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世界探求者はわりとチート!?  作者: 和
第一章 カーラント王国編
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空気なシルフィ

ハジャ山はドラゴンがいる山です。

五話の冒険者ギルドで少し出てきました。




「うええ…もう飛びたくないです…」

「情けないなシルフィは」


ハジャ山の麓にある街に着き、山の入り口がある街の奥へと向かっているとシルフィが愚痴をこぼす。


「楓を見てみろよ」

「あ、あれはなんかもう次元が違いますよ…」

「…まあ、確かに」


楓は意気揚々と先頭を歩いている。

その顔はすっきりとした笑顔で満ちていた。


「だいたい燈も悪いんですよ?楓の指示に従って回転したり急停止したり…かと思ったら急降下したり!」

「途中から俺も楽しくなっちゃってさ、まあ悪いとは思ってるよ」

「本当にそう思ってるなら今度からは自重してください…うっぷ…やば…」

「風の精霊がそんなんでいいのかよ…」


青い顔をして今にも吐いてしまいそうなシルフィ。

ちなみに彼女は普通の人には見えていないので問題ない。異世界人や適性のある人などには見えるらしいけど。


「あ、着いたよ燈くん!でも…通れるのかな?」


楓の声を聞いて俺も入り口を見る。

するとそこには兵士が立っていた。

立ち止まっていても仕方がないのでとりあえず近づいていく。


「こんにちは、ここって通れるんですか?」

「すまないが、ここは今立ち入り禁止区域になっている」

「理由をお聞きしても?」

「ドラゴンが出現しているため、一定以上の実力のない者は入ることはできない」

「俺たちは依頼を受けてここへ来たのですが…」


そう言って依頼書を見せる。


「失礼だが、ギルドカードを提示してもらっても良いだろうか」

「ああ、はい」


ギルドカードを見せると兵士の人は眉をひそめる。


「…申し訳ないが、君たちを通すわけにはいかない。冒険者であればランクB以上のパーティ、もしくはランクA以上の者しか通すことはできない」

「そうですか…じゃ、諦めときます」


そう言って踵を返す俺に楓は不満そうな顔を隠さない。


「強ければ通してくれるって言うんだから見せてあげれば良いのに」

「あのなぁ…俺たちには実績がないんだから当然だろ?それに、ドラゴンって言ったらやっぱり強いんだろうし、この街にだってなにか影響が出るかもしれない。そんな所に下手に変な奴を通して悪化させてみろ。この街はお終い、崩壊だ」

