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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第六章 開戦
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日暮れ

視点がキリさんからカナさんへと変わります。


「クソッ。体が……動か、ねぇ……ッ」


 ベクサリア平原に横たわる俺。

 体中に突き刺さっている影のようなものに地面に縫いつけられている。だがそれは感触は無く、肉体を貫いているはずなのに血は出てこないし触れもしない。まるで実体が無いとでも言うようだ。


「これが、〈シャドー〉の……力かよ……」


 しかし、俺の言葉が切れ切れなのはそれだけでは無い。

 縫いつけられる前は手酷く白夜にやられた物だ。それから普段よりも冷静さを忘れて俺は白夜に攻撃を仕掛けていたので、白夜はそれをいとも簡単に避けて的確に持っている武器では無く蹴りや拳を入れてきたのだ。

 これ以上の屈辱は無い。白夜は手に持つ武器では無く明らかに安全だろうと思われる攻撃ばかりをして来たのだ。

 拳や蹴りに魔力はほとんど通されておらず、一般のヤンキーが殴る蹴るほどの力しかなかった。


 俺は何とかして顔をあげる。そこには首の無いからだが倒れており、少し離れた場所にその首から上も転がっている。


 殺したのだ。


 白夜は桜花魔法学校の校長である【黒き舞姫(ブラックダンサー)】篠桜真陽。マナの祖母に当たる人物を。


 すでに数時間前の出来事で、真陽の体からはもう血が出てこない。地面はすでに血で真っ赤に染めている。


「クソックソッ!」


 もっと、もっと力が欲しい。奴等を殲滅できるほどの力が!!

 いつまでもこうして地面に這いつくばっていると、ふと近い場所から草を踏む音がする。


 俺は疑問に思い、それから何とか首だけでその方向へと向いてみた。

 そこには……。


「カナ!? お前、街はどうしたんだよ!? まだ爆発音は鳴ってんだぞ!?」

「えぇ。わかってるわ♪」


 すると、カナが俺を縫いつけている〈シャドー〉へと手が触れたその瞬間。

 パリィンッとガラスが割れる音が鳴って俺の体に自由が戻る。


「これ……お前、どうやって」

「簡単よ♪ この魔法を解くことぐらいね♪」


 そこでカナは、近くで死んでいる真陽の亡骸を見る。


「わ、ワリィ、俺が来ちまった所為で、真陽に逃げる機会を……」

「そんな事は無いわ♪」


 こちらに振りかえるカナ。

 その顔は、いつも浮かべている笑顔そのものだった。


「おまッ。死んだんだぞ!? お前自身が言ってた、戦友が死んだんだぞ!? 何で笑ってられんだよ!?」

「あら? 私今、笑ってたかしら?」


 な……ッ。こ、こいつ!!

 俺は自分が来た事で真陽が死んだかもしれないという状況すら忘れて、目の前でいつものように笑っているカナに怒りがわいた。


「どういうことだよカナ! なんでもできそうな力を持ちながら何で戦わねぇ!? 此処に居るって事は真陽が狙われるかも知れ無いって思って来たんじゃねぇのか!?」

「違うわ♪ 私はキリちゃんに会いに来ただけよ♪」

「俺に……だと? それで何で……何で真陽が死んでる姿を見て平気でいられるんだよ!? 涙の一つも見せてみろよ!!」


 胸倉を掴む。例え目の前にいるカナの外見が小さな少女でも、ロピアルズ統治者でも、俺はそんなのは関係なしにと掴んだ。


「涙なんて出ないわ♪ だってこれはわかりきっていた事だもの♪」

「わかりきっていた……だと? どういう事だオイ!」


 俺は頭だけでなく腕にまで血管がくっきりと浮き出てくる。握っている力もそうとう入れている。


「簡単よ♪ 私が時間を超えてどんな未来になるのか、どんな過去があったのか全てを見る事ができるからよ♪」

「時間を……超える、だと?」

「そうよ♪ 神〝クロノス〟。それが私だから、ね♪」


 どういうことだ……。カナは何を言っている?

 確か、〝クロノス〟と言えば時を司る事で有名な神様だ。その神様が、自分だと?

 だが、それが事実なら……。


「だったらなおさら!! 何で真陽を殺したんだよ!? 未来が見えるんだったら、いくらでも真陽を救えただろ!?」

「それが無理なの♪」

「無理じゃねぇだ――」

「〈サイレント〉。だから無理なんだってば♪ 少しは私の話を聞きなさい♪」


 急に声が出なくなり、言い返す事が出来なくなる。

 それからカナは俺の腕を取り払い、こほんと一つ咳を吐いてから放しだした。


「私は時の神〝クロノス〟♪ これは嘘偽りでは無いわ♪ 簡単な話、人間が神様を倒すか、もしくは契約するのではなく神様の力をそのまま受け継ぐのよ♪ そうすることでその人間は人間では無くなり、その力を取り込んだ神となる♪」


 なんだ……こいつは何を言っている?


「そして神の責務も同時に引き継がれるわ♪ 私の場合。つまり〝クロノス〟の仕事はね♪ 運命により死ぬ事になった人間がもし死ななかったら、私が出向いてその人間を殺すの♪」


 つまりは何だ……。ここで真陽は死ぬ運命だったから見殺しにしたってことか!?

