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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第一章 白い髪の少女
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テントで一睡



「えっと、つまりアキさんはこの子を夢の中で見て、今さっき再会したと~。…………え? いいの? これ」


 マナがなぜか知らないけどボクに目を向けてきた。

 こっちに振らないでほしい。


「わたくしも、夢で会ったっきり話して居ませんでしたわ。カイシンとは」


 結局、レナの神の断片はカイシンと言う名前で落ち着いた。安直だがこれが一番落ち着いたのだ。威厳のある表情にたくましい大柄の体にはそのままでもいいだろうと言う話でもあった。むしろ変な名前をつけそうでレナは変えなかったのだ。

 そういえば、ボクが契約しているシラも初めから自分の事をシラと呼んで欲しいと言っていたし、元々神の断片には名前があったのかもしれない。


「ヘルは、アキの、事、知って、みたかっ、ただけ、だから。待つのは、嫌い」


 この神様ボクが契約しているツキよりも自分勝手なのかもしれなかった。

いや、ツキはただ単に怠惰なだけだが。

 それにしても、自分からこうやって会いに行く事ができるのか、神様って。


「でも、私のどこが気になったんだろうねっ」

「え? アキさん分からないんですか?」

「ヘル、言って、ない」


 つまり、まだヘルはアキと契約する気は無いという意味なのだろうか。

 いや、レナに何かしらの試練があったようだから、アキにもまた別の試練があるのかもしれない。

 それをヘルは見極めるためにアキの元へと来た。そう考えれば辻褄が合う。


「何にしても、神様だったんなら別に警戒する必要ねぇな」

「……確かに。……むしろ信用できる」


 あんな場所で寝ていたのはボク達。正確にはアキを待っていたから。


 近くに襲ってくるような動物が居ないと言ったのは何かしらの魔法を使ったから。


 着いてくる事になったのは元々アキに用があったから。


 戦闘中にアキを誘導出来たのは何かしらの魔法を使ったから。


 何の神様か分からない以上、これ以上ヘルの事を知ることはできなかった。


 一番知りたいのは何の魔法を使ったか、だろう。瞳に文字が浮かんでいる最中が魔法を使っているのだろうことはわかるのだが。


「それ、じゃあ。ヘル、は、寝る」

「へ?」


 ヘルがいち早く寝室となっているテントへと向かって中に入っていった。もうすでに寝虚が寝ているのでそこが寝る場所だとわかっているのだろう。ちなみに寝虚は狼の姿を透明から色をつけたと思ったら、次の瞬間には寝ていた。


「…………ルナ。ヘルは昔からあんなに自由なの?」

「ま、まぁそうじゃな。あそこまで記憶に残るような奴はそうはおらん。親友であったツキを忘れるほどなのにあやつの事は覚えていられるような奴じゃからのぅ」


 昔の記憶が無いルナが覚えているほどの個性の強い神様。

 ……分かる気がする。あそこまで自分勝手に動く神様なんて他に居るだろうか?

