――空白――
「失敗かあ……。ねえアリサ。私、何がいけなかったのかしら」
私は神楽盃を取り逃がした原因をアリサに尋ねてみた。
悔しさで胃が捩じ切れてきれてしまいそう。
「そうですわねえ。機械兵をもう一体ほど出撃させていれば、違う結果になっていたかもしれませんね。まあ、今の段階では一体が限界でしたけれど」
シャワールームから響いてくる声に、深い思案の色はない。アリサは随分と軽い調子で私の問いに答える。
何よ。他人事みたいに言っちゃって。
「まあ、初めての能力使用にしては上出来だと思いますわよ?」
アリサってば、ほんと楽観的。そんなのでどうやって未来の戦いを生き抜いてきたのかしら。
私は磨り硝子で出来ているシャワールームの扉に背を預け、アリサの鼻歌混じりの声と、滴る水の音を聞いていた。
アリサ・フェアフィールド。
さっき出会ったばかりの人と、こうして今、私の宿泊しているホテルの一室で空間を共にしている。
ふわっとした長い金髪に、エメラルドグリーンの碧眼。お姫様のような美人が突然訪ねてきたものだから、最初は驚いたけど――
「ねえ、アリサ。もう一度確認させて。私はただ、未来のために戦えばいいのよね?」
未来の非劇を繰り返さないために、ただ、戦えばいいのよね?
「そうですわ、ルー。未来はあなたの手にかかっています。あなたの命は私が絶対にお守りしますから、あなたはただ、前を向いて戦っていてくださいな」
未来のために、他人の未来を奪う。
私がやろうとしている事は結局のところ、そういうものなんだ。
どうなんだろう。
何も思わないわけじゃない。疑問もある。
でも、それでもやらなければいけないことなのよね。きっと。
「……うん。わかったわ」
未来での悲劇と、その原因を生み出した力を見せつけられた私は、彼女を拒絶することができなかった。
なら、やるしかないじゃない。
「まずは神楽盃を討ち取る。そのために、アリサ」
「何でしょう?」
「私に考えがあるの。聞いてくれる?」
「もちろんですわ。ぜひ聞かせてください」
「うん。まずは――」
こんな馬鹿げた争い、すぐに終わらせてやるんだから。