「…そうだね。あーあ…残念だなぁ…」

「ま、ランクが上がったら似たようなの探そうぜ」

「…うん、こればっかりはしょうがないもんね」


入り口から離れて、来る途中に見つけた宿に向かおうとすると、騎士団のような集団がやってくる。

先頭を歩いているのは女性だ。


「綺麗な人だね…」


楓が呟く。

楓だって綺麗なのだがどちらかというと可愛い寄りの女の子という表現が正しい。

しかし、目の前を歩く女性は切れ長の目、長い金髪…綺麗という言葉が相応しい女性だったのだ。

騎士団は先ほどの兵士と話をして山に入っていく。


「あの人たちがドラゴンを退治するのかな?ちょっと見てみたいな…」

「ああ、そうだな。ま、今回は仕方ないってことでとりあえず宿に行こうぜ」


未だグロッキー状態で余裕のないシルフィを拾って宿に向かった。



◇◆◇◆



宿に着くと、真昼間から酒盛りをしているのか騒音が外にまで及んでいた。


「大丈夫かね、この宿は」


少し心配だったがとにかく中に入ってみる。


「こんにちはー」

「ああ、お客さんですか?すいませんが見ての通りで…」


中に入って周りを見渡すとかなりの人間が酒を飲んで騒いでいる。

多くの者が武器を持っていることから判断するに冒険者か何かだろうか。


「そうですか…二人で一部屋でいいんですけど空いてませんか?」

「ちょっ…楓、またかよ!?」


諦めて他の宿を探そうと口を開こうとした俺を押しのけ楓が言う。


「一部屋くらいなら空きがありますけど…もしかしたらご気分を害するかもしれませんし…」

「大丈夫ですよ。じゃ、お願いします」

「ええと…はい。お部屋は二階の角部屋となっております。こちらが鍵です」

「ありがとうございます。代金は?」

「朝と夜の食事代込みで三泊で銀貨2枚です」


一人前の冒険者の一日の収入が銀貨五〜七枚なのでまあそこそこだろう。

なんで三泊なのかは分からないが。


「燈くん、お金」

「…はい」


楓に言われアイテムボックスからお金を取り出し渡す。


「毎度ありがとうございました」


店の人は綺麗にお辞儀をしていたがすぐに酔っ払いの相手をし始める。


「大変だなぁ…俺だったら絶対こんな仕事無理だわ」

「燈くん、世話はできるけど問題が起きたら力技で解決しそうだもんね」


図星なので特に何を言うでもなく肩を竦めて部屋に向かおうとすると、


「おい嬢ちゃん!!ひっく…酌しろやぁ…うぃっ」


楓に酔っ払いが絡んでくる。


「えっと…私、店の人じゃないんですけど…」

「ああ!?俺らがドラゴン退治に来た冒険者パーティだって知ってんのか!?黙って酌してりゃいいんだよ!」


ドン、と楓を押す。

そんな酔っ払いに少し腹が立った俺は相手を睨む。

手を出したら俺はまたやってしまうかもしれないから睨むだけだ。


「なんだよお前…なに見てんだよ!」


バシャッ!

大分酔っていて正常な判断を下せなかったのか、俺に酒をかけてくる。

前の街のことを思い出していた俺は動けるはずもなくその酒を頭から被ることになった。

その瞬間、一瞬静まったがすぐに笑い声が酒場を満たした。


「ぎゃはははは!!バカじゃねぇのお前!」

「傑作だこりゃあ!!」


俺は少しムッとして相手を吹き飛ばしてやろうかと思ったが止める。

特に怒りがわいてくるわけでもなかったし、何より楓が心配そうにこちらを見ていたからだ。


「お客様!申し訳ありません…ええっと、か、替えの服…あ!洗わなきゃ…」

「これくらい大丈夫ですよ、気にしないでください」


慌ててやってくるさっきのお兄さんに声をかけて周りを無視して部屋に向かう。


「あ、燈くん」

「なに?」


部屋に入ったところで楓に声をかけられる。

ちなみにシルフィは入ってすぐにベッドに横になって寝てしまった。

先ほどの出来事も普段の彼女ならなにかしようとしたかもしれないがどうやら酔いが勝って何もできなかったようだ。


「…大丈夫?」

「平気だよあれくらい、まあ…飲みかけの酒をかけられたのには少しムカついたけどさ」


笑ってアイテムボックスから水を出しながら言う。

そんな俺の様子を見て安心した楓はあいつらの愚痴を言い始める。


「ドラゴン退治に来たからってあんなに威張るなんておかしいよもう…!!」

「ま、山に入れるくらいの実力はあるってことだろ?冒険者としては俺らより上だろ」


めんどくさいので水を頭から被る。

床が濡れないように火の魔法を使って床に着く前に蒸発させる。

一見すると俺が蒸し焼きにされているような光景をいきなり見せられた楓は驚きで口を閉ざせない。


「燈くん!?な、何やってるの!?」

「何って…洗濯的な?」


水気を飛ばし終えた俺は軽く頭を振るう。


「水魔法とか使えたらもっと気楽に水を使えたのになぁ」

「…その前にいきなりあんなことしたのを謝って欲しいんだけど」

「ごめん、でもそのうちまたやりそう」

「やらないで!!」

「今のところは冗談だって怒るなよ」

「…本当に非常識…」


諦めてため息をつく楓。

仕方ないだろ、これが手っ取り早いって思ったんだから。


「それで、燈くん」

「うん?」

「この後はどうするの?ドラゴンも退治できないし…」

「明日の夜だな」

「え?」

「酒をかけられた恨みはきっちり晴らさせてもらう。明日の夜に山に忍び込んで、ドラゴンを倒す」

「それって怒られるんじゃ…」

「あいつらにやられるなんてドラゴンが可哀想だ。あんだけ酒飲んでたら今日は行かないだろうし」

「そりゃあ私だってちょっとは戦ってみたいけど…本当にやるの?」

「別に俺一人で行ってもいいけど、その時は楓は留守番な」

「私も行く!行くけど…なんだかな…」

「まったくこれだから規則だのルールだの常識がある奴は」


やれやれと首を振る俺にふくれっ面で楓が睨んでくる。

正直怖くない。


「うるさいなぁ!燈くんと一緒にしてもらったら困ります!」

「そんな大声出すなよもう…。ま、とりあえずは適当に街でも歩こうか、暇だし」

「そうだね、特にやることないしね」


意見が一致した俺らは酒場でまた絡まれるのも嫌なので楓の魔法で姿を隠して宿の外へ出た。





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