表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

かえる。

「ふふふ……ふへへへ……うへへへへ……」


 金色の髪を撫でる度に、卯咲さんがくすぐったそうに笑う。 


 世界一周の旅を終えて外に出ると、卯咲さんはもう僕なんて見えてないかのようなあからさまな無視をするので、もうダメかと思いつつ、恐る恐るその髪を撫でてみたら意外とあっさり機嫌をなおしてくれた。

 この程度のことでここまで喜んでもらえるとは、愛は魔法だね。

 他の二人はというと、再びチュロスを買い与えてやると大人しくしている。

 チョロいもんだ。


「ごひゅじんごひゅじん、この筋のところにいっぱい溜まってる白いのが――」


「それはさっきも聞いた。いいから黙って食べなさい」


「さくら、これ長くて硬くてちょー好きれふ」


「そこだけとりあげて褒めるな。チュロスってちゃんと名前で言いなさい」


「ちゅろしゅ、しゅきれふ」


 くそっ、チュロスって名前を付けた奴は天才だな!

 一方、とっくに食べ終えた小毬は口の周りを陽の光でテラテラ光らせている。

 いや、それは別にいいじゃないか。

 もしかして、僕の脳の方がおかしいのか?

 

「小毬、おいしかったか?」


「うまいのなんの」


「そっか。次はもっと楽しいやつ乗ろうな。どんなのがいい?」


「かえる」


「え、いや……」


 一瞬、卯咲さんの頭を撫でる手が止まりかけた。


「こま――」


「かえる」


「でも――」


「かえる」


 攻めてくるね小毬ちゃん。 


「かえる」


「ケロケロー」


「…………」


 別に。

 今ので小毬が笑うとは思ってなかったけど。

  

「かえる」


 もうこの言葉しか喋るつもりがないようだ。

 どうやら、さっきの世界一周が心底怖かったらしい。

 だからといって、まだ昼前のこのタイミングで帰れるはずもない。

 僕は構わないが、せっかく回復した卯咲さんのご機嫌を再び底辺まで落とすような発言は避けたい。

 そうなると取れる手段はもう決まっている。 


「よし、ご飯食べに行こう!」


「…………」


 小毬は僕の目をまっすぐ見つめたまま黙りこむ。

 ……さすがにあからさま過ぎたか?

 そう考えたところで、遅れてのレスポンスがあった。


「かんどうした」


 彼女なりに打ち震えていたらしい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