 それに、少し人を見下してるような雰囲気も出している。まるで興味が無いと言った風に。


「悪い子じゃ、無いんだけどなぁ」


 そんなボクの考えを読んでか、アキがテントへと消えたヘルを目で追ったままでボクへと呟いてくる。

 悪い子じゃない。それはそうだとボクも思う。ボクの見間違いかどうかわからないが、なんだか彼女は寂しそうな表情をしているのだ。


「そうかのぅ? 妾は良くわからぬが……ヘルはいつでもすまし顔でおるからのぅ」


 ルナがそう言うが、別に悪気があるわけでは無く、ただ事実を言っているだけなのだろう。


「すまし顔。と言うのは我も同意しよう」

「!?」


 急に横に出てきた威厳のありそうな顔。ボクは飛び退いて驚いた。

 いや、だって急に厳つい顔がすぐ隣に出てくるんだよ? しかも居るとは思わないし。


「カイシン。わたくしは出てきてとは言ってはおりませんわ」


 レナ自身も呼んだようでは無かったらしい。


「だが、ヘルは我々の中では十分に子供に部類される神様だ。ルナよ。その事を忘れてはならん」

「ぬぅ。貴様と会ってから思いだしたが、昔から妾によく説教をするのぅ……」


 いや、良く説教をされる状況になるってどういう事、ルナ……。


「……それより、リクちゃん達まだ起きてるの?」


 白夜にそう言われて気がついたように周りを見る。すると起きているのがボク、アキ、キリ、レナ、白夜になっている。

 他のみんなは寝たのだろうか? 雁也は見張りをしているからいいとして……。


「そうですね。ボク達も寝ましょうよ」

「……本音は?」

「幽霊が出てきそうなほど暗いからすぐにでも寝たいです……って何言わせるんですか!?」


 つい本音がポロっと出てしまた。どうして自分はこうも流されやすい体質なのだろうか……。

 夜もかなり深くなってきた。もうユウが出した明かりが無ければ何も見渡せない。これくらいだとやっぱり幽霊とかを考えてしまうので……。


「ルナ。すぐにボクの中に戻って。もう寝るから」

「別によいが……本当にリクはダメじゃのぅ」


 ルナがボクの中へと戻っていく。これでいつでも寝られる。いや、ルナが外に居ても一応は寝られるが朝起きるとルナが隣で張りつくようにして寝る事になるのだ。外に居ると。


「それでは、わたくしももう寝ますわ。明日は早いと思いますし……カイシン。行きますわよ」

「うむ」


 レナもカイシンを光にしてレナの体の中へと戻すと、女性用テントの中へと入っていった。きっと布団を被ってもう寝るだろう。

 ボクも自分専用(・・・・)のテントへと向かう。

 なぜか、ボクは男性用のテントで寝られない。

 男性陣には別にボクが元々男だから文句が無かったのだが、女性陣からかなり批判された。そして女性用テントで寝る寸前までいったところで、何とか持ち直して女性用テントで寝る事を回避。ボク専用のテントが作られた。

 ただ、寝るときに一人しか居ないので……。


 うん。やっぱりルナを出そう。

 ボクはテントに入るとルナを呼び出した。


「なんじゃリク。寝るのではなかったのか?」

「……怖いからじゃ……ダメ?」


 ボクがそう言うと、ルナに呆れられた。


「ならば他の者も出したらどうじゃ?」


 それもそうだろうか。これから寝るだけなのに。

 だが、ボクはルナの言う通りにして、灰色の髪に金色の光が集まっているツキと、背中に浮いている氷の翼とティアラをつけているシラを呼び出した。

 それぞれが〝セレネ〟と言う月の神様と〝白姫〟という冬の神様だ。ちなみにルナは〝ヘカテ〟と言う魔術の神様だ。


「ん~? どしたの?」

「よ、よるでも『暑い』です……。〈コールド〉」


 シラが勝手にテント内の温度を下げて丁度いい温度にする。とは言っても20℃よりも下だと思われる。ソウナとかだったら寒いって言う温度だろう。ボクはシラと契約しているおかげで寒さを感じないが。


「よし、それじゃあ寝よう」

「え? あたしとシラを呼んでおいて寝るの!?」


 あれ? ボクの中に居ても意識はあるのでは無かっただろうか。


「さきほどからこわくてねむれないといっていました……。つきはなにをみていたのです?」

「その場のノリって奴だよ!」


 どうやら勝手にツキが盛り上がっただけだったらしい。

 ボクはそんなのを無視して布団を敷いて被る。

 するとルナやツキ、シラがその中へと入ってくる。一応この布団は大人の体格で二人分入るので全員が入る。ルナやシラ、ツキは外見だけは小学生なのだ。

 ボクの右隣へとシラ。そして左隣にルナ。そのひとつ向こうにツキが居た。

 どうやらツキはもう寝ているらしい。いくらなんでも早すぎやしないだろうか。

 ボクはそんなことを考えながらも、目を瞑る。すると次第に意識が薄れてくる。


(明日には……ヘレスティアに着けるといいな……)


 ボクはそう考えながら、深い眠りへとついたのだった。


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