ」

「うーん…まあ、美味しいし、いいんじゃないのかな?おじさーん!串焼き二つ!!」


(屋台出ていて、そこで串焼きを売っていて、やっているのはおじさん。微妙になんかこれもテンプレだよな)


楓が買ってきた串焼きに礼を言い串焼きを頬張りつつ思う。


「んー!美味し!」

「うん、確かに美味いな。この世界にも香辛料があるっぽいけど…流石にしょうゆとかはないよな」

「どうだろうね?いろんな用事が終わったら二人で色々探してみようよ!」


カーラント王国…ルーノの頼みを果たした俺は何をすればいいんだろうか。

何かやりたいことができるのだろうか。

幸い、生きるのに苦労しないくらいの力は持っている。


(向こうじゃ進路で悩んでたりしてたけど…こっちはこっちでどんな生活をしたら幸せなんだろうな)


「そうだな、まずはこの世界を見てみたいし…旅でもするか?」

「うん!…あ、燈くん、占いだって!ちょっとやってみない?」

「占いか…試すくらいだったらまあ…」


たまたま見つけた少し怪しげなテントへ入っていく燈と楓。


「あら、いらっしゃい」

「こ、こんにちは」

「どーも」


中にいたのは年齢不詳の妖艶な女性だった。

金色の髪に紫の目、とんがり帽子…まるで魔女のようだ。


「お客なんて珍しいわね。それで?何を占って欲しいのかしら?なんでもできるわよ?探し物に探し人、宝物のありかに…未来予知だったりとかね」


最後のところでこちらに向かって意味深にウインクをしてくるが、余計なお世話だと言いたい。


「すっごーい!」

「……」


もう魔法ではなく超能力の類いではないか、という言葉を飲み込む。

見た感じ怪しいので信じる気はないがなんとなく気になってしまう雰囲気を持っている。


「なんでもいいんだって、燈くんはどうする?」

「俺はまだ考え中だから楓からやってもらえよ」

「えー?うーん…じゃあ、占い師さん、私の願いは叶いますか?」

「これまた抽象的なお願い事ね」


くすり、と笑う占い師に思わず顔が赤くなる楓。


「願いと言っても一纏めにはできないわ。例えば…大富豪になりたい、気になる人と恋人になりたい、強くなりたい。これらの願いは占っても本人の努力次第では簡単に揺らいでしまうわ。だから的中するとは言えないわ、占いはあくまで占いですもの。それに、いきなりそんな風に言われてもどう占ったら良いのかわからないしね?」


楓を見つめてそう言う占い師。

確かにそうだと楓は感心したように頷いている。


「…それ以外だったらどうなんだ?」


少し思い当たることがあったので聞いてみることにする。

占い師は面白そうな顔をして眉を上げる


「…ふぅん?例えばどういったものかしら?」

「一年後の自分はどうなっているか、とか。そういう時間指定だったらどうなる?」

「そうね…どうなっている、というのは少し曖昧だけれど、生死くらいはわかるわ。けれどさっきも言った通り一年後に大富豪になれるか、などは残念ながら的中率は低いわね」


肩をすくめて飄々とした様子で言う。


「だ、そうだけど楓。それでもいいのか?」


今までの話を聞いて考え込んでいる楓に声をかける。


「うーん…まあ占いは占いだし…でも、希望をくれるものでもあると思うんだよね」


にっこり笑う楓。


「じゃあ、燈くんは少し出ててくれる?」

「はい?」

「乙女の願いが聞きたいのかな?」

「…承知いたしましたよ」


雷神が背後に見えた…気がした。


◇◆◇◆



「それで、彼を追いやったということは彼とあなたとの仲についての願いかしら?」


よくある占いなのかさして面白そうでなく退屈そうに聞いてくる。


「いいえ、違います。…ある意味ではそうなのかもしれないけど……これは私にはわからないことだから」

「恋仲になりたいとかそういうことではないのかしら?てっきりそういうものだとばかり思っていたのだけれど」


少し見下すように占い師は笑う。

多分、そういうことばかり占っていて、占いの結果に対してなにか不満を言われたりしたんじゃないかな。


「…それは、自分でどうにかします」


私は顔が赤くなるのを抑えるのに精一杯で対した反論もできなかった。

恋占いというのは向こうでそれなりにやったし、気になることでもある。

けれど今回はそういうものじゃない。


「なら、何を占って欲しいのかしら?」


私は深呼吸をする。


「燈くんの心がどうなっているのかが知りたいんです。それとこの先どうなってしまうのかも」

「…そう。ま、やるだけやってみましょう」


占い師は今まで飾りとなっていた水晶玉に手をかざす。

すると水晶が淡く光を放った。

だんだんと顔が険しくなっていく占い師を見て私は不安になる。

しばらくすると光が収まり、占い師が顔を向ける。


「彼の心は…そうね、三つに分かれてしまっている。色で例えるなら青と緑…それと異常なまでの黒。青と緑は境界線が曖昧だから互いを尊重し合っているみたいね。けれど問題なのは黒。境界線がはっきりしていて、いかにも危険そう」