 それでいて笑ってるだと? ふざけんじゃねぇよ!!

 いくらでも叫びたい俺はいつまでも解かれない沈黙魔法のおかげで歯切りをする。


 ……待てよ。カナは先程俺に(、、)会いに来た(、、、、、)と言わなかったか?


「逆に死ななくても生きられる未来がたくさんの未来の内に一つでもあったらそれを選ばせるの♪ まぁこれは私が〝クロノス〟になる前の神様はやっていなかったけどね♪」


 俺が黙ってカナを見ていると、カナはその視線に気がついたようで、沈黙魔法を解いてくれた。


「何か言いたそうね♪」

「お前……俺を殺しに来たのか?」


 カナは俺の言葉を聞くと、目を見開き、それから……。


「ふふ♪ そんなはずがあるはず無いでしょう?」


 カナが笑いながら言うので俺は少し恐ろしい感情を抱きつつもとりあえず殺しに来たのではないという事がわかったので安堵をしていた。

 真陽が死んでも悲しまない。いつでも狂ったように笑っているカナ。それがカナに対する評価だった。


「なぁ。時の神だっただよ……。過去に戻って真陽が生きている時代から連れてくる事ってできねぇのか?」

「過去から未来になんて人を連れてきたらその時点でその人の存在が消えてしまうわ♪ でも……」


 でもと続けたカナのその表情が見えない。


 一体何を考えている?


 まさかとは思うが……。


「〈ゲートホール・ト・パレルトン〉」

「!?」


 俺はカナが魔法を放つと同時にすぐさま離れる。

 カナが手をかざしたその場所に人が一人通れるような水色の楕円系のゲートが現れたのだ。


 だが地球に戻ったりするようなゲートでは無いのは一目瞭然だ。地球に変えるためのゲートは向こう側の景色が見えるのだ。



 ――このゲートは一体どこに繋がっていやがる?



 そう考えた時。急に突風が吹き始め、俺を吸いこもうとし始めたのだ。


「ンだよこれ!!」


 この突風では他の物も吸い込まれるのではなどと思っていたが、どうやら吸い込まれているのは俺だけというピンポイントで狙われていた。


「クソッ!! どういうことだカナ!! 答えろぉ!!」

「あなた達は弱いわ♪ だから、まだエンディングを見るべきじゃないのよ♪」


 吹かれている突風が更に強くなってきて、次第に地面から足が離れそうになる。何とか姿勢を低くしたり、地面へと足をめり込ませて耐えようとしていたが地面の土ごとずるずると滑って行く。


「だからって、どこに向かわせる気だ!」

「そんなのは、自分で考えなさい♪ 時の神が伝えるわ♪ そのゲートの先に言っても、絶対に死なないわ♪」


 次の時、俺は地面にめり込ませていた足が地面から離れ――。




「おぉぉぉおおおおお!!」




 開けられたそのゲートへと吸い込まれていった。






「ふぅ♪ 閉じて♪」


 私は一言そう言うと、水色のゲートは閉じてしまって、キリの姿を消してしまった。

それから真陽の方へと向き……。

 その表情を曇らせた。


「笑っていられる……か……」

「カナ様……」


 いつの間にか後ろに控えている和服を着ている女性。


「ティマちゃん、どうしたの?」

「カナ様はまた無理をしているなのです。たまには神の仕事なんて忘れて真陽様を助けていれば……」

「無理よ。私があそこで助けていれば、いずれ私が真陽ちゃんを斬らなくちゃいけなかったんだから……」


 ティマの心配そうな顔が私の顔を覗きこんでくる。

 私はそれから逃れるようにして、反対側を体ごと向く。


 本当は真陽を救う方法はあった。それはとても簡単な事だ。

 先に帰ってくるマナ達がライコウへと着く前にライコウを出て遠い場所でしばらく暮らしていればよかった話なのだ。

 そうすれば真陽は命を狙われる事は無かった。奴等の狙いはライコウの英名だ。邪魔となる英名だけを殺す予定だったのだ。

 だけど……。



 ――それだとぉ、帰ってくるマナにおかえりって言ってあげられないだろぅ?



 真陽は笑いながら言った。

 自分が死ぬのに……マナが帰ってきたその次の日に死んでしなうのに……。それでも家でマナの帰りを待つと言ったのだ。

 それだけじゃない。



 ――三日後ぉ。マナの誕生日だからねぇ。生きている間に祝うために、帰って来たその日にやろうと思う。孫にはさ、そうやって幸せな時を過ごして欲しいんだよぉ。



 真陽はそう言った。それが恒例なんだという。

 でも、私はその気持ちが良くわかった。分かってしまった。

 だから……真陽が死んでしまうと決まってしまった時は……。


「辛いよ……ティマちゃん……」


 隣に立ちすくしている世界、ヒスティマは何事も言わずに私の中へと戻って行った。

 一人になった私はというと、なるべく他のメンバーもある場所へと誘うために、その足をもう日が暮れた夜の桜花魔法学校から遠ざからせた。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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