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世界探求者はわりとチート!?  作者: 和
第一章 カーラント王国編
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魔法ってすごい




朝だ。清々しい…それはもう清々しい朝。

空は青く、鳥のさえずりも聞こえてくる。


そんな朝だが、燈は…


(結局ほとんど寝てねぇ……)


楓と一緒に毛布に包まった結果、煩悩が邪魔をしてあまり眠れていなかった。


(別に寝なくたって平気だけど…さすがにこれはつらかった)


今の燈は昨晩と同じように楓と一緒に毛布に包まっている。

つまり生殺し状態だったわけだ。

やろうと思えば抜け出せたのだが、燈はそれをしなかった。


(…朝ごはん作りますかね…)


楓を起こさないように注意しつつ準備をする。


(あー…めんどくさいからイノシシ肉を入れたスープでいいか…。楽だし、肉余ってるし、まあまあ美味いし)


アイテムボックスから鍋を取り出し水を入れておく。

ちなみにこれらは出発前に買ったものだ。

他にも大量に食材や調味料を買い込んでちょっとした有名人になっていたのだが燈はそれを知らない。


(んー…ま、こんなもんでいいかな)


ナイフで適当に肉をブロック状に切り、野菜を切って煮込む。

調味料は塩となんかよくわからない醤油っぽいもの。


(醤油っぽいってだけで醤油じゃないんだよなぁ…)


少し舐めながら首を傾げる。


スープが完成したので楓を起こす。


「おい、起きろ。朝ごはんだ」


「…ん…あと五…時間…」


「うん、どうしてそれが受け入れられると思った?」


有無を言わせず毛布をはがす。


「ああー…温いのが…」


そう言って手を彷徨わせる楓。


「はいはい、早く起きろ。ほら、冷めちゃうだろ」


楓の身体を起こしてスープの器とスプーンを渡す。


「んー…あったかい…」


にこにこしながらスープを飲む楓。


(やれやれ……これは今後のためにも直してもらわなきゃな…)


寝起きでふわふわした楓はとてもかわいいのだが、旅の途中でそんなことをしていたら死に直結してしまう。


(ま、そのうちやってもらいますか…)


寝起きの楓に虫を見せるなど色々考えつつ朝食を食べ終える。


テントも片付け焚き火も消す。


「んー…!っはぁ!うし、じゃあ今日も歩きますかね」


軽く伸びをして歩き出す。


「はぁ…また歩くのかぁ…」


すっかり意識が覚醒した楓が愚痴をこぼしつつ、付いてくる。


「あと2日も歩いたら街に着くだろうから、とりあえずそこまでの辛抱だよ」


ギルドで見た地図を思い出しながら言う。


「…日本じゃそんなことはなかったのになぁ……あ、そうだ燈くん!」


名案を思いついたとばかりに手を叩き楓が言う。


「…なんか嫌な予感しかしないけど、なんですかね?」


「この世界には魔法があるんだよね?」


「…まあ、そうだな。俺も使ったし」


「だったらさ、飛べるんじゃない?」


「飛ぶって…空を?」


空を指差して楓に尋ねる。


「そう!私は魔法の適性が雷、光、治癒と聖属性だから飛べないけど、燈くんだったらいけそうじゃない?」


「まあ確かに風の魔法だったらいけるかもしれないなぁ…」


腕を組みつつ考える。


(いけるのかな…でも、できない気がしないからやってみるか…)


「えっと…飛べー…なんて…ってうわ!」


「やっぱり!燈くん飛んでるよ!」


なんとなく言っただけなのだが身体が浮いて少しパニックになる燈。


それを見て目を輝かせる楓。

とりあえず一旦飛ぶのをやめて楓を見る。


「多分いけるけど…本当にやる…んだね、はぁ…」


本当にやるのか聞こうとしたところで楓の目は輝いていたので諦める。


「私空を飛んでみたかったの!!」


飛行機で充分だろうと思いため息をつく。


「…はぁ…じゃ行くけど…準備はいい?」


頷く楓。


「『飛翔』」


なんとなくかっこ悪かったので名前を付けてみた。

言葉を発すると同時に二人の身体は空へと舞い上がる。


(うっわ…寒い…って火の魔法を組み込めばいいのか…周りの目は…光がなぁ…ん?光?)


「うわ〜飛んでる飛んでる!!それにあったかいのは燈くんのおかげかな!!すごい絶景!」


興奮している楓に聞いてみる。


「なあ、光の魔法を使って俺たちの姿を見えないようにできないか?光を屈折させてさ」


「んー…多分できると思うけど…うん、やってみる」


「頼む」


こんなことで目立ちたくない燈はすこし焦っていた。


「えっと…『屈折』」


試運転なのか、まずは自分にかけたらしく、楓の姿が見えなくなる。


「できてる?」


姿は見えないのに声だけははっきり聞こえる状況に少し笑いながら、


「できてる」


と答える。

同時に、これができたら覗き放題だとも考えて…。


「飛んでる時しかかけないからね」


先を読まれ一旦ステルスを解除した楓がジト目で見ながら釘を刺してくる。


「はいはい、それじゃ頼んだ」


と肩を竦めて言う。


「…『屈折』」


今度は何故か楓の姿が見える。


「魔法を私たち二人を覆うようにして発動したの。これだったらお互いの姿が見えるし、周りからは見えないよ」


「へぇ…すごいこと考えるなぁ…」


感心しながら俺も集中する。


(とりあえずあそこの街まで飛ぶか…)


空高く上がったため、かすかに見える目的の街を目標にして、


「『飛翔』」


すると、かなりの速さで移動が始まる。

風は魔法で調節して当たらないようにしている。


「うわー…周りの景色が物凄い速さで流れていくなぁ…」


楓はもっとゆっくり楽しめると思っていたのか、少し不満そうだ。


「時間があるときは楽しみながら飛ぼうか?」


と、提案すると


「うん!」


と華のような笑顔で楓は笑った。


いやもうめっちゃかわいい。

一瞬制御ミスって高度落ちたもん。

超アクロバティックだわ。


「おぉ!?いいね、燈くん!もっとやって!」


失敗したと思ったが、どうやら楓は絶叫系大好きな方だったらしい。





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