「…そう、ですか」


私の頭にはあの時の燈くんが思い出されていた。あれが多分、黒だ。


「それで、この先はどうなってしまうんでしょうか」

「…可能性としては二つ。最悪なのは黒に蝕まれ、支配されてしまう。もう一つは混ざり合い、共存するような形になるか。言うまでもなく前者は危険、もう彼の意識は残らないでしょうね」

「…ありがとうございました」

「いえ、なかなか興味深かったわ。長い間やってるけど、あんなお客さんは初めて見たしね」


私は頭を下げてテントを出た。

この不安が消えるように祈りつつ。


◇◆◇◆


テントから出てきた楓は少し沈んでいるように見えた。


「何を占ってもらったんだ?」


俺が聞くと楓は少し落ち込んだ声で答える。


「…ダイエットに成功するか、かな」

「なんだそれ」

「女の子にとっては大事な問題なんだよ!ほら、早く行きなよ!」

「わかったって」


楓にぐいぐいと押され慌ててテントに入る。

楓が俺の後ろでどんな表情をしているかは俺には知りようもなかった。


テントに入ると、先ほどと何も変わらず占い師が笑みを浮かべて座っていた。


「いらっしゃい、それで、何を占って欲しいのかは決まったかしら?」

「その前にまたちょっと聞きたいことがあるんですけど」

「いいわ、なにかしら?」


本当はそれでもお代をいただけるのだけれど、特別ね?と言わんばかりの表情だ。


「同じ人に心がいくつもあって、そのそれぞれが体の支配権を持っている場合、占いはどの心に対して行われるんですか」

「また難しいことを考えるわね…。その答えは、占ってもらった心自身よ。その心を中心として他の心を考えて占うことになるわ」


俺が考えているのはあの黒い人が言っていた『彼』の事だ。黒い人は俺に攻撃的ではなかったけれど、話から察するにその『彼』はそうではない。と、するとこの先俺はそれに抗わなければならないわけだ。


今までは夢を思い出すこともできなかったが、シルフィと契約してから、何故か思い出せるようになった。


「俺が占って欲しいのはーーー」



◇◆◇◆



その後適当に食事を済ませて、足りなくなりそうな食料などを大量に買い込んで宿に戻った俺たちは、作戦会議をしていた。


「明日の夜に山に入る事になるわけだけど…なあ、シルフィ、お前いつまでそうしてるんだよ」

「………いいんです。私なんか空気ですから。風の精霊だけに」


ほぼ一日中放っておかれて機嫌が悪いシルフィが、うざい。そのしてやったりみたいな顔も少しむかつく。

確かに俺たちにも非はあるけれど。


「次は色々連れてってやるから機嫌なおせよ、な?」

「私、人が食べる甘いものを食べてみたいです」

「買ってやる買ってやる」

「…本当ですか?」

「本当だって、パーム領にでも着いたら好きなだけな」

「…ありがとうございます」


それまでのうじうじした空気が霧散して通常運転に戻るシルフィ。

その様子を見て楓と顔を見合わせ笑ってしまう。


「それで、山に入る事になるわけだけど、とりあえず俺の魔法と楓の魔法でひとっ飛びだ」

「…またやるんですか?」

「今度は安全運転だからなんもしねぇよ。そういえばだけど、あれって時間とかは大丈夫なのか?」

「うーん…あんまり長すぎるとダメだけど、山の高さとかから考えても長くても一時間も飛べばいけるから…大丈夫だと思うよ?」

「よし。じゃあ、とりあえずドラゴンのところまでは解決だな。次の問題は…騎士団か」

「なんでですか?パーっと吹き飛ばしちゃえば…」

「いやいや、ダメでしょそんなこと」

「楓の言う通りだな。それは却下」

「…人間てなんかめんどくさいですよね」


はぁ、とため息をつくシルフィ。


「俺としては騎士団との戦闘は避けたい。ギルドパーティのあいつらだったら大歓迎なんだけどな」


思い出しても少しムカついてくる。人は見た目で判断するなって教わってこなかったんだろうか。


「そこらへんは臨機応変でいいんじゃないの?もう騎士団がドラゴンを倒しちゃってるかもしれないし、逆にやられちゃってるかもしれないし」

「そう言われたら何も言えないんだけど…」

「それに燈くん、作戦とか立てても無視して色々やりそうだし意味ないと思う」

「あ、それわかります。もう雰囲気が破天荒さを表してますよね」


俺は特に何も反論しなかった。決してできなかったわけではない。

ああ、しなかったんだ。


「じゃあもう楓の案でいいか。とりあえず飛んであとはなし崩し的に押し進めて、最後はいいところをかっさらうってことで」

「えぇ!?私そんなこと言ってないんだけど!」

「了解です」

「ちょっとシルフィまで!?」

「じゃあ解散!おやすみ!」

「はい!」

「なんでそんなことになるの!!」


楓の大声が宿に響いて叱られたのは言うまでもない。

ちなみにその時俺は狸寝入りをしていて終始楓が涙目だったのは少しやりすぎたかなと思った。



